第30話 初めてのガチャ

夢子から送られたオリハルコン硬貨は全部で300枚入っていた。お礼を言うために、通話チャンネルを開いて、夢子に連絡する。


「夢子、オリハルコン硬貨届いたよ、ありがとな。国が大きくなって稼げるようになったら、必ず返すから」

「だから、返さなくていいって。それより、どうなの調子は。辺境ってどんなとこなの、すっごい田舎なんでしょ、街とかなくて、家は全部藁で出来てるって本当?」

「バカにするなよ、街くらいはあるぞ。ちゃんと木造や石造りもある・・どこの情報だよそれ」

「そうなんだ。住んでいる種族もいっぱいあるって話も嘘なのかな、こっちだと人間以外だと、エルフかドワーフくらいしか見ないから」


これは本当かもしれない。街に行くと、チラホラとレアな種族を見かける。竜人族も珍しい種族みたいだし、アースレインがある辺境西側と違って、辺境の東側は、さらに多くの種族が住んでいるって聞くし・・


「種族は多いかもしれないな」

「やっぱり、そうなんだ。行ってみたいな辺境」

「くればいいじゃん」

「簡単には行けないよ・・やることはいっぱいあるし・・ここから辺境は遠すぎるよ」

「まあ、そのうち、俺の国がそっちに近づくと思うけどな」

「なになに、どうしてそんなことになるの」

「大きくするんだよ、北方全てを統一するくらいに、そうすれば、中央なんて目と鼻の先だろ」

俺がそんな大きなことを言うと、決まって夢子が言ってくる言葉が返ってきた。

「ゆーちゃんってたまにすごいこと言うよね」


それがなぜだか可笑しくって、笑っていると、夢子が呆れてチャンネルを切ろうとした。

「何が可笑しいのよ・・まあ、いいけど。それじゃ、私も仕事が一杯あるから」

「あっ、夢子・・本当にありがとな」

「・・・いいけどね」


夢子がそう言うと、チャンネルが切れた。


さて・・とりあえず、オリハルコン硬貨だが・・ガチャだな。300枚あるから三回できるけど、さすがにそれは調子に乗りすぎだ。国が大きくなってお金がすごくかかるから、とりあえず一回だけにしておこうかな。


しかし・・ガチャのやり方がわからん・・・みんな当たり前のようにやってるけど、どうやってるのかな・・仕方ない、奴を呼ぶか・・


「おい神! ちょっと出てこい!」

少し間を置いてから、神のあの声が頭に響いてきた。

「なんじゃお主か・・今日は何の用じゃ」


「ガチャのやり方がわからん。どうすればいいんだ?」

「ガチャ・・・ああ、召喚のやり方か、そんなのステータス画面に書いとるだろうが」


なんか聞きなれない言葉に、聞き返す。

「何だよそのステータス画面って・・」

「目をつぶって自己集中すれば出てくる画面じゃ、どうしてそんなことも知らんのじゃ、ちゃんと最初の記憶に入れておいたはずじゃが・・・あっ! ・・・」

「何だ神! その『あっ!』て何だよ・・またお前やらかしたな・・・」

「すまん・・お主の、都合の悪い記憶を消した時に、間違ってその辺の記憶も消してしまってたようじゃ・・」

「おいおい・・・どれだけ俺に恨みがあるんだよ・・」

「すまんすまん・・お詫びに一度だけ召喚を無料にしてやるから許せ」

「・・仕方ねえな」

「物分りがよいのはよいことじゃ。それじゃ、また何かあれば呼ぶがよい」


そう言って神の声は聞こえなくなった。


さて、ステータス画面だな、目をつぶって、自己集中・・・すると目の前に、ゲーム画面のような映像が浮かびあがってきた。どうもあの神は、人間の作ったゲームに、感覚的なところでかなり影響を受けてるようだ。所々で、その片鱗が見え隠れする。


ステータス画面には幾つかの項目が表示されている。その中の、【ヘルプ】を選択すると、【よくある質問の項目】があった。そこを見ると、【召喚ができなくって困ってます】とリンクがあったので、そこを選択してみる。すると画面にこう書かれていた。


オリハルコン硬貨はあるかな。召喚一回で、オリハルコン硬貨が100枚必要になるよ。あなたの目の前に、オリハルコン硬貨を置くんだぞ。一枚でも足りないと召喚できないので、ちゃんと数えてね。オリハルコン硬貨を置いたら、召喚のイメージを思い浮かべるんだ。それはどんな形でもいいけど、プレイしたことのあるソジャゲのガチャを参考にイメージすると、より具体的でかっこいい召喚ができるぞ。さて、いよいよ召喚だ。君の目の前には大小二つのレバーがないか。それが召喚の合図になるよ。小さなレバーで単発召喚。大きなレバーは10連召喚だぞ。レバーを引くともう引き返せないからな、あとは良い召喚ができるように、神に祈るんだ。


・・・・とりあえず引いてみるか。


俺はヘルプに書いている通りに、オリハルコン硬貨を目の前に置いて、頭に、ガチャのイメージを浮かべる。ソシャゲは幾つかプレイしていたので、その辺は問題なかった。裕太の前に、巨大な門が出現する。その門の前には、紋様のある石に、大きなレバーと小さなレバーがあった。ここは悩むことなく、小さなレバーを引いた。すると巨大な門が開かれて、そこから一つの影が飛び出してきた。


虹色のオーラに包まれた、その魔物の名は、夜の女神リリス、レアリティはUR+EXと表記されていた。豪華なエフェクトとUR+EXと言うレアリティから、裕太は当たりを確信した。


「マジか・・一発ツモじゃないか・・」


召喚された、夜の女神リリスは、周りをキョロキョロと見渡すと、裕太に話しかけてきた。

「どうやらお主が私を召喚したようじゃな、私はリリスじゃ、今後ともよろしく」


うわ・・喋った・・召喚した魔物って喋るんだ。それにしても露出が多いな・・背中に黒い羽がある以外は、普通に綺麗な金髪のべっぴんさんだし・・目のやり場に困る。

「え・・と・・俺はエイメル・アースレイン。よろしくお願いします・・」


露出の多い大人の女性であるリリスに、中身はうぶな高校生の裕太は緊張で固まってしまった。



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