第67話 古の竜神

俺は、ガチャで呼び出した超巨大な白い竜を見上げて、ひたすら口を開けて唖然とする。それはその竜があまりに巨大だったからなのだが・・あの、機械仕掛けの竜も、そこそこ大きいと思うけど・・この竜は、その十倍はある。間違いなくこの城よりもでかい。


「え・・と。召喚したエイメルって言います。よろしくね」

叫ぶようにそう竜に話しかける。そもそも言葉が通じるか不安であったが、その心配はないようだ。

「うむ・・我が主となる人間か・・・清い目をしておる。我が名はアルティランサー、今後ともよろしく」


それにしてもアルティランサーが大きくて目立っているようで、城下町の人たちが城の方に集まってきてしまった。また、王様が、変なのを連れてきたと噂話をしている。どうしたもんかと困っていると、それを察したのかアルティランサーがこう言ってきた。

「この姿では目立ちすぎのようだな、主と同じ大きさになろう」


そう言うと、アルティランサーの体がすごく発光する。俺はそのあまりの眩しさに目を瞑ってしまう。眩しさがおさまり、目を開けると、そこには一人の女性が立っていた。白銀の長い髪に、絶世と言っていいほどに美しい顔・・それは絵に描いたよう美女であった。

「この姿の方が何かと都合が良いだろ。改めてよろしく頼むぞ、エイメル」

「あ・・はい・・」

俺が唖然としていると、アルティランサーは優しく微笑む。


高位の竜族は、人の姿になることなど造作もないことらしい。いつでも竜の姿に戻ることができるようなので、戦闘の時は、あの巨体で戦ってくれるようだ。


軽くアルティランサーに現状を説明する。わかっているのか、わかってないのか、彼女はうんうんと頷きながらそれを聞く。


「そうだ。エイメル。私を呼ぶ時、アルティランサーだと長いから言いにくいだろう。あれだったらアルティと呼んでくれていいぞ」

「あっ・・実はそう思ってたんだ。それじゃ遠慮なく、アルティって呼ばせてもらうよ」


細かいことだが、助かる提案をしてくれた。


アルティは、正体は、すごい大きな竜だけど、人間サイズになって話をしてみると意外に気さくな感じで親しみやすい。すぐに打ち解けて仲良くなった。


「それでエイメル。お前の敵はどこにいるのだ。この竜の力、存分に発揮してくれよう」


まあ、アルティははっきり言って秘密兵器的な要素が強いので、ここぞという時に戦ってくれるといいなと思っている。


リュジャナが、先ほどのアルティの姿を見て、腰を抜かしていたのだけど、やっと復活してきた。

「それでエイメル。その・・竜の人は、アタリなの?」

機械仕掛けの竜の時は、はっきりと言えなかったけど、今回のアルティを引いたのは、心の底からこう言える。

「大当たりだよ。リュジャナ」



ジアーノン王国のミュラ七世は、辺境大連合の本陣にて、ジュルディアの軍師、ブライルからの使者の話を聞いていた。

「それでどのような要件なのだ」

連日の敗戦で、かなり機嫌の悪いミュラ七世は、使者に対して少し強く聞く。

「はい。軍師ブライルからの言葉です。共に手を結び、アースレインを討たないかと提案をしております」

「馬鹿な・・先ほど協力する振りをして、我が軍を騙し討ちしたのはジュルディアではないか・・今さら協力してアースレインを討つなど、誰が信用するものか」

「それについて、ブライルは、こう言っております。先の協力関係は、アースレインにも同じ内容のものが送られていることを情報で知ったことにより、裏切られる前に、先に攻撃したと言っております」

「ふん。だとしても、裏切られたことには変わりない」

「はい。ですので、お詫びの品を持ってきております」

「何・・・・」


手渡されたのは詫びの品の目録であった。その中にはオリハルコン硬貨300枚や大量の鉱石、米などが書かれていた。

「なるほど・・そちらの誠意は伝わった」

ミュラ七世は、このお詫びの品が嬉しくてそういったのではなかった。もともと、協力してアースレインを討つのは、ミュラ七世の思惑と一致するので、無条件でも受け入れる価値があるのだが、辺境大連合の盟主として、騙された相手の提案を、無条件で受けるのは対面を保てない。軍師ブライルは、それを理解して、お詫びの品を用意したのであった。


「今一度そちらを信用して、共にアースレインを討つ提案を受けよう」

茶番ではあったが、そう言った表面上のやり取りも必要であった。


さらにジュルディアの友好各国が軍を動かしていた。その軍勢は、ドバヌへと向けて、静かに進軍を開始していた。それは7カ国の連合軍で、総兵力七万八千・・それだけで、アースレインの総兵力に匹敵する大軍であった。

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