第152話 友軍現る
周囲を警戒しながら、シュタット王国の王都近くで布陣すること2日、ようやく周囲に動きがあった。
「エイメルさま! 南西方面より、正体不明の軍が現れました!」
裕太は、部下の報告に急いでテントから出ると、周囲を見渡せるようにと作らせた見張り台に上り南西の方向を見た。そこにはすでにアズキとルソがやってきていていた。ルソが軍を観察して見解を述べる。
「エイメル様、あれはクルセイダ王国の旗ですね……軍旗の数から推測して、兵力はざっと100万といったところでしょうか……」
クルセイダ王国が阿波瑠花の国だと言うことを思い出し、裕太は安堵する。
「そうか、クルセイダ王国なら大丈夫、このまま警戒しつつ待機かな」
「なんだよエイメル、クルセイダだって北方平和協定の国の一つだぞ、どこが大丈夫なんだよ」
アズキの問いに、裕太は簡単に答えた。
「クルセイダの女王も旧知の仲だからだよ」
「旧知たって、もし、攻めてきたらどうすんだよ、こっちは40万、向こうは100万もいるんだぞ、まともに戦ったらやばいぞ」
「まあ、確かにそうだけど、クルセイダの女王は旧知の友を攻めるような奴じゃないよ、その時はその時、俺に人を見る目がなかったってことだろ」
「……ふん、まあ、100万程度の敵くらいには負ける気はしないからいいけどな」
「100万なら良いのですがね……」
アズキの言葉を否定するようにルソが言った……その真意を彼の目線の先を見て、裕太もアズキも理解した。
「東方向、新たな軍勢が現れました! その数、100万以上です!」
「どこの軍だ⁉︎」
「旗はラグマーン帝国のものです!」
さらに急報は続く──
「さらに西方面より新たな軍勢が現れました! 兵力は……に……200万近いかと……」
「流石にヤバくないか……」
アズキの呟きに、裕太も頷く……なぜなら、西方面に現れた軍勢の旗は、宇喜多のエルサフィ王国のものであったからだ。
どうして宇喜多の軍がここに現れるんだ……そう疑問に思っていると、阿波から至急の回線が開かれる。裕太は慌てて自分のテントに戻ってそのメッセージを受け取った。
「飛田くん……急いで逃げて……そこにいたら殺される……」
「ちょっと待て阿波、それはどう言うことだ?」
「……歩華は北方の覇権を狙ってるの……それにはあなたが邪魔だから……」
「なんだと! だって同盟だって組んだし……」
「それはあなたを都合よく動かす為よ……もう、間に合わなくなる、軍は置いて、あなただけでも逃げて……」
「阿波、どう言うことだ、もっとちゃんと説明してくれ!」
「だめ……私は歩華を裏切れない……ごめんなさい……」
そう言うと阿波瑠花は裕太との回線を閉じた……
阿波との回線が切れてすぐに、宇喜多歩華からのチャンネルが開かれる。
「あら、飛田くん、誰かと会話中だった?」
「おい、宇喜多……これはどう言うことだ……お前はアジュラ王朝との国境にいるんじゃなかったのか……」
「ふふっ……アジュラ王朝ね……あんなのはいつでも片ずけられるから……今はもっとも危険な敵を排除するのが先よ……」
「危険な敵?」
「そうね、その敵さんはそういうところは鈍いのよね……でも、辺境の弱小国から、ここまで勢力を拡大した手腕は、私は高く評価してるのよ、だから、十分な準備をして、今日を迎えたの」
「どうしてだよ宇喜多……」
「北方に覇王は二人はいらないのよ──私と同じ北方に転生したのは運が悪かったって思って……────それじゃ、あまりチャンネルでの長話もあれだから、ここからは戦場で語りましょう」
「おい、宇喜多!」
そこで裕太と宇喜多の回線は閉じられた──裕太は、すぐにテントから出ると、命令した。
「物資も何もかも置いてすぐに撤退する! すぐに準備しろ!」
裕太には珍しく焦った雰囲気が家臣たちにも伝染したのか、全軍に緊張と焦りが伝わった。
「エイメル……少し遅かったかもしれない……」
「どうした、アズキ、何が遅かったんだ」
「北方面から新たな敵軍だ……その数、二百万……私たちはこれで完全に包囲された事になる」
裕太の耳に、宇喜多歩華が言った『だから十分な準備をして今日を迎えたの……」その言葉が繰り返されていた──
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