第65話 悪い流れと良い結果

軍師ブライルは、指示を無視したヴァルガザを呼び出していた。もちろん、命令無視に対しての注意をすることもあるのだが、アースレインの話を聞くのが一番の目的である。


「ヴァルガザ将軍。あまり統制を乱すようなことはお控えください」

軍師ブライルの方が、職務的には立場は上であるが、年上で、その実力も認めている将軍に対して、丁重な言葉で諭す。

「ガハハハッ。悪い、悪い。どうしても、お前が強敵と見ている、アースレインの力を測りたくてな」

「・・・それで、その測りはいかほどでしたか」

やっぱりアースレインの力が気になるブライルは、注意もそこそこに、その話を聞いていた。

「あれはヤバいぞ、ブライル。アースレインに比べたら辺境大連合なんてゴミみたいなもんだ。あんなに強い軍とは初めて戦ったぞ」


「それほどですか・・」

ヴァルガザが、敵に対してそんなに賞賛を送ることなど珍しい・・それだけでも評価すべきなのだが、実際、戦闘力では、ジュルディアの中でも一、二を争うヴァルガザの師団が、一方的にやられた事実は無視できなかった。


「これはアースレインの力を最大限で認める必要がありますね。もしかしたら、現時点でも、全面対決となった時に、我が、ジュルディアはアースレインに勝てないかもしれません・・」


軍師ブライルは冷静にその戦力を比較して、その結論に至っていた。

「それを否定はせんぞ。あれはバケモンだ。ブリトラでも勝てねえと思うぜ」


「だとしたらやはり辺境大連合を利用するしかないようです。ザーリス。使者を三名、用意してください」


軍師参謀のザーリスは、黙って頷くと、使者を用意する為に席を外した。


この使者に託される内容が、アースレインを窮地に陥れる


三名の使者はそれぞれ、一人は帝都へ向けて、一人は友好国の各国へ、一人は辺境大連合へ・・どれもアースレインには良くない内容であった。



クリシュナが、ジュルディアとの戦闘を、圧勝で終えたとの報告を、フィルナは聞いていた。全てを聞き終えると、その内容に少しの不安がよぎる。

「圧勝とは・・・それは困ったな・・」

それを聞いた裕太は、圧倒的な勝利に何を困っているのか尋ねた。

「どうしたのフィルナ。勝って困ることってある?」

「・・おそらく、これからアースレインは、辺境全国家と戦うことになるかもしれないよ」

「ええ! マジで!」

「ジュルディアの軍師ブライルは、冷静な戦力分析ができる者だと聞いているから。もし、アースレインが、ジュルディアの戦力を上回ると判断すれば・・軍師ブライルは他の国々に何かしら働きかける可能性がある」


「さすがに今、辺境全部を相手にするってなると、キツイな」

「しかし、現実そうなる可能性が高いよ。対策を考えた方がいいな・・」

「といっても急に変力を増強できるわけでもないし・・」

「僕に一つ策があるから、ちょっと試してみようか、成功するかどうかは五分五分だけど」

「おっさすが名軍師! 頼りになるな」

「エイメルも、あのリリスや機械のドラゴンを、呼び出した魔法で、また戦力を呼び出せないのか」


あっ、そうか、もう一回くらいはガチャできるオリハルコンがあるな・・

「わかった。ちょっとリュジャナに相談してみる」



ドバヌに全軍を待機させたまま、俺は一度、主城に戻ってきた。もちろんガチャの件をリュジャナに相談する為である。

「え! また、召喚するの?」

リュジャナはあからさまに嫌な顔をする。

「どうも、これから辺境全国家相手に戦争が始まりそうなんだ。少しでも戦力が欲しいから・・」


「確かに、国が滅んだら、お金も何もなくなるけど・・どうして、あんたはそう敵をたくさん作るのよ。ちょっとは落ち着いて生活できないの」

「ごめん・・」

「まあ、いいわ、オリハルコン硬貨を100枚よね。でもこれで最後よ。しばらくはオリハルコン硬貨なんて手に入らないと思ってよ」

「うん。わかったよ」


これは本当に重要なガチャになりそうである。入魂必中。俺は神に祈りを込めて・・いや、神に脅しをかけて、召喚のレバーを引いた。マジで頼むぞクソ神!他のクラスの奴らと違って、俺のガチャは、一回一回の重みが違う。ガチャ運のスキルがあるんだから、一回もハズレなんて引くんじゃないぞ。


そして、召喚され、目の前に現れたのは、白く美しい巨大な竜であった。レアリティの表記はLR+EX・・リリスの時より、大きく、より多色な虹色のオーラが、最大の大当たりを意味していた。その竜の名は、エンシェント・アルティランサー。古の神の竜であった。




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