第19話 中央七大国

巨大な円形の部屋の真ん中に、大きな円形のテーブルが置かれていた。そこには豪華な椅子が七つあり、七人の人物が座っていた。


「それで、この会合、意味あるのか?」

金色の短髪で、必要以上に鋭い目をしている男が、他の6人に対して、そう発言する。

「島村くん。それはどう言う意味なのですか。中央の秩序の為の会合が無意味とでも言いたいの?」

長い栗色の髪を、サイドアップした貴賓のありそうな女性が、そう言い返す。島村と呼ばれた男は、薄ら笑いを浮かべてこう言い放つ。

「だってよ。俺、お前のこと大っ嫌いだからな、雛鶴ひなつる。話し合いも何も、お前といくさする気満々だぜ」


それを聞いた、雛鶴は、鋭く睨み返すと言い返した。

「私もあなたのことは大っ嫌いよ、島村アキラくん。だけど、それと国家の情勢は別でしょ。中央の戦争は、大陸の戦争です。あなたのシルヴェン王国と私のベオリューダ王国が戦争なんか始めたら、大陸全土に影響が出ますよ。それを防ぐためのこの会合です」


雛鶴のその話に、学級委員長の山田直も賛成する。

「そうだよ島村くん。悪いけど、僕も雛鶴くんの意見に同意するよ。中央で戦争を起こしちゃダメだよ」


静観していた雛森夢子ひなもりゆめこも、さすがに中央での戦争行為には反対のようで、ここは発言してくる。

「どっちにしろ、クラスメイトで争うのは良くないよ。みんな楽しくやればいいよね」


雛鶴の取り巻きで、イエスマンである登戸静香のぼりとしずかも当然、雛鶴を肯定する。

「島村くん。あなたどうしてそんなに暴力的なの、雛鶴さんは、中央を平和に保つことによって、大陸全土の平和を維持しようとしているのよ、それを乱すなんて言語道断です」


どうも中央は雛鶴に同意する面子の方が多い・・何が平和だ・・一番胡散臭いのは黎明雛鶴じゃねえか・・あいつは今、自分の力を蓄えてる段階なんだよ。そのうち本性を現すぞ。だが、今、表立って敵対するのは得策じゃねえか・・現状、俺についてくれるのは、太一くらいのもんだからな。


中央七大国の王の一人、田中太一たなかたいちと島村アキラは、遊び仲間であった。中学時代からの友人で、気心が知れていた。そんな太一も、今はアキラの意見が劣勢なのを見て、沈黙していた。


ここで、中央七大国、最大の大国と言われている、ジュスラーク王朝の王が発言する。

「ぼ・・僕は、僕の国をそっとしておいてくれればそれでいい・・」


ジュスラークの王、阿南幸人あなんゆきとは、内気でオタク気質、基本的に、自分のテリトリーを侵されなければ、他には興味がない男であった。そもそも、こうやって会合を開くのも嫌いで、早く帰って、自分を喜ばすだけに作るせた、美女集団に囲まれて生活したいと思っている。


この後も、雛鶴と島村の不毛な言い合いが続いただけで、この日の中央七大国による会合は終了する。最終的には、中央での戦争を禁じる決議を、多数決によって決定する、しかし、島村は最後まで納得していないようであった。


会合後、国に帰る馬車の中で、ベオリューダ女王、雛鶴とジュファー帝国、女帝の静香が話をしていた。


「それで雛鶴さん、はこれからどうしようと考えてるのですか」

会合での建前とは違う、本当の目的を、静香は聞いていた。少し微笑むと、雛鶴はこう答える。

「もちろん・・私の最終的な目的は、大陸制覇です。すべての人は、最も優秀な者に支配されるのが一番なんです。それができるのは、私以外にいまして?」


堂々とそう答える雛鶴に、静香は笑顔でこう返答する。

「いえ、いませんよ。世界の王になるのはあなただけです」


そう、雛鶴はこの世界の王になろうとしていた。だが、まだ他のクラスメイトの力は強大である。雛鶴と静香の勢力だけでは中央すら支配することはできないだろう。今は・・今はただ力をつければいい・・・そう考えていた。




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