第15話 虐殺情景

黒崎に、五日の猶予をもらった日から、丁度三日目、レイディモンの軍が、ジュラの王都を包囲した。まだ、全軍の王都への入場は完了していなかった。


「黒崎め・・・何が待ってやるだ・・・普通に進軍してきてるじゃねえか・・」


レイディモンの本営には、黒崎の腹心である、ヴァロン元帥の姿があった。

「ヴァロン元帥、ジュラ王都の包囲が完了しました」

「よし、では第二、第三軍団は進軍して攻撃を開始しろ。他の軍団はその場で待機」

「はっ」


先方は、攻撃力の高い二つの軍団であった。それぞれ、10万の兵で構成され、その中には無数の、巨大兵の姿が見られる。巨大兵とは、ジャイアントやサイクロプス、ドラゴンなど、大きな魔物で、攻城戦ではその巨体からの攻撃で、絶大な効果を発揮する。


二つの軍団は、王都を挟み込むように進軍して、攻撃を開始した。ジュラの軍勢は、高い城壁から、魔法や弓矢なので攻撃を加え、それに対抗する。


サイクロプスが二体、王都の門へと歩み寄って行く。それは門を破壊する為だと思われる。門の周りのジュラの兵が、それを防ごうと、攻撃を集中するが、その歩みは止まらない。


サイクロプスが、門の目の前に迫り、誰もがその門の破壊を想像した瞬間。無数の、赤い稲妻がサイクロプスの上空に出現する。それは大きな帯のように塊となって、二体のサイクロプスを直撃する。稲妻を受けたサイクロプスは、静かにその場に崩れ落ちた。レイディモンの兵たちは、未知の攻撃で、頼もしい仲間を失い、混乱する。そこへ稲妻の攻撃が広範囲にわたり落ちてくる。稲妻によって、燃やされ、ケシ飛ばされ、吹き飛ばされる兵達。その一度の攻撃で、レイディモンの第二軍団の兵、数千人に死が訪れた。


第二軍団の軍団長である、ミュンヘン大将軍は、ジュラ王都の上空に出現した、大きな翼を持つ、未知の敵の姿を捉える。それは伝承に記されている天使に酷似していた。危険を感じたミュンヘン大将軍は、軍団を一度引くように伝令する。


ヴァロンは、戦況の変化を見て、驚愕する・・それは我王の見識の底深さに対してであった。王はヴァロンにこう伝えていた。もしかしたらジュラに強力な存在がいる可能性があると・・そしてその時の対処法も授けられていた。


「後ろで控えているアレを出せ」

そう命令された部下は、顔色を変えて、陣の後方へと走っていく。


ジュラの、いや、広尾の秘密兵器であるテンペスト・ドミニオンの猛攻は続く。撤退する、敵の兵に容赦なく、その雷の力を持って屠っていく。すでに万の兵をその雷によって消滅させていた。


広尾はその戦況を見て、勝利を確信していた。敵側には、テンペスト・ドミニオンに対抗できる者はいない・・・そう、上空にあの影が近づいてくるまでは・・


「なんだ、あれは・・・」

それは黒い巨体であった。山のような大きな影が、敵陣の奥から飛んでくる。その大きさは、下手な城より大きく。見るだけで強烈な威圧感を振りまいていた。


それは黒崎の召喚したモンスターであった。名はエクソダス・ブラックドラゴン・・レアリティはUR・・広尾のテンペスト・ドミニオンより格上の存在であった。


「テンペスト・ドミニオン! あのドラゴンを撃ち落せ!」


広尾の命令で、テンペスト・ドミニオンは奥義を発動する。それは雷の巨砲・・テンペスト・キャノンであった。山を粉砕する、雷の一撃が、上空を飛来する、巨大なドラゴンに放たれた。


雷の巨砲は、エクソダス・ブラックドラゴンに直撃する。その攻撃は、羽の一部をもぎ取り、体に大きな傷をつけた。しかし、その一撃は大きなダメージを与えたが、それは致命傷ではなかった。テンペスト・ドミニオンが、奥義の二発目を放つ前に、黒いドラゴンは、雷の天使をその射程に収めた。


ドラゴンの口から、黒い炎が放たれる。灼熱と言う表現では足らない、爆熱のその炎の一撃は、雷の天使を、一瞬で消し炭に変えた。そして、その炎は天使を消し去るだけでは止まらず、王都の城壁の門も溶かし消し飛ばした。


その光景を見た広尾は、完全な敗北を感じ、その場で膝をついた。


門を壊され、城壁の優位性もなくなったジュラ軍は、圧倒的多数のレイディモン軍に為す術もなかった。数時間で完全に制圧され、ジュラの者は、そのほとんどが殺された。


この戦いで、ジュラ公国は滅亡し、ジュラ公王である、広尾純也は、囚われの身となった。







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