第88話 スカウター・アイ

無双かに見えた、シュレイダースネークであったが、その前に、二体の巨大な敵が立ちふさがった。レアリティ、SRのアイアンゴーレムとクワーブルジャイアントであった。


シュレイダースネークの突進を、アイアンゴーレムが、口元を掴んで止める。動きを止められたシュレイダースネークは、アイアンゴーレムの体に巻き付いて締め上げる。アイアンゴーレムは体を締め上げながら、掴んだ頭の部分を力ずくで地面に押し付ける。


アイアンゴーレムが押さえつけ、ジタバタするシュレイダースネークの頭を、クワーブルジャイアントが、巨大な鉄槌を振りをろして粉砕した。頭を潰されても、体はしばらく動いていた。だが、やがて力失い、そのまま停止する。


シュレイダースネークを失ったルブラン軍は、その反撃の勢いを完全に失った。徐々に魔物の軍勢もその数を減らしていき、包囲しているはずの各師団も、熱気で溶かされる氷のように、その姿を小さくしていく。


ルブランのジュラーキルは、このままだと全滅する危険を感じて、他の南方連合の国と合流する為に軍を下げることにした。少なくなった魔物の軍勢を殿に、各師団を後ろへと後退させる。激しい追撃が予想されたが、レイディモンは無理な追撃をしてこなかった。



ベダルテ軍団と戦いに突入していたリネガー軍は、最初から猛攻撃にさらされたいた。先鋒で投入したクルーブルジャイアントを中心とした魔物の軍勢が、敵の魔物の軍勢に、完膚無きまでに叩かれ、そこから持ち直すこともできずに、一方的な攻撃を受けていた。


元々、今回の軍で、一番魔物の軍勢が貧弱であったリネガーは、王である辻春道つじはるみちの性格がよく出でいた。春道は、極度の出し惜しみの性格で、ガチャで出た良いモンスターを、前線に出すのを嫌がった、その為に、今回の編成では、そのほとんどがハズレばかりで構成されていて、そのツケが今で出ている状態だった。まるで敵軍に歯が立たず、リネガーは早々に後方に後退を始めた。



今回の侵攻で、主軸を担っているクフナシュは、インフ女王が弱腰であっても、その軍勢は強かった。特に目立った活躍を見せていたのは、レアリティ、UR+のオメガ・ヒドラであろう。まさに無双の強さで、敵の魔物を一蹴していく。オメガ・ヒドラ以外にも、SR+のギガトロールやSR+のクリムゾン・ボアなど、優秀な魔物が多く、その戦闘力は、レイディモンのダークネス軍団を圧倒していた。


さすがに劣勢を感じていたダークネスは、貧乏クジを痛感して、この強敵に対して、他の軍団の助力を当然のように受けようと考えていた。


軍勢を、各、軍団に貸し与えていたティタン・ジェネラルは、劣勢な戦場へと、援軍に向かおうと考え、後方で状況を見ていた。ティタン・ジェネラルはUR+EXのレアリティである。EXユニットは、自我があるユニークモンスターであり、召喚された身でありながら、考え、判断して、実行することができる貴重な存在であった。


優勢に戦っているクフナシュ軍の下へ、ルブラン、リネガー両軍が合流してきた。それにより戦場が狭くなり、レイディモン軍の強力な魔物の軍勢もそこに集まってきた。さらにティタン・ジェネラルも前線に姿を見せる。


黒く歪な全身鎧を身にまとった、身長10メートルほどある巨人の将軍、それがティタン・ジェネラルであった。その大きな体からは想像ができないほどの素早い動きで、戦場を駆け上がり、自分の身長と同じくらいの巨大な剣を振り回す。一撃で、耐久力の高い、ジャイアントやトロールを粉砕して、人の兵など、一振りで数十人を吹き飛ばす。


ティタン・ジェネラルの強大なオーラを見て、インフ女王は恐怖にひきつる。インフ女王・・中森愛菜なかもりあいなの特殊能力は、相手の戦闘力を見る眼、『スカウター・アイ』。皮肉にも、この能力の為に、彼女は完全にビビってしまった。


「す・・すぐに全軍に伝えよ。撤退だ・・撤退する」

インフ女王が見た、ティタン・ジェネラルの戦闘力は120000。頼りにしている自軍の最強のモンスターであるオメガ・ヒドラの戦闘力は70000・・この差が、インフ女王に撤退を決断させた。


撤退していく南方連合に、レイディモン軍は追撃をしなかった。それは今回の任務が、スランキバニアの制圧であり、南方連合の殲滅ではないからである。


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