第6話 クラス会の続き

不動と黒崎は睨み合っている。そこへ委員長が間に入った。

「まあ、まあ、二人ともここはクラスの仲間なんだから、潰す潰さないなんて物騒なこと言わないで、仲良くしようよ」


「てめーは黙ってろよ委員長」

「レイディモンとボルティロスを相手に意見するなんて、委員長、君の国はよっぽどの大国なんだろうね」


黒崎は嫌味で言ったのだろうけど、素直な委員長にはそれは通用しなかった。

「僕の国はラーゾン王国だよ。確かに君たちの国に比べれば小さい国だね」


「なっ・・中央七大国か・・・」


「委員長、中央七大国か・・ちょっと仲良くしとこ・・」

義之のその発言を聞いて、俺はまた説明を求めた。

「まさか中央七大国まで知らないとは驚きを通り越して呆れてるぞ。いいか、この大陸は大きく分けて五つの地方に分かれている。西方、東方、南方、北方。そして中央だ。中央は五つの地方の中で、別格の激戦区なんだよ。中央には七つの国があるんだけど、どれも大陸屈指の強国なんだよ。通称、中央七大国。委員長はその中の一つ、ラーゾンの王ってことだから、仲良くしといて損はない。ほら、見てみろ、ラーゾンだって聞いて、みんなの委員長を見る目が激変した」


「へえ・・そうなんだ五つの地方ね・・で、俺はどこの地方なんだ?」

「知らねえよ。どこなんだよアースレインって」


「辺境よ」

俺の左隣の黒髪の女性がそう呟いた。

「ええ・・と誰?」

宇喜多歩華うきたあるかよ。アースレイン王国は、北方の辺境の国よ。飛田くん。どうしてそんな小国の王なの?」

「何! 裕太お前の国、辺境の小国なのか? どうしてそうなった?」

「・・・・大国の王の椅子が・・一つ足らなかったってあのバカ神が・・」


それを聞いた義之はバカみたいに大ウケして笑い転げる。

「ははははっ・・いや・・それは大変だね・・お金とか兵士とか困ってないかね・・援軍や物資を送ろうか? はははっ」

「なんて奴だ・・だから言いたくなかったんだよ・・・まあ、せっかくなんで物資と兵は送ってくれ」

「あっ、やっぱそれは無理だ。遠すぎるわ。北方の辺境なんて間に20カ国くらい通らないとダメだから物理的に無理だわ」

「お前それ分かってて言ったな」

「いや・・さすがに北方の辺境って・・ウケるわ・・くっくっ・・」


「お前には二度と頼まない!」

俺が怒ってそう言うと、笑いながら謝ってくる。


「さすがに北方の辺境だと、私の国からも援軍は遅れないな・・・」

そう言ってくれたのは藍色のショートカットの可愛い女の子であった。

「え・・と君は誰?」

「ひっどーい。幼馴染もわからないの?」

「えええっ。夢子か!」

「だよ。」

「だいぶスペック上がったな・・・」

「何よそれ! 前が凄く酷いみたいに言わないで」


「それより、夢子の国はどこなんだ?」

「私の国も中央七大国の一つで、アルフレッカ法皇国ってとこ」

「お前もか! どいつもこいつも国がでかけりゃいいってもんじゃないぞ・・くそ・・・」


惨めになるので、もうこれ以上ここで話を聞くのは嫌だと思い始めていた。結局田舎で遠いからって理由で誰も助けてくれないし・・


クラス会の話も、不動と黒崎の争いを刺激しないように、無難な方向へと向かっていた。

「やっちゃったよ10連ガチャ」

「マジかよ。どうだった?」


10連ガチャとは10回連続で魔物召喚を行うことらしい。魔物召喚はランダム性が強く。当たり外れが激しいことから、みんないつの間にかガチャと呼ぶようになっていた。


「サイクロプス10体ってのが当たりかな」

「すげー。俺も5連やってみたけど、ゴブリンやコボルトの群ればっかで全然ダメだったよ」

「私はワイバーンが出たよ」

「飛行ユニットかよ、いいな〜」


そもそも当たり外れ以前に、ここにはそのガチャすらまともにできない王がいるってことをみんな気にもしないな。


「夢子や、義之はガチャやったのか?」

「してみたよ。マスタードラゴンってのが出てきたよ」

「まじか夢子・・それは大当たりだな・・」

「義之くんはどうだった?」

「俺はなぜかオークの群れってのばっかなんだよな・・もはやオークで一個軍団を編成するほどだよ」


そんな楽しい会話を、俺は悲しい目で見つめる。そんな状況を察したのか、気を使って夢子が優しく声をかけてくれる。

「え・・と、多分あれだと思うけど、ゆうちゃんはどうだった」

「我が国の国家予算は金貨二千枚だ・・・どう逆立ちしてもガチャなんかできるはずもないよ・・兵はいない。金もない。俺はどうすればいいいのか・・」

「・・・・」

「まあ、元気出せよ。なんとかなるって」

「あっ、そうだ。兵士は送れないけど、お金だけなら送ってあげれるかもしれないよ」

そんな夢子の言葉に

「まじか夢子!」

「うん。うちに優秀な諜報員がいるから、オリハルコン硬貨二、三百枚くらいなら持たせれると思うし」


優しい幼馴染の言葉に俺は涙を浮かべてこう答えた。

「それじゃあ、少し送ってくれるか・・お金を稼ぐようなったら必ず返すから・・」

「別に返さなくてもいいよ、大した額じゃないし。すぐに手配してあげる。でもさすがに中央から北方の辺境まで送るのには一ヶ月くらいはかかるかな・・」

「すまねえ・・・夢子・・口だけの親友と違って、持つべきは幼馴染だよな・・」

「うるせえ。そんなこと言うならせっかく俺もお金送ってやろうかと思ったけど、やめた」

「嘘に決まってるじゃん。義之様。どんどんお金を送ってくれよ」

「調子いいよな。まあ、ここで恩を売っとくのもありか・・それじゃ、俺も手配しとくよ。夢子んとこと違って、優秀な諜報員じゃないから、届くかどうかわからんけど」


よし、これで一ヶ月後にはオリハルコン硬貨が多少手に入るぞ。なんとかこの一ヶ月を凌げば、なんとかなりそうだ。


そんな感じで有意義な約束を取り付け、初めてのクラス会が終了した。あとは、この一ヶ月を乗り切る為にどうするか考えるだけである。



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