第104話 新兵器誕生
転倒したゴーレムを見て、野次馬たちのため息が聞こえて来る。焦ったオーウェンが、俺のところへ駆け寄ってきた。
「違うんじゃ、こいつはまだ未完成で、本領を発揮していないだけなんじゃ。もう一度、もう一度、機会をくれ!」
うむ、俺はもう一度、チャンスをあげても構わないんだけど、隣で見ているリュジャナがすごい形相で、俺の返事を待っている。
「え・・と、とりあえず、何がダメだったのか説明してくれ」
そう俺が話を切り出すと、オーウェンが必死で説明する。
「知能じゃ・・人造知能の開発がうまくいかなったのじゃ」
「知能? そんなのが必要なんだ」
「もちろんじゃ、命令を聞いて、それを理解する知能が必要じゃろ」
「・・・命令で動かす・・そんな面倒なことしないで、直接操作して動かした方が早いんじゃないかな」
「直接・・直接動かすとはなんじゃ?」
「いや・・ゴーレムを動かすには命令する人が必要なんだよね。だったらゴーレムの中にその人が入って、直接動かせば、知能とかいらないんじゃないかなと思って」
「なんじゃと!! ゴーレムの中に入るだと・・・盲点じゃ・・画期的な発想じゃ・・命令者、自らがゴーレムの知能となるということか・・」
なんか見た目がメカぽかったので、ロボットアニメの発想でそう思っただけだけど、オーウェンからすれば、目から鱗のようなアイデアのようである。
「ミスリル硬貨200枚じゃ・・」
「え?」
「追加予算じゃよ。それで今度こそ、納得出来る試作機ができる」
「・・・わかった。出すよ」
そう言った瞬間、リュジャナに耳を引っ張られる。
それからさらに一週間、改良された試作機が完成した。前と同じように野次馬たちが集まり、城の中庭は賑わっていた。ガゼン兄弟や、ヴァルガザたちは、また失敗するのを期待してか、酒と食事を持ち込み、宴会気分で見学している。どうやらうまくいくかどうかを賭けてる連中もいるようで、異様な盛り上がりを見せていた。
「早く動かせー!」
「俺と勝負しようぜー!」
酒の入った者はたちが悪い、野次を飛ばしながら、試作機が動くのを待ちわびている。
そんな騒がしい中、オーウェンが中庭に出てきた。なぜか一緒にシュナイダーが連れられている。どうやら真面目な彼を言いくるめて、ゴーレムの操縦者に仕立て上げたようだ。
「またせたな皆の者。これより、伝説に残るような、大発明を発表するぞ」
自信満々でオーウェンはそう語り始める。
「まず、試作機を紹介しよう。鉄騎ゴーレムのアイアンギガーじゃ。核に魔法球を使用して、それを動力としている。素材はすべて鋼鉄でできていて、並の攻撃など通用しない。山脈に住む、一つ目巨人を凌駕する力があり、魔法球の魔力が無くなるまで、動き続けることができるタフな奴じゃ」
さらにシュナイダーがアイアンギガーの前に立たされて、オーウェンに紹介される。
「シュナイダー将軍が今回はアイアンギガーの操縦者として、志願してくれた。彼に惜しみない拍手を送ってほしい」
シュナイダーはすごい引きつった笑顔で愛想を振りまくと、アイアンギガーに乗り込んだ。
そしてみんなが注目する中、アイアンギガーはゆっくりと動きだす。後でオーウェンに話を聞いたのだけど、操縦方法は、コアに入った操縦者の脳波を、魔法球が読み込んで、ゴーレムに伝わるようになってるそうだ。なので、レバーをガチャガチャしたりはしなくていいみたいだ。
ゴーレムはスムーズな歩きを見せて、観戦者の前を歩いていく。そして屈伸運動など、基本的な動きを見せて、いよいよ、アイアンギガーの専用に作られた剣を握る。10メートルの巨体が持つ剣である、それは大きく重そうなのだが、軽々と持ち上げて、剣を構える。
そして、アイアンギガーが動きだす。剣を振り上げ踏み込み、木で作られた大きな人形に振り下ろす。三体ある木の人形を、流れるような動きですべて斬り伏せると、正面を向いて礼をした。
それを見て、野次馬たちは歓声をあげた。どうやら試作機は成功したようだ。あの巨体であの動きであれば、十分戦力として考えれそうだし、量産化も視野に検討してもいいかもしれない。
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