第66話 西方の情勢

西方統一を目論む、宗方亜門むなかたあもんは、NPC国家を次々と制圧していた。盟友である、向山美鈴むこうやまみすず鈴木吉成すずきよしなり越智おちララ、の三人と協力して戦っている為に、戦争を仕掛けられたNPC国家は、どこも一溜まりもなく滅ぼされていった。


そんな無双状態の宗方たちであったが、あるNPC国家に宣戦布告をしてから、少し様相が変わってきた。


「ミスティアから使者が来ているだと・・・」

大芝薫子おおしばかおるこから使者とは、何の用だ。まだ、ミスティアにはちょっかいを出してないので、この時点での接触を予測していんかった宗方は、少し戸惑っていた。


「メイヨーラ王朝、ラルコ皇帝陛下に、ミスティアのハーフール王女からお願いがございまして、参りました」

「ほう。その願いとは何だ」

「はい。先日、我がミスティアの隣国、ドルダック王国に宣戦布告した件でございます。ドルダックはミスティアと通商協定を結んでいる友好国でございます。このまま、両国が戦火に包まれるのは、ハーフール王女は望んでいません。できれば宣戦布告を撤回していただきたいと考えております」


「ふっ。そうか。では帰ってハーフール王女に伝えよ。ドルダック王国への宣戦布告は取り下げないと。ミスティアの国益など知ったことではない。もし文句があるのなら、このメイヨーラ王朝はいつでも相手になるとな」


薫子の使者はそれ以上、何も言えなかった。了承したと答えて、その場から下がった。何かと思えば、戦争をするなだと・・どれだけ甘ちゃんなんだあの女は・・



帰ってきた使者の話を聞いて、薫子は、がっくりと肩を落とす。やっぱりダメだったか・・戦争なんて、どうしてするんだろ・・楽しく暮らせばいいのに・・


これで薫子はかなり困ったことになった。西方にミスティアの友好国のNPC国家は多くある、その全てが、宗方たち、メイヨーラ王朝などからの侵略に怯えており、友好国で大国であるミスティアに助けを求めてきていたのだ。


はっきり言って、外交とかの相談では、義之は全く頼りにならない。ここは中学の時の同級生で、頭の良い、宇喜多歩華うきたあるかに相談することにした。


薫子は、歩華にチャンネルを開いて話しかける。

「歩華ちゃん。聞こえる?」

「・・・・なんだ薫子か、どうしたの?」

「ちょっと相談があるんだけど・・」

「私に相談なんて珍しいな、まあいいけど。それでどんな内容なの」


薫子は、今、自分の置かれた状況を、歩華に説明した。

「なるほどね。それだったらすごくいい方法があるよ」

「ほんと! 教えて歩華ちゃん」

「あなたを頼ってきている国を、すべてミスティアにするのよ」

「え? どういうこと」

「ミスティアを連邦国家にするのよ。宗方たちは、NPC国家だから遠慮しないで戦争を仕掛けてるけど、もし、クラスの国が相手ってことになれば、そうはいかないだろうからね」

「連邦国家って、いろんな国の集まりなんだよね」

「そうだよ。だからミスティアを主導国家とした連邦を設立して、他の国をその中に取り込むのよ」

「それで納得するかな・・」

「それで納得しない国は、もう助けられないって突き放せばいいだけよ」

「わかった。ちょっとやってみるよ。歩華ちゃん、ありがとうね」

「西方も大変そうね。北方は平和そのものよ。あっ、でも北方の辺境は騒がしいわね」

「北方の辺境って、裕太くんのとこだよね。大丈夫かな、すごい小さい国みたいだけど・・」

「その騒ぎを起こしてるのが飛田くん本人みたいよ」

「そうなんだ。よかった元気そうで」

「まあ、それで辺境を統一なんて話になれば、次は北方で戦いになるかもしれないけどね、そうなると私と飛田くんで戦うことになるかもしれないよ。そうなったら薫子はどっちの味方になる?」

「ヤダ・・・そんなの・・」

「まあ、そうならないようにするけどね」

「お願いよ、歩華ちゃん。裕太くんと仲良くしてね」

「約束できないけど、努力するよ」


裕太と歩華が戦うなんて想像したくないと薫子は思っていた。



それから、しばらくして、西方に巨大な連邦国家が設立した。その名もミスティア連邦。初代連邦王はハーフール王女で、その参加国家は20にもなり、ミスティアの国力は5倍以上に膨れ上がった。


「やってくれたな大芝め・・・」

「宗方・・どうする・・これでミスティアは西方最大の国家になってしまったぞ」

「下手に攻めるのは危険よね・・」

「そうだよ、久我くんのゼファーセン帝国もあるし、戦うとなると、かなりの準備が必要だよ」


「そんなのはわかってる・・」

すべての計算が狂い、計画が白紙になってしまった。宗方は、次の手を考える必要が出てきてしまった。苦虫を噛み潰すとはこういう時に使うのだろう・・そんな表情で宗方はどこか遠くを見ていた。



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