第156話 空中戦
リリスはスカイドラゴンに魔法弾を放った。大きな体からは想像できないほどの素早さでそれを回避する──しかし、避けた魔法弾は後ろにいたワイバーンに命中して、その体を粉砕する。
「今の魔力では二級魔法を10発が限界じゃな……そうなると雑魚に魔法攻撃は使えないのう……」
リリスがそう愚痴をこぼしたそばから、四方八方からガーゴイルが襲いかかる。
リリスは爪で襲いかかってきたガーゴイルの攻撃を素早く避けると、翼を硬化させ、それでガーゴイルの体を切り裂いた、翼を硬くしただけとは思えないほどの切れ味でガーゴイルは真っ二つに切り裂かれる。
次々襲いかかってくるガーゴイルを同様に翼で切り裂いていると、一匹のワイバーンが真上から降下してきた──さすがに翼で切り裂くにはワイバーンは大きく強い──仕方なく、リリスは魔力を抑えた三級魔法で追撃した。
リリスの放った光の矢の魔法はワイバーンの眉間を貫く──その一撃でそのワイバーンは四散して消滅した。
その瞬間、リリスに強烈な火炎球が襲いかかる──それはスカイドラゴンからの攻撃であった……だが、リリスは周りの雑魚と戦いながらも、本命であるスカイドラゴンに意識を集中していたので、その攻撃もたやすく回避する。
スカイドラゴンは火炎球を避けられると、何か人語ではない言葉で魔法の詠唱を始める──それを聞いたリリスは、どんな魔法なのか理解したようで小さく舌打ちした。
「チッ……余計な魔力を使わせよって……」
スカイドラゴンの魔法は広範囲の雷撃魔法であった……雷撃の速さと、その範囲の広さに回避は不可能のように見える。
リリスは両手を上にあげて何かの魔法を発動した──するとリリスの体は青白い光に包まれる。
リリスの展開した魔法壁とスカイドラゴンの雷撃魔法が激しくぶつかり、荒れ狂った稲妻が周囲に飛び散る。周りにいたワイバーンとガーゴイルの一部もその攻撃に巻き込まれ消滅していく──
大規模な魔法を使用した事で、スカイドラゴンの魔力も少なくなっていた──その為か、次の攻撃は物理的なものになった。大きな魔法を防いだことによりフラフラの状態になっているリリスに対して、スカイドラゴンは急速に接近する──そしてその大きな体を使って体当たりした。
自分の数百倍の質量の物体の突進に、リリスは途轍もない衝撃を受ける……元々耐久力が高いわけでもないので、そのダメージは深刻であった。
弱ったリリスに対して、ガーゴイルたちが好機と思ったのか群がるように襲いかかってくる。
魔力を節約していては対応できないと判断したリリスは、広範囲の対空魔法を発動した。リリスの周りに小さな円盤状の光の輪が無数に現れる──それが四方に飛び散るように広がった。
円盤の切れ味は抜群で、触れただけでガーゴイルの体は真っ二つに切断される。ワイバーンもその円盤の攻撃力の前には無力で、多くがバラバラに刻まれて落下していった──
かなりの数の敵を打ち倒したが、大きな魔法の使用によりリリスの魔力も残り少なくなっていた……このまま魔力が枯渇すれば、体力も攻撃力も上であるスカイドラゴンには到底勝てない……
そんなリリスの心配など御構い無しに、敵の攻撃は休むことはなかった──二体のワイバーンがリリスを挟み込むように炎を吐き出してきた。高く飛び上がることでそれを避けると、光の矢を連続で4発放つ──それぞれ頭部と背中に1発づつ光の矢で貫かれたワイバーン二体はそのまま落下していった。
ワイバーンは全て倒し、もう少しで雑魚は片付けれる……雑魚さえいなくなれば残りの魔力を全てスカイドラゴンに集中できる……リリスはそう考え、翼を硬化させると残ったガーゴイルを一体づつ倒していった──
全てのガーゴイルを切り刻み終わった時には、リリスの体力も限界に近づいていた……残すはスカイドラゴン……最後の力を振り絞る──
スカイドラゴンは膨大な魔力を集中する……それが最後の一撃とばかりに全ての魔力を絞り出しているようだった……
スカイドラゴンの必殺の魔法は回避不能の魔力波動砲であった……それは逃げ場のないほどの範囲に及び、リリスをターゲットとして放たれた。
「それを待っていたのじゃ!」
リリスはそう叫ぶと最後の魔力で一級魔法を発動した──エンシェント・カウンタースペル──どんな攻撃魔法も数倍の威力にして跳ね返す──対魔最強魔法が発動する。
青い魔力波動はリリスの前で大きな塊となり、一気にスカイドラゴンに向かって逆流する──その凄まじい威力をスカイドラゴンは自ら証明することになった……ジリジリと物質が衝突する音が鳴り響き、スカイドラゴンは黒い消し炭となって消えていった──
スカイドラゴンは倒したが、リリスの魔力も枯渇していた……体力も限界で、もう戦うのは難しいと思われた……しかし、状況はそんな彼女に新たな試練を運んでくる──
「ふぅ……新手か……流石に勘弁して欲しいものじゃ──」
南から、今し方倒したばかりの敵軍と同規模の新手の敵が迫ってくるのを見ながら、リリスはそう愚痴をこぼした──
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