第150話 信頼
宇喜多歩華と、今後の北方での戦略を話す為に、裕太は彼女とのチャンネルを開いた。
「宇喜多、ミフカーラ、キリューダ、バズクレンを倒したけど、次はどうしようか」
「飛田くん、よくやったわ。次に攻めるのはシュタット王国とアジュラ王朝がいいと思うわよ」
「シュタット王国は知らないけど、アジュラ王朝は強いんだよね」
「はっきり言って、シュタットは北方平和協定の中でも下の方の国だから楽勝だと思うけど、アジュラ王朝は数百の竜の眷属を従える七竜の戦力に加え、四竜将と呼ばれる大将軍、兵は強兵で知られるし、魔導部隊も存在する──間違いなく北方最強国家よ、飛田くんの国が負けるとは思わないけど、全力で戦わないと勝つのは難しいと思う」
「そうなるとシュタット王国への同時での侵攻は難しいかな……」
「大丈夫、シュタット王国戦は私と瑠花も協力するから、飛田くんは少数の軍で進行すればいいよ」
「そうか、それなら大丈夫そうだな」
「あっ、そうだ、丁度いいからシュタット王国で3人で集まりましょうか、チャンネル会合では味気ないし、現実で会うのも悪くないでしょ」
「そうだな……だとすると俺がシュタット王国侵攻の指揮をした方がいいな」
「そうね、アジュラ王朝は部下に任せてもいいんじゃない」
宇喜多歩華との話し合いでそう決まり、裕太はアースレインの軍議でそれを家臣たちに伝えた。
「シュタット王国への侵攻はエイメルが指揮をすると……あまり王にそんなことして欲しくないんだけどな……」
軍師のフィルナは露骨に嫌な表情をしている。
「まあ、シュタット王国はそんなに強い国じゃないみたいだから、それほど危険はないよ」
「だとしても、30万の戦力は少なすぎる! もう少し多くの兵を連れて行かないと、不慮の事態の備えられない」
「だから大丈夫なんだって、実は北方平和協定の国に、こちらに加勢してくれる国があって、その国が助力してくれることになってるんだよ」
「助力……それはどこの国のことだ」
「エルサフィ王国だったかな……」
「エルサフィ……ダメだ、エイメル、レプセリカ女王は信用できない」
う〜ん、クラスメイトだから大丈夫だと説明したいが、どう言えばよいやら……
「その……実はレプセリカ女王とは旧知の仲なんだ、だから信用はしても大丈夫だと思う」
「旧知でも、あの人柄を全面的に信用するのは危険だ! それでもいくと言うなら、せめてアルティを連れて行ってくれ」
「アジュラには七匹も大きな竜がいるんだろ、アルティとマゴイットはそっちに行った方がいいよ、本当にシュタットの攻略は大丈夫だから」
「……う〜ん……やはり、それでも僕は賛成できないな……」
結局フィルナは、シュタット侵攻の兵力を40万に増兵することと、リリスを連れていくことでなんとか納得してくれた。まあ、納得したと言っても、まだブツブツと何かを考えながら文句を言っているようだけど……
それから10日後、まずはアジュラ王朝へ侵攻する軍が出発した──兵力は120万、指揮するのはクリシュナで、副大将で、ジュスランとブライルが付いた。
裕太は、その次の日に40万の兵を引き連れ、シュタット王国侵攻へと出発した。裕太に付き添うのは、アズキ、ルソ、ジュゼ、ランザックの四人の上位将軍であった。
「おい、エイメル、レプセリカ女王と旧知の仲って言ってたけど、どこで知り合ったんだ?」
珍しくアズキが戦い以外の事を聞いてくる。
「ちょ……ちょっとね、同じ場所で学問を学んでたんだよ」
そう裕太が言うと、彼女はなぜか少し不安そうな顔をして、言葉を続ける。
「そ……そうか、あの……あれか、男と女の関係だったりしたのか……」
「え! いや、そんな関係じゃないよ、普通の学友だよ」
その言葉に何か安心したアズキは、急に元気になった。
「そうかそうか! なんだよ、妙にレプセリカ女王を信頼してたからそんな関係だったのかと思ったよ、なんだよ、それならそうと早く言えよ」
裕太には、アズキがどうしてそんなことを気にするのかわからなかったので、話はそこで終わった。もう少し女心のわかる男であればその意図に気がついたであろうが、やはり王となっても裕太は成長過程の男であると証明された。
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