辺境大戦

第45話 宴の終わり

クリシュナに、例の準備をお願いした。それは竜人族が魔法爆弾を使っているのを見て、もしかして、あれが作れるかもしれないと思いついたものであった。


パーティー会場は、盛り上がりによる、ざわざわとした騒がしさが広がっていた。そこに、ヒューと風を切るような音が響き、その音が止まって、一瞬の静寂の後で上空から大きな爆発音が響きわたった。


状況のわからないパーティーに参加している人々は、何かの攻撃かと思い、緊張で固まり、あの騒がしかった会場は静まり返った。だけど、その上空に広がった色あざかやで美しい円形の光の映像を見ると、出そうになった息を飲み込んだ。


続けざまに、風の切るような音が連続で響き、上空で爆発音が響きわたる。音の数だけ、色鮮やかな美しい光の円が現れ、そして消えていく。今まで見たことない、その幻想的な光景を見て、パーティーの出席者は、言葉を失っていたが、打ち上がるその光の円の数が増えていくにつれて、歓声のような声が上がるようになってくる。そして終盤、その盛り上がりがピークに達して、ものすごい数の光の円が夜空に現れると、大きな歓声は爆音となって広がった。


それは花火であった。竜人族の使っている魔法爆弾を改良して、俺と竜人族の職人で作った秘密道具である。俺の話を聞いて、それを実現してくれた竜人族の職人が優秀なのか、思ってた以上に、うまくいったと思う。


会場は歓声によって大きな盛り上がりを見せていた。すごく喜んでくれているみたいで良かった。今回のパーティーは大成功と言っていいかもしれない。


パーティーも、盛り上がりの余韻を残して、終わりを迎えようとしている。

俺も、静かにパーティー会場から離れて、大浴場へと向かっていた。


シュタット城の大浴場は、城の規模からしたら、かなり大きく綺麗であった。そこが気に入っていて、主城を移動しない理由の一つかもしれない。衣服を脱いで、浴場に入って俺は動きを停止した。そこには体を洗うフィルナの姿があったのだけど、その姿に目を奪われる。


「お先に失礼しているよ、エイメル」

フィルナは、少し中性的で、性別が不明なところがあったけど、こうしてみると完全な女性であった。その姿があまりにもそれが美しすぎて、俺は俯き加減に洗い場へと向かった。恥ずかしいからといって、離れた場所に座るのも不自然なので、照れながらフィルナの隣へ座る。ふっと彼女の方を見てしまう。その時、チラリと彼女の局部を見てしまい、そこに俺と同じ物が付いていて・・状況がわからずパニックになってしまった。

「え・・・あ・・ええと・・こんなこと聞いたら・・あれで・・失礼なことかもしれないけど・・君は女性なのか、男性なのか・・」


驚きで戸惑った俺は、彼女にそう聞いてしまっていた。フィルナは、少し微笑むと、こう答えた。

「僕は両性体だよ。女性でもあり、男性でもあるんだ・・」

「女性でもあり、男性でも・・」

知識の乏しい裕太は、両性具有と言う存在を知らなかった。なので、それを聞いてもしばらく理解ができない。


「女性と男性、どちらの機能も有しているんだよ。ちゃんと女性のものもあるよ。見てみるかい」


性的なことに対して恐ろしく初心な裕太は、顔を真っ赤にして固まる。

「いや・・その胸を見れば十分女性ってことはわかるから・・大丈夫・・」


裕太は、恥ずかしすぎてそう言うのが精一杯であった。フィルナは、そんな裕太を見て優しく微笑む。


そこからは終始緊張していて、湯船に浸かっても疲れが癒されなかった。


風呂から上がると、クリシュナが真剣な顔で俺に近づいてきた。

「エイメル、辺境大連合を調べていたファシーとヒュレルから報告が来た。どうやら近く、辺境大連合に、アースレインに対して、大きな軍事的な動きがあるようだぞ」


いよいよ来たか・・予想された辺境大連合のその行動に、裕太はそう呟いていた。



グルガナ王国の大将軍、バルハイゼンは、平原に整列するグルガナ軍、二万の軍勢の前でこう宣言する。

「敵はアースレイン王国だ。我が軍の強さを見せつけてやろう!」

その呼びかけに、軍勢は大きな歓声で答えた。そしてバルハイゼンはさらに短い言葉を続ける。

「全軍、アースレインに向け、進軍開始!」


その言葉と同時に、グルガナ軍は一斉に動き出した。そしてこの時、辺境大連合に加盟する、ミュジ共和国、アドチア王国、ルドヒキ連邦、ラルタ王国の4国からも、アースレインに向けて、軍が動き出していた。その総兵力は五万を超えていた・・




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