第35話 辺境大連合

辺境で最強の国家といえば、すべての者が、ジュルディア帝国の名を挙げるであろう。ジュルディアには10万を超える精強な兵がいるのだが、それだけでは最強の名は与えられない。なんといってもジュルディアに君臨する、国を守護する巨大なドラゴンの存在が大きかった。


エターナル・マスタードラゴンと呼ばれるそのドラゴンは、体長50mはある巨体に、強力な音波ブレスを武器として、空を自由に飛び回る驚異の存在であった。


だが、そんなジュルディア帝国に恨みを持つ、辺境の大国の王がいた。それはジアーノン王国、ミュラ七世であった。数年前、ジアーノンは、隣国のフボー国と戦争中であった。強力な軍隊で、フボー軍を圧倒していたジアーノンであったが、フボーの首都を攻略中に、ジュルディアの援軍がやってきた。そして完膚なきまでに叩きのめされたのだ。


ボロボロになり自国へと帰還したミュラ七世はこの時、ジュルディアへの復讐を誓う。


あれから数年、打倒ジュルディアへの準備は整った。今、目の前には、フボー国とジュルディア帝国を除く、多くの国の王が勢ぞろいしていた。


「ここに集まりし、すべての王の署名が終わった。これにて、辺境大連合の成立を宣言する。盟主はこのミュラ七世が、副盟主には、アントルン王国のシミナ王と、ロギマス王国の、フルブール王とする」


辺境大連合、辺境の中堅国家以上のそのほとんどが参加した、間違いなく、辺境最大戦力を誇る大連合であった。


「参加国17国、総兵力20万・・まさに辺境に敵なしの勢力だな・・これでジュルディアなど物の数ではない。すぐにでもジュルディア攻略を・・」


「またれよ、盟主殿。確かに十分、ジュルディアに対抗できる勢力になったと思う。だが、完璧ではない。まだ、少しだが、ジュルディアに与する国もある。フボー国や、エンベリン王国などは侮れないぞ。もし、全面戦争となれば、まだ勝敗が、どちらに転ぶかわからん。それにジュルディアのドラゴンの攻略がまだできていない」


アントルン王国のシミナ王の意見は、無視できるものではなかった。確かに、やっと互角になったと思うべきなのだろう・・


「まだまだ戦力が欲しいな・・・しかし、めぼしい国は、もう大連合に参加しているしな・・」

「辺境東部の亜人どもを引き入れてはどうだ」

「ふっ、あの亜人どもが、人の戦いに加わると思うか?」


もっともである、人間嫌いの亜人どもが、わざわざ人の争いに首を突っ込むとは思えない。


「そういえば、最近、東部に、アースレイン王国という国が台頭してきていると聞く。なんでも連戦連勝で、その勢力を拡大してるとか」


「ほほう。聞かない国の名だが、どれほどの戦力を持っているのだ」

「今の国力を見ると、最低でも一万の兵はいると思が・・」

「それは無視できない戦力だな、ぜひ辺境大連合に参加してもらいたいものだ・・うむ、早速だが、すぐに使者を送ろう」


辺境でも全然目立たない小さな国だったアースレインも、このような形で注目をされるようになった。それは幸か不幸か・・



裕太は、ランチ後に、自室にてステータス画面を確認していた。自分の知らない仕様がないか確認していたのだ。


確認していると、特殊能力の項目を見つける。そういえば神が、俺には二つの特殊能力をくれるって言ってたな・・とりあえず、その特殊能力の項目確認してみる。


『ラッキーマン』・・・・こう書かれている横に、その説明が短く書かれていた。・・・召喚時に、高レアリティの出現率が大幅アップ。なるほど、この特殊能力があるから、ガチャで一発当たりを引いたのか・・


そしてもう一つの特殊能力が『パーフェクト・ワールド』、説明文にはこう書かれてた。すべての味方の戦闘力を大幅アップ・・・おぉ・・なるほど、だからうちの軍は強いのか・・と、そう思ったのだけど、下の特殊能力補足の説明に、こんなことが書かれている。


(特殊能力は、スキル取得画面で選択して、セットしないと有効になりません)


え・・ちょっと待てよ、もしかして自動でセットされてるわけじゃないよね・・そう思った俺は、ステータス画面で、スキル取得画面を選択して、内容を見てみる。やはり特殊能力はセットされてないようだ。俺は特殊能力二つを選択して、それをセットした。これでどうやら特殊能力が発動したようだ。


UR+のリリスを一発で引いたのも、今までうちの軍が強かったのも、特殊能力関係ないのかよ。逆にすげーな・・


はたから見たら、盛大な独り言を披露しているアースレイン王のもとに、辺境大連合なる、怪しい団体から、使者が来たのは、その日の日が沈みかけた夕暮れ時であった。


「辺境大連合? それは一体どんな組織なのだ」

「辺境大連合は、ジアーノン王国、ミュラ七世を盟主とした、辺境統一を目的している国家連合です。辺境を統一後は、北方全土の統一を目指して、最終的には、大陸に大王朝国家の樹立を目指しております。今、この辺境大連合に参加しますと、王朝の王族として迎えられ、強大な権力を手に入れることを約束されているのです」

「なるほど。面白い話だね」

「はい。ですので、アースレイン王におきましても、ぜひ、辺境大連合への参加をお願い致します」


「面白いが、お断りするよ。アースレインは、すでに連合組織に加入しているんだ。帰って、君の主にそう伝えてくれ」

裕太の言う連合組織とは、アースレイン王国、ゼファーセン帝国、商業国家ミスティア、アルフレッカ法皇国の四カ国連合のことで、当の王たちしか知らぬ、隠れた、大陸屈指の大連合であった。


「なんと・・それは残念です・・しかし、そのご返答は、我が辺境大連合への敵対意思と捉えられますがよろしいですか」

「そうだね、そう思ってもらって構わない」

「は・・では、そのように我が主へ伝えます」


そう言って、辺境大連合の使者は帰っていった。その後、裕太は、すぐにファシーとヒュレルを呼び出した。

「なんですかエイメル様。私たちにお仕事ですか」

「そうね。なんでも言うといいですよ」


「そうなんだ。ファーとヒューにお願いがあるんだよ。実は辺境大連合って組織と今後、揉めそうなんだ。だからその組織の情報を集めて欲しいんだ」


「わかりました、エイメル様。すぐに情報収集に行ってまいります」

「そうね、早い方が良いわ。エイメル様が私たちを頼ってくれてるんですもの、期待に応えないと」


ファシーとヒュレルは、すぐに部下を数十人ほど連れて、情報収集へ向かった。辺境大連合とやらがどんな巨大組織であろうと、負ける気はさらさらない。だけど、準備は十分にする必要があるよな・・・そう考えた裕太は、クリシュナやゼダーダン、アズキ、アリューゼなどの主要人物に集合をかけた。





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