第34話 優雅な生活

巨大な、大理石のような立派な石造りの応接室で、見るからに高級そうなソファに寝転んで、山積みにされたフルーツを頬張っているのは、辺境で悪戦苦闘しているアースレイン王の親友様であった。


「ボホト。今日は記念祭をやるから準備をしてくれ」

「はい・・しかし、何の記念祭でございましょうか」

執事長のボホトは、最もな質問を、だらけきった皇帝にする。


「え・・と、そうだな・・ボードゲームで、ルフラン伯爵に勝った記念だ」

「は・・ではそのように手配します」


義之は、週に最低5回は、何らかの記念祭を開いていた。彼は盛大に執り行われる記念祭を気に入っていた。ゼファーセン帝国は周りの国との関係も良好で、経済的にも豊か、平和で裕福な国家であった。


義之自体が、楽しければいいという考えで、特に野心もないので、このように、ただ贅沢な生活を送っていた。


「リュカオン皇帝、ミスティアのフーハール王女がおいでになりました」

「おっそうかそうか、では通してくれ」


銀色の長い綺麗な髪をなびかせ、純白のドレスに身を包んだ、気品ある女性が義之の前にやってくる。それを見て、義之は人払いをする。

「薫子、通商契約の件は片付いたのか」

「なんとか片付いたかな。ビュフラ国とかメイデン連邦が納得いってないようだけど、さすがにあれ以上は譲歩できないよ」

「あいつら血の気が多いみたいだから気をつけろよ、下手すると攻めてくるかもな」

「一応、軍も準備してるけど・・戦争はやだな・・」

「いざという時は、俺も手を貸すから」

「うん。頼りにしてる」


そう言うと二人は見つめ合い、そのままそっとキスをする。二人の出会いは、中学の時であった。その中学の卒業式で、同じ高校に進学することを知った義之が、思い切って告白して、付き合うことになった。転生後も、偶然、国が隣どうしになり、頻繁にお互いを行き来していた。


「そういえば、宗方たちに不穏な動きがあるみたいだな」

「宗方くんって美玲さんと付き合ってるんだよね」

「そうだ。宗方、向山、鈴木、那智の四人だな。あいつらグループで交際して仲良い上に、全員、西方で固まってるからな。連携が取りやすいから、何かよからぬことを考えてるみたいだよ」


「もしもの時は、2対4で戦うことになるかもしれないってことか・・」

「夢子や裕太が近くにいればいいんだけどな」


残念ながら、裕太は辺境で奮闘中、夢子は中央なので、さすがに助力を得にくい。


「そうだ、今日は記念祭やるんだ。もちろん薫子も参加するだろ」

「あら、また記念祭なの。前来た時もやってなかった?」

「何回やってもいいもんじゃんか、楽しんだもん勝ちっしょ」

「それはそうだけど・・」

「よし。今日の記念祭は盛大にやろう」

「いつも十分盛大だよ」


こうして、本日の記念祭は、いつもの数倍豪華なものへと変更される。



西方最大の軍事大国であるメイヨーラ王朝、その王都であるカラブラッカの王宮にて、西方を代表する四人の王が集まっていた。

「宗方、西方の統一、いつ始めるんだ」

長身の金髪の男に、そう声をかけたのは、黒髪の筋肉質の男であった。


「まあ、焦るなよ吉成。今、義之と大芝の戦力を調べてる。西方で敵になるとすればあの二人だけだからな、奴らの戦力を分析したら、ゆっくり攻めていけばいい」


「戦力ではこちらが圧倒的に有利でしょう、負ける気がしないけど」

茶髪の長い髪の女がそう話す。それにメガネをかけた、胸がやたらでかい女も同調した。

「そうだよ。早く西方を統一して、中央に攻めこもうよ。ララは、雛鶴の泣きっ面を早く見たいんだよ」


那智なちララは、お嬢様で、いけ好かない黎明雛鶴れいめいひなつるを敵視していた。ララの彼氏である、黒髪の筋肉質の男、鈴木吉成は、そんなララに言いくるめられ、打倒、雛鶴で動き出そうとしたが、さすがに相手は中央七大国の強国である。まともに戦っては勝てないと考えた。そこで、吉成は、友人の宗方亜門むなかたあもんを仲間に引き入れ、宗方の彼女の向井美玲むかいみれいと共に、四人の連合を成立させて、まずは西方を統一させ、その勢力を背景に、中央に進出することにしたのであった。


西方は、この四人以外には、久我義之くがよしゆき大芝薫子おおしばかおるこの二人しかいない。後は物の数ではないNPCの国だけであった。


「すぐに攻めたいが、もしかしたらガチャ産の強力な魔物を引き連れている可能性もあるからな・・」

「確かに、久我くんも、大芝さんもかなり裕福な国だから、かなりガチャをやってる可能性があるからね」


「だったら、先に周りのNPC国家を占領しないか」

「それもそうだな、あのぼけっとした吉成たちのことだ、周りの国が俺たちに占領されても、自分たちに害が及ばないと動きわしないだろうしな」


吉成は、宗方たちに、完全に性格を見抜かれていた。吉成も薫子も、確かに、直接的に危害がない限り、むやみに動くことは考えられなかった。


こうして、四人の連合は、西方統一に乗り出すのであった。




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