第105話 北方の考察

オーウェンの開発した鉄騎ゴーレムだが、量産化すると、一体あたりの製造費はミスリル硬貨100枚くらいだそうだ。安くはないけど、ガチャでハズレを引くことを考えたら悪くないコストのような気がしてきた。なので、とりあえず100体を生産するように指示を出した。オーウェンはさらに新型の開発をしたがっているが、量産機の実績が出てからと説得する。


量産機の製造を決めた次の日、俺たちは、北方への侵攻する為に具体的な作戦を練ることにした。主な家臣を呼んで、会議などをしてみる。


「まず、アースレイン王国と隣接する北方の国は3カ国になる。ザンタリエル帝国、アクザリエル帝国、イシュキリエル帝国の3カ国だけど、どの国も大国で、戦力も、数十万の兵と、守護獣と呼ばれる魔物を所有しており、これまでの戦いとは次元が違うものになると思われる。本来なら1カ国ずつ戦えればいいんだけど・・」

「北方平和協定か・・」

フィルナの説明に、俺がそう言葉を投げる。

「そう。北方平和協定があるから、一国を攻めれば、自動的に他の二国とも戦争状態になるんだ。それどころか、隣接しない他の北方の国から、援軍が送られてくる可能性が高い」


確かに冷静に見ると、北方進出は無謀にも見える。


「いくら大国だからって言ってもよ、3カ国くらいならなんとかなるんじゃねえか、うちはそれくらいの力はあると思うぜ」

ヴァルガザが豪快な持論で話をする。

「単細胞が・・フィルナの話を聞いてなかったのか。後方からどんどん援軍が来るって言ってるだろう」

ヴァルガザを諌めるようにブリトラが発言した。


「それじゃ、後方からの援軍が来なければ、なんとかなるってことかな」


俺がそう言うと、フィルナが冷静にこう返事をした。

「そうだね。正直言うと、僕は後方の援軍の方が厄介だと思ってる。特にアジュラ王朝からの援軍が一番怖い」

「アジュラ王朝って国が強いんだ」

「アジュラ王朝は、北方最強の国と言われています。百万近い兵力を有してるだけでも脅威だけど、七体のマスタードラゴンが守護している強国です」

そう話してくれたのはブライルだった。彼の話では、ジュルディアのマスタードラゴンも、元々はこのアジュラの守護竜の一体だったもので、とある理由で、アジュラ王家より譲り受けたそうだ。


「脅威なのはアジュラの七竜だけじゃないけどね、ラグマーン帝国の地龍軍団や、ワグディア王国の獣魔団なども忘れちゃいけない」


なるほど、聞いてると、さすがに北方全国を相手に戦うのはやはり無謀だったようだ。やはり宇喜多たちを同盟に入れたのは正解だったと思う。


この後、俺は宇喜多に回線を繋ぐ。ザンタリエル帝国、アクザリエル帝国、イシュキリエル帝国と戦争になった時に、後方からの援軍を止めれないかという相談である。


「飛田くんも、少しは考えてるじゃないの。そう、あなたが北方と戦争になった時に、一番問題になるのは、無限に感じるくらい絶え間なく送られてくる援軍の存在よ。私がどうして北方の制圧をはじめなかったか・・それは北方平和協定のその物量に対抗できないと判断したからよ。だから私は飛田くんが、辺境を統一するのを待ってたの」

「俺を含めて三人ならなんとかなると思ったんだな」

「正確にはそれでも難しいと思ってるけど・・飛田くんが、ザンタリエル、アクザリエル、イシュキリエルの3カ国を倒してくれればなんとかなると思ってる」

「ちょっと待て。俺の国だけで戦うのか?」

「そうよ。私と瑠花は北方平和協定に残って、援軍がそっちにいかないように手を打つから」

「なるほど・・そういうことか、確かにその方が助かるかもしれないな」

確かに武力で敵の援軍を防ぐより、内からの影響力で、援軍を送らないように画策する方が話は早そうである。

「そう。だから私と瑠花が北方平和協定を裏切るのはもう少し先になるわね」


後方からの援軍が来ないというだけで、かなり助かるのは間違いない。これで北方への侵攻のめどが立った。あとは準備をしっかりして、実行するだけだ。


こうして本格的な、北方侵攻の準備が始まった。自国と同規模の国家を3カ国相手にするのである、簡単な戦いでないのは間違いなかった。

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