第57話 ドバヌ制圧
アリューゼは、自らの師団を率いて、辺境大連合の一国である、ドバヌ共和国へと遠征していた。ドバヌは高い山々に囲まれ、その地形から守りやすい地と思われ、フィルナはここを前線基地とする計画を立てていた。
ドバヌの兵力は五千ほどで、アリューゼの師団で十分制圧できると思われた。だが、全くの偶然なのだが、ここドバヌに、ジュルディアへの軍事行動の為に移動中の、二個大隊が駐留していたのだ。その為に、一時的に一万五千の兵力がドバヌに集まっていた。
「ドバヌ軍の動きはどうだ」
「はっ、こちらの動きに気がついたようで、軍を展開しています」
「情報より敵が多いな・・」
「アリューゼ将軍、どうしますか、敵の方が多いようですが・・」
「ガイエル。戦いの準備だ」
アリューゼは、敵の軍の動きを見て、その勝機を見出していた。明らかに精錬された兵の動きではない。おそらく、無理やり徴兵された民兵であろう。
だが、相手が素人の兵たちでも、アリューゼは力任せには攻めない。陣形を整え、堅実に戦闘を開始した。
アリューゼ師団で、最強戦力はケンタウロス隊であろう。平均的な強さもそうだが、ケンタウロス隊を指揮する、三人の隊長が途轍もなく強かった。イド、ゲド、マドの三隊長は、それぞれ800のケンタウロス兵を指揮して、その機動力を遺憾なく発揮する。縦横無尽に戦場を走り回るその姿は、まさに三つの龍のごとく荒々しく勇ましかった。
アリューゼ師団のそのほとんどが、突撃力の高い機動兵種なのもあり、その突撃力は凄まじかった。最初の突撃攻撃で、ドバヌの兵は、その三分の一を失い、元々素人兵の集まりである、その攻撃で完全に戦意が消滅した。
数だけは多いが、もはや組織的な抵抗は出来なかった。アリューゼはその状況を見て、逃走する敵に対しては攻撃をしないように命令を出した。それは彼らもまた、権力者による、ただの犠牲者であると、そう思ったからである。
ドバヌ軍は完全に崩壊して、ドバヌ評議会と呼ばれる、国の中枢機関を守るものは何もなくなった。ドバヌは国王はいない国である。評議会が全ての権力を握っており、それが無くなれば国家は崩壊するのである。
アリューゼは、評議宮と呼ばれる建物に、軍を突入させる。そして評議会の人間を次々に拘束した。
「アースレインめ・・・こんなことをして、辺境大連合が黙ってると思うなよ!」
評議会の人間の一人から罵声が飛ぶ。権力者が、その権力から突き落とされれば、それは怒りとなって現れるだろう。だが、それもまた戦国の習わし。その権力の補償など誰もしれくれない。自分で守るしかないのだが、彼らはそれができなかっただけなのだ。
「アリューゼ将軍、拘束した評議会の連中はどうしますか」
各、師団長には、占領した国の対応を、独自の判断でできるように権限を与えている。その場で死刑にするのも、解放するのも、人事権もあるので、登用することも可能である。
「評議会の者は、財産を没収して、国外追放にする。他の者は、希望者だけではあるが、国政に残り、ドバヌで働けるように、取り計らってくれ」
それはアリューゼらしい采配であった。ただ、ドバヌの国政をアースレインが掌握する為に、要所には直属の内政官を配置するところは抜かりがない。
散り散りに逃げていた民兵たちも、希望者はアースレインの雇用契約で、兵として取り立てる通達をすると、その高待遇な条件に飛びつくように、自ら志願して兵になるものが続出した。
こうして、ドバヌの地を完全に掌握すると、土木作業員が集められた。彼らは、このドバヌを巨大な要塞へと作り変える為に作業を開始する。この要塞建設の費用はミスリル硬貨20,000枚ほどで、ドバヌの国庫から捻出された。
要塞化されたドバヌは、以降、ドバヌ城塞都市の呼び名で呼ばれることになる。最大収容兵数は十万人にもなり、アースレインのすべての兵をここに駐屯させることができる。アースレインはここを拠点として、辺境大連合との戦いを行っていくことになった。
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