第14話 滅亡への秒読み
すでに七つの城、十五の砦、三つの要塞が、進行するレイディモン軍によって落とされていた。ジュラ国の西側は、すでに占領下にあり、王都までの道には、それを防ぐものは何もなかった。
「ジュラ公王、どういたしましょうか、レイディモンの進行を止めることができません。このままでは王都に攻め入られるのは時間の問題かと・・」
ジュラ公王こと、
「全軍を王都に集めろ・・・籠城する。食料や物資も運び込め」
「全軍と言いますと、東側の城や砦の兵もですか?」
「全軍だ・・何度も言わすな。時間がないぞ、急げ」
「はっ」
全軍を王都に移動させるのに最低でも四日はかかるか・・その間、時間稼ぎができればいいのだが・・
「ブハラ将軍、レイディモンはどれくらいで王都に攻め入ってくると思う?」
「そうですね・・今の進軍スピードですと、三日もあれば到着するかと」
「そうか・・」
1日足らない・・仕方ない・・もう一度黒崎と話をするか・・広尾は、二度と話すことのないと思っていた黒崎へのチャンネルを開いた。
「黒崎、少し話がある」
「どうした広尾。降伏でもするのか」
「いや・・最後まで戦うつもりだ。しかし、俺の敗北は確定だろ。そこでお願いなのだが、今、最後の戦いをする為に、王都に兵を集めている。そこで最終決戦を挑むつもりだ。しかし、兵を集めるのに五日はかかる、最後は心残りのないように戦いたい。無理は承知だが、軍の進軍を五日ほど止めてくれないだろうか。これはクラスメイトの最後の願いだ」
変な嘘をつくより、正直に話をした方が効果があると考えた。それに対する黒崎の返事は意外なものであった。
「良いだろう。五日待ってやる。その間に十分な準備をするがいい」
黒崎のセリフは、圧倒的な優位からくる、完全な上からの言葉であった。広尾は、そんな黒崎の性格を利用して、この提案を持ちかけていた。結果それが功を奏した。
「ありがとう。それではお互い最善を尽くそう」
そう言って広尾はチャンネルを閉じた。
「宰相、今城にあるオリハルコン硬貨を全て集めてくれるか」
「オリハルコン硬貨だけで良いですか、ミスリル硬貨などはどうしますか」
「いや。オリハルコンだけでいい」
「かしこまりました」
最後の戦いの為にやれることはやろう・・広尾はそう決心していた。
オリハルコン硬貨が集まるまで、時間があるので、隣国であるヌバルク王国の女王、
「下田、今いいか」
「何、広尾。私に用?」
「今、黒崎に侵略されて、大変なことになっている。悪いが援軍を送ってくれないか」
「ごめん。それは無理だわ。黒崎に目、付けられたら嫌だもん」
「何言ってるんだ。俺がやられたら、次はお前のところの番だぞ」
「いやいや、無理だって、あんたがやられてる間に、私はなんとか準備するから、せいぜい時間稼ぎ、お願いね」
このクソ女・・自分のことしか考えてないのかよ・・
「わかった。お前には頼まん」
「はいはい〜それじゃ、頑張ってね」
うっ・・すぐに援軍をお願いできそうな国は下田のとこぐらいだからな・・やはり自力でどうにかするしかないか・・
城中から集められたオリハルコン硬貨は、二千枚ほどであった。これでガチャが20回引ける・・戦局を打開できるほどのアタリが引ければいいけど。
広尾は人払すると、城の中庭で、魔物の召喚を開始した。今回は10連ガチャを二回・・今までは良いモノを引けなかったが、重要な今回のガチャでは、レアリティの高い強力な魔物を召喚したいと心から思っていた。
目の前に、オリハルコンを置いて、頭の中で、召喚のイメージを浮かべていく。やがて、目の前には、金の歯車の、重々しい仕掛けが現れる。仕掛けには二つのレバーが付いていた。そのうちの大きなレバーの方を、広尾は引いた。それば10連召喚のレバーであった。
すると空に10個の魔法陣が浮かび上がる。そして、その一つ一つに魔物の姿が浮かんでくる。
一つ目は、リザードマンの群れの姿であった。レアリティはN+を表示する。明らかなはずれである。その次はオークの群れ、レアリティはN、その次はハーピーの群れ。レアリティはN+。そしてNのゴブリンが三連続で続き。その次にようやくまともなレアリティ、Rのジャイアントが出てきた。しかし、こんなものでは戦局を打開できない。10連の残りは三つ・・と期待したが、出たのはリザードマンとオークの群れが二つであった・・・
心底がっかりしたが、あと10連を一回引ける。この最後のガチャに賭けてみた。結果は最高のものであった。魔法陣の一つに現れたのは、金ネームのレアリティSR+、テンペスト・ドミニオンと呼ばれる天使の姿であった。見るからに強そうなその姿に、広尾は興奮する。
「やった・・大当たりだ・・」
他は最初の10連と変わらず、リザードマンやオークばかりであったが、この一体が出ただけで、オリハルコンを全て使った価値がありそうであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます