第89話 バリスタ攻防

レイディモンのオルリアル軍団は、スランキバニア軍の籠城する要塞へと軍を進めていた。


要塞の兵力は二十万、オルリアル軍団と同数であり、兵数だけで見れば互角の戦力に見えた。だが、レイディモン軍にはオルリアル軍団とは別に、カオス・ダグラスが率いる魔物の軍勢が存在した。


まず、動いたのはオルリアル軍団とカオス・ダグラスの飛行部隊であった。オルリアル軍団の、重歩兵団は、巨大な盾を持って要塞に近づいた。要塞からの矢と魔法を防ぎながら接近する為である。飛行部隊は、地上部隊と連携することによって、敵の攻撃を分散する役割がある、そのまま、歩兵と同じスピードで要塞に接近した。


要塞からは大量に設置されているバリスタから、巨大な矢が、雨のように降り注いでくる。バリスタの矢の殺傷力は、一撃でジャイアントを殺せるほどである。それが数えくれないくらい空に舞う。


レイディモンの飛行部隊は逃げる場所もなく、その強力な矢の攻撃にさらされる。重歩兵団も盾で防ごうとするが、鋼鉄製の盾など簡単に貫かれ、串刺しにされる。


まさにそれは鉄壁の兵器のように見えた。どんな強大な軍隊も、要塞に近づくことすらできなように思える。だが、それが幻想であるということを、巨大な飛竜の襲来で思い知る。


カオス・ダグラスはワイバーンの部隊を率いて、バリスタの届かない高い高度まで上昇する。そして、要塞の城壁の真上まで飛行して、そこから急降下して攻撃する。狙いはバリスタである。さすがのバリスタも、真上に攻撃はできない。上から襲いかかるカオス・ダグラスと、ワイバーンに、次々とバリスタが破壊される。


城壁の上にバリスタがほぼ破壊されたのを見て、オルリアル軍団の全軍が前進を始めた。本格的に要塞を攻撃する為である。バリスタを破壊されても、スランキバニアは粘りを見せていた。必死に要塞の城壁を登るレイディモン兵を攻撃する。しかし、それもカオス・ダグラスの率いるワイバーン部隊に城壁上を蹂躙されるまでであった。


すでに要塞の城壁が、カオス・ダグラスに制圧されてからは、要塞としての機能を有していなくなっていた。やがて要塞の門も破壊され、レイディモン軍が雪崩れ込んでくる。すでに組織的な反撃も出来ないくらいに叩かれたスランキバニア軍は、個々に逃げ出し、要塞の北にある主城へとゾロゾロと逃げ込んでいた。


レイディモン軍は、そのまま主城に攻め込む。ここが落ちれば、国が滅ぶのをよくわかっているスランキバニアも、主城での防戦は死に物狂いであった。


だが、それも長くは持たず、圧倒的な兵力によって、スランキバニアの主城も陥落した。



「スランキバニアがレイディモンに制圧されただと!」

村瀬は、その報告を聞いて、その最悪の結果に憤りを感じていた。

「中森! お前、何やってたんだ!」

村瀬は当然のごとく、スランキバニアの指揮を執っていたインフ女王を責める。

「そ・・そんなこと言っても、敵の戦力の方が上だったんだから・・どうしようもないよ・・」

「敵の方が強くても、やりようがあるだろうがやりようが!」

「おい、村瀬・・さすがにそれは酷だぞ」

春道が中森をかばうようにそう言うと、矛先がその春道に向いた。

「そもそも春道、お前の出した軍、ちょっと弱すぎたんじゃないのか、お前のとこにはUR+のグランギドラとかいるだろうに」

「それを言うなら村瀬のとこだってURのインペリアル・ケルビムを持ってるだろ」

不毛な言い合いをしていると、倉敷彩音くらしきあやねが間に入る。

「そもそも、スランキバニアにレイディモンが侵攻してくるなんて考えてもなかったんだからしょうがないよ。ここは次にどうするか考えた方がいいんじゃない」

そう言われて、村瀬も春道も言葉を止める。

「そうだな・・すまん、悪かった」

村瀬の謝罪で、この場は治まった。そのあと、戦力アップの話をするが、具体的な戦略の話にはならなかった。もともと、南方連合の面子は、みんなで黒崎をどうにかしようという漠然としたプランで動いているので、細かい戦略などは考えることがなかった。とにかくオリハルコンを稼いで、ガチャで戦力アップと、単純な思考で物事を見ているようである。

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