第83話 強者の歩み

第三突撃団ロベーン団長、鳳凰騎士団デバルカ騎士団長、ブリトラ師団第二大隊アーフイ大隊長など・・戦闘が始まって、数十分で、クリシュナは名だたる敵将をすでに討ち取っていた。


クリシュナ師団は、ジュルディアの本隊に攻撃を仕掛けていた。クリシュナ師団、12,000に対し、ジュルディア軍は、ブリトラ師団とヴァルガザ師団で構成されていて、15,000の編成であった。数はジュルディアが優位であるが、さすがにアースレイン最強師団は精強であった。圧倒的強さでジュルディアを押し込んでいる。


ヴァルガザは、少なくなった部下を率いて、クリシュナ師団の、亜人の大隊と戦いを繰り広げていた。リザードマンや、ケンタウルスなど、通常の兵より遥かに強い兵に、苦戦を強いられる。


そんなヴァルガザは一人のリザードマンと一騎打ちを演じていた。他のリザードマンより、一回り大きく、動きが良いそれは、この大隊の大将のようで、恐ろしく強い。


「こんなのがゴロゴロいるのかよ・・・」

ヴァルガザは、ジュルディアでも一、二を争うほど猛将であり、武芸でも大陸屈指の強者とされている。そんな彼でも、目の前の大隊長クラスと互角に戦うのが精一杯であった。



一方、右翼では大きな動きがあった。アリューゼ師団がアズキ師団の支援で、側面から敵軍へと突撃する。強力な騎兵とケンタウルス部隊の打撃に、敵右翼が大きく崩れる。


崩れた敵軍に対して、アリューゼは精鋭の騎兵隊を率い、敵の中枢を襲撃する。そこはジアーノン軍の本営であった。ミュラ七世は、敵への接近に恐怖を感じ、大声で家臣たちに指示を出す。


「や、、長槍部隊を敵騎兵にぶつけろ! 絶対にここに近づけるな」


対騎兵とも呼べる、長い槍を装備した歩兵隊が、ジアーノン本営前に一列に並ぶ。アリューゼの騎兵隊が近づくと、長槍部隊が槍を斜め上に掲げる。


アリューゼの騎兵隊は、長槍に貫かれる寸前で、高くジャンプする。そして長槍隊を上から踏み潰して撃破した。確かに、長槍部隊は騎兵の天敵ではあるが、一列では簡単に突破される。何列にも並んで構える必要があったのだが、ジアーノンにはその知識が無かった。まあ、普通の騎兵隊なら、一列でも対応できたかもしれないが、アリューゼの騎兵隊には通用するはずも無かった。


本営に強力な騎兵隊に侵入され、ジアーノン軍は混乱した。このままでは我が身が危ないと、あろうことか大将であるミュラ七世は、100ほどの護衛をつけて逃げ出した。


ミュラ七世が逃げ出した後のジアーノンは惨劇であった。指揮系統は崩れ、部隊は個々に反撃するのが精一杯の状況、もはや軍としては崩壊したと言っていいほどであった。


ジアーノンの崩壊により、ともに右翼で戦っていたロギマスにも影響が出ていた。すでにアズキ師団に叩かれ、ボロボロの状態であったが、周りにジアーノン軍がいたので、なんとか持ちこたえている状態であった。だが、そのジアーノンも崩壊したことにより、ロギマスの本営はその姿をされけだし、アズキに見つけられてしまった。


「見つけたぞ、フルーブル王! とスケベ王子!」

二人の親子は、悪魔でも見たような顔をして、その場から這いずるように逃げ出した。二人がこの言葉を聞いたのなら、悪魔の方がマシだと言ったに違いない。


逃げ惑う二人の王族。しかし、先ほどと違って、もう周りには味方は少なくなっていた。逃げる二人を助ける者も少ない。アズキの前では、疎らにいる敵兵など、いないに等しい。


まずはビヘイカ王子に盾にされたフルーブル王が上から下へと真っ二つに斬られた。ビヘイカ王子は、フルーブル王が斬られているうちに逃げようとしたが、目の前にはすでに、アズキが立っていた。

「誤解するなよ。スケベの恨みくらいで斬るわけじゃないからな」

そう言うと、アズキは横一線に剣を振るう。ビヘイカは恨めしそうな目でアズキを見ると、そのまま、その表情で、首と胴体が離れていく。

「ごめん嘘ついた。スケベの恨みが大半だ。その代金としては高くついたなスケベ王子」

転がるスケベ王子の顔を見て、アズキはそう声をかけた。そして一呼吸つくと、次の獲物を探して走り出した。



すでに、敵中央はグルガナ軍とファシーとヒュレルの特務大隊によって壊滅していた。ジュスランは、アントルンのシミナ王を追い込み、その最後の軍勢を包囲殲滅していた。

「裏切り者のグルガナめ! このままでは済まさぬぞ!」

シミナ王は、そう声を荒げて言うが、もはやどうすることもできない状態になっていた。

「シミナ王、ここは負けを認め、降伏してはどうでしょうか」

そう家臣から助言されるが、さすがに頭に血が上っているシミナ王は、その選択ができない。なんとか落ち着かせて、降伏するように説得した時には、すでに遅かった。


その時には、グルガナの猛将ライデンが、シミナ王の前に立ちはだかっていた。

「待て・・待て・・降伏する・・負けを認めるから助けてくれ・・」

「シミナ王・・命乞いとは見苦しいぞ! 最後は戦国の王らしく、堂々と討たれよ」

そう言ってライデンは剣を振り下ろした。



すでに勝負も大半が決していた。フィルナは、最後の止めとして、二人の超戦力に出撃を要請する。果物と肉をたらふく食べたその二人は、戦場に向けて、ゆっくりと歩みを進めていた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る