第58話 暴力の行使

まさかの、ザンカーリとの戦いでの敗北で、不動は考えを改めていた。圧倒的力の行使には、もっと大きな暴力が必要である。


ボルティロス帝国の皇帝となった時に、すでに強大な力を手に入れたと思っていた。だが、それは無敵の力などではなく、同様の大きな力が存在して、さらにそれを超える力も存在することを理解した。


不動は、国をさらに大きくすることを考える。ボルティロスの隣国には、強大なザンカーリ帝国とは別に、スォーザ王国、フエン領主国、ジラニオ王国、チリオム公国の四カ国が存在した。これらにクラスの連中の国はない。四つの国、すべてを制圧すれば、ボルティロスの国力は倍になる。


不動は、すでに侵略の為に行動を起こしていた。一国を侵略すると、他の国々が警戒して、防御を固める恐れがある。そう考えた不動は、四つの国、すべてを同時に侵攻した。それは圧倒的な物量で、早期に制圧する電撃作戦であった。


最初に陥落したのはフエン領主国であった。十万の兵力のこの国も、空飛ぶモンスターや、巨大なモンスター群に襲われ一溜まりもなかった。それは戦いというよりは、虐殺であったと、フエン軍の生き残りはそう語っている。


チリオム公国もまた、空を見上げるような、巨大なモンスターに手も足も出ず、数においても圧倒的なボルティロスの軍勢に、為す術もなく崩壊させられる。


ズォーザ王国もまた、強大なボルティロスの軍勢に追い詰められ、最後は城に立てこもって抵抗したが、三日で陥落して、王族は皆殺しとなった。


一番、粘りを見せたのは、四つの国の中で一番の戦力を誇る、ジラニオ王国であった。四十万の正規兵と、ボルティロスの侵略に警戒していたジラニオ王が雇った、傭兵軍、十万の戦力で迎え撃った。


守るジラニオ軍、総兵力五十万の大軍に対して、侵攻したボルティロス軍は、四十万の兵と五万のモンスターの群れであった。


ジラニオ軍は、守りを固めて、王都であるジュパールで決戦を迎えた。ボルティロスは巨大な王都の城壁を包囲して、攻城戦を開始する。


最初は、王都の城壁は高く、ジラニオ軍が優勢に戦いを進めていた。だが、飛行するモンスターの部隊が登場してから、戦況は大きく変わる。


城壁の上の敵が、飛行する、ワイバーンやグリフォンによって攻撃を受ける。その隙に、ボルティロス兵が城壁を登ってくる。そうやって、一箇所、一箇所、城壁が攻略されていった。


正門が突破されてからは早かった。強力な地龍や、ヒドラのような巨大で強力なモンスターが正門から侵入すると、もはや王都内はモンスターの狩場とかしていた。捕食の為の、殺戮ではない無慈悲な攻撃が、ジラニオ兵に襲いかかる。モンスターの攻撃で混乱した戦場に、統率の取れたボルティロス軍が攻め入ってくる。もはや、抵抗する力もなく、次々と制圧されていく。


ジラニオの王である、ゼボン王は、王の間で、静かにその最後を待っていた。

「ゼボン王・・敵はもう王の門まで迫っています! 今ならまだ脱出できます! 早くご準備を・・・」

そう進言する家臣に、疲れた顔でこう返す。

「もう良い・・・もう良いのだ・・逃げても、歴史あるこの国を滅ぼした罪からは逃れられぬ・・せめて国とともに滅びるのが王の務めだろう」

「ゼボン王・・・」


ボルティロス軍の本営に、ゼボン王の首が届けられたのはそれからしばらくしてからであった。


これでザンカーリ帝国以外の隣国はすべて制圧した。すぐに国内を整え、戦力を増強して、オリハルコン硬貨を集めるように指示を出す。四カ国とも、裕福な国なので、その蓄えはかなりのものだと思われる、それをすべて徴収して、戦力の増強に使用する予定であった。


裕福な四カ国の中でも、桁違いに裕福だと言われているのが、スォーザ王国であった。その為、スォーザ王国の国庫にはかなりの財宝が蓄えられていると思われる。


「どうだ、オリハルコン硬貨は?」

「はっ、今、集まっているだけでも、十万枚は軽く超えるかと」

十万枚あれば、10連ガチャが100回できる・・・それはかなりの戦力アップを意味していた。不動は10連ガチャ100回を一気に引く為に、今日はゆっくり休むことにして、寝室へと向かった。

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