第43話 辺境の動向
辺境大連合の総司令部は、ジアーノン王国南部の要塞都市、キライマカに設置されていた。常に、盟主であるミュラ七世と、二人の副盟主のうち、一人が常駐しており、辺境大連合の決定事項を、ここから発信していた。
辺境の亜人全てが、辺境大連合の通達に対して、受け入れないと答えてきた。それはある程度、予測できたことであったが、やはり、受け入れがたい事実であった。
「どうするミュラ七世・・亜人を討伐するか」
そう問いたのは、辺境大連合の副盟主の一人である、アントルン王国のシミナ王であった。
「辺境大連合の面子の問題もある。ここで亜人を討伐しなければそれを保つこともできんだろう」
「アースレイン王国はどうする、あれもこちらの連合参加を断ってきている。明らかな敵対行為であり、討伐の対象になると思うが」
「もちろん、アースレインも捨て置けぬ、連合に参加しなかったことを後悔させてやる」
ミュラ七世は、すでに、アースレイン討伐の為に、幾つかの国に準備を進めるように要請していた。それは、強国である、グルガナ王国を中心とした、5カ国に及び、動員される兵力は五万を超えることが見込まれていた。アースレインの兵力は1万前後だと予想されるので、十分すぎる兵力である。
◇
ジュルディア帝国の帝都、アルパジャン、そこにそびえる、巨大な城で、ジュルディアの皇帝、ジュレンゼ三世は、側近のルマデン伯爵に、辺境大連合に対する報告を聞いていた。
「盟主はジアーノン王国のミュラ七世。参加国は17を数え、その総兵力は20万以上と推測されます。もし、全面衝突となれば、我が国にも相当な被害が出ることが予想されます」
「ミュラ七世も、それだけの大連合を実現させるとは、相当頑張ったみたいだな」
「おそらく数年前の我が国との戦いでの敗北が、よほど悔しかったと思われますね」
「ふっ・・まあ良い。それなら全力で相手をするだけだ。烏合の衆がいくら集まっても怖くはない」
それを聞いた、ルマデン伯爵は、皇帝にある提案をする。
「それでは、少し牽制の意味を込めまして、攻撃をいたしますか」
少し考えたジュレンゼ三世は、こう答えた。
「そうだな。ジアーノン王国の都市を一つ落とすか・・・」
「はい。ではそのように手配いたします」
この後、ルマデン伯爵は、配下の将軍の一人に、ジアーノンの都市である、ベラッカへの攻撃を命令した。その攻撃が、辺境大連合との戦いの火種となることは、火を見るより明らかであった。ルマデン伯爵は、もちろんそれを理解していたが、こちらが火種を作らずとも、いずれ大きな炎が上がる。そんな状況であることを感じていた。
◇
裕太は、新しく加入した家臣や、友好関係のある、亜人たちを呼んで、盛大なパーティーを計画していた。リュジャナが財布を握っているので、無尽蔵にお金はかけれないけど、最近、みんなには苦労かけてるし、亜人たちとはこれから良い関係を築きたいので、みんな楽しめる趣向を凝らしたものにしたかった。
しかし、まず、困ったのが、出す料理であった。なにしろ、多彩な亜人の人たちが、何を好むか想像ができなかった。とりあえず、亜人に詳しいクリシュナに話を聞いてみたのだが、その好みのバラバラな内容に、少し困ってしまった。
「リザードマンは魚、ドワーフは肉、エルフは野菜、ケンタウルスはチーズなどの乳加工品、巨人族は果物・・・みんな好みがバラバラだな・・」
こんなに好みが違うのに、みんな満足する料理となると、なかなか難しい問題だ。それで思いついたのが、ビュッフェスタイルでのパーティーである。こちらの世界でのパーティー料理は、コース料理のような感じがノーマルらしいのだが、城のコックに説明して、多種多彩な料理を作ってもらうようにお願いした。それを各自、好きなものを自分で取るようにすれば、どの種族も満足いくと思う。
あと、大道芸の人や、音楽家を呼んで、パーティーを盛り上げて、そして隠し球の催しものを一つ用意していた。これは内緒のものなので、周りにも秘密にしてある。
そうやってパーティーの準備ができたので、皆に招待状を送った。人間からそのようなものが送られてくるとは思っていなかったのか、各、亜人の長たちは、一様に驚きを隠せなかったそうだ。
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