第149話 女狐の策略
「ミフカーラ、キリューダ、バズクレンが飛田くんに制圧されたようね」
宇喜多歩華は、内緒回線で、盟友の阿波瑠花と話をしていた。歩華の話題に対して、無表情に瑠花が言う。
「さすがにクラスの中ではダントツの最下層の飛田くんの国でも、NPC国家では相手にならないようですね」
「私たちには強力なモンスター召喚があるから……NPC国には悪いけど、二、三国では勝負にはならないわ」
瑠花は無言で頷き、それに同意する。
「それで歩華……本当に例の計画は進めるの」
「もちろんよ、それが私の目的だもの」
歩華の答えに、瑠花の表情が少し曇る……
「それで、今の戦力でも計画に支障はないと思うけど、念のために魔物の戦力を増やそうと思うの、悪いけど瑠花からもオリハルコン硬貨を送ってくれる?」
「……うん……それはいいけど……」
「どうしたの、何か懸念点でも?」
「……いや、大丈夫、オリハルコンの輸送をすぐに手配するね」
瑠花は歩華の計画に、全面的に賛成はしていなかった……それには親友の歩華にも知らない理由があるのだが、どうしてもそれを伝えることができなかった。
それからすぐに、瑠花から歩華の元へ、大量のオリハルコンが送られてきた。現在でも1体のURと5体のSRを所有する歩華であったが、戦力はいくらあっても困りはしない。
「彼にどれくらいの戦力があるか……いくら貧しい国でも、SR数体は所有していると思うけど……」
歩華は、ガチャ五百回分のオリハルコンを目の前に、大きく一呼吸すると、召喚を開始した──
歩華のガチャの結果は、UR1体とSR3体、100ほどのRに、残りはUC以下で、全体的には満足するような成果ではないが、強力なURが手に入ったのは嬉しいことであった。
「URティーロンの巨神……巨大で力強く、そして美しい……数十万の戦力に匹敵しそうな戦力……これならどんな敵とだって戦えそうね」
歩華の最大戦力はこれまで、URスカイドラゴンであったが、ティーロンの巨神の入手により、双璧とも言える戦力を手に入れた。
そろそろ、計画を進めましょうか……そう心の中で考えると、自然と不敵な笑みがこぼれる宇喜多歩華であった。
北方平和協定の盟主とも言える主要国家、アジュラ王朝、サフェルリダ女王は秘密裏に、宇喜多歩華の国家、エルサフィ王国に間者を送り内情を調べさせていた。それは思念とも言えるほどの感情を、宇喜多歩華ことレプセリカ女王に感じているだけではなく、北方平和協定に対しての背信行為を行なっていると確信していたからであった。
「ラグマーン帝国、ワグディア王国、クルセイダ王国、それにレプセリカ女王のエルサフィ王国は、どうやら裏で強力な密約が結ばれている節がございます」
間者の報告に、サフェルリダは眉を細めた……
「どういう強力な密約じゃ……具体的に話しなさい」
「詳しくはわかりませぬが、どうやらその四カ国で、北方の実権を握る算段かと思われます」
「ふっ……やはりですか、そんなことだと思いましたよ……女に溺れるワグディア王と、金の亡者のラグマーン皇帝……御し易いのを利用して取り込んだようですが、流石に私は無理だと判断したようですね……進行するアースレインに対して、ミフカーラ、キリューダ、バズクレンへの援軍が、その四カ国から少なかった理由もわかりました。どうやらアースレインを使って、邪魔な北方の国を片付けたのですね」
「おそらく、そのようなことかと……」
「いいでしょう、ならばこちらにも考えがあります、シュタット王と至急の会合を開くように手配しなさい」
シュタット王国は、アジュラ王朝の王家から分家した国家で、属国に近い関係であった。サフェルリダ女王に呼び出されたシュタット王は、すぐに駆けつけてきた。
「至急の会合との話ですが、いった何があったのですかサフェルリダ女王」
「単刀直入に言います、北方平和協定を解除します」
想像もしない重大な内容に、一瞬、息が詰まるほどの驚きの後、シュタット王が声を絞り出して尋ねる。
「そ……そのような重大な決定を、他の国家抜きで決めてよいのですか……」
「まあ、正確にいうと、北方平和協定はすでに機能してません、ここにいる二カ国を除いた四カ国はすでに別の道を進み始めているようです」
「そんな……それでは残りの四カ国と敵対するということですか」
「そうなります」
「さすがにアジュラとシュタットの二国では部が悪いのでは……」
「まずはアースレインを利用します、レプセリカ女王も同じようなことを考えてるようですが、それを逆手にとりましょう」
「はあ……なるほど……」
レプセリカ女王の思い通りにはさせないと、サフェルリダ女王は決意を新たにしていた。
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