第5話 初めてのクラス会
それにして、兵士が30人しかいないこの国を、どうやって大きくするか考えてみたのだけど・・難しいよな・・あっ、そうだ。そういえば神の恩恵があるじゃないか、確か、魔物の召喚ができるんだった。それを戦力に周りの国を侵略すればいいよな。早速、魔物の召喚に必要なオリハルコン硬貨を用意してもらう為に、ゼダーダンに声をかける。
「オリハルコン硬貨を100枚ですか・・・もうしわけありません。この国にはオリハルコン硬貨なんて100枚どころか、1枚も用意できません」
「え、そうなの?」
「はい。我が国の国家予算は金貨二千枚です。一枚で、金貨一万枚の価値のあるオリハルコン硬貨を用意するには最低でも10年はかかります」
「なんと・・そんなにオリハルコン硬貨って高価なのか・・・」
やばい。魔物の召喚にも頼れないとは・・そにしても国が小さい上に貧乏とは・・いや・・国が小さいから貧乏なのか・・・えい。そんなのどっちでもいい。とりあえず周辺の国の情勢でも把握しておくか・・
「ゼダーダン。この国の周りの国ってどんな感じなのかな・・こんな弱小国なんかすぐ攻められそうだけど、なんとか無事みたいだよね」
「それは前王が外交でなんとか切り抜けていたのです。我が国の周りには4つの国が隣接しているのですが、どれも我が兵力を数倍する国ばかりです」
なんと、それは朗報じゃないか・・数倍ってことは多くても百くらいの兵力ってことだよね。それならなんとかなりそうだ。まずは隣接する4つの国を奪い取ろう。
「ゼダーダン。その周りの4つの国を攻めとりたいんだけど・・どうすればいいかな。いきなり攻めたら仁義とか道理とか問題あったりするかな?」
「なるほど。エイメル様は野心家でございますな」
クラスメイトにいい顔したいだけって野心家と言うのだろうか・・
「しかし・・その心配は無用だと思いますよ。我が国の前王が死に、周りの国と結んでいた盟約も破棄されております。なので向こうからこちらに攻め入ってくるのも時間の問題かと思われます」
「なるほど、向こうから攻めてくれば、遠慮なく叩き潰せるね」
「エイメル様は戦が怖くないのですか」
「え? そうだね、怖いって感覚ないな・・どうしてだろう・・」
確かに不思議だ・・戦いが怖いって感覚がない。ゲームのやりすぎだろうか・・いや、そんなレベルの話じゃないな・・これはもしかして神が変な操作してんじゃないだろうか・・
「しかし・・・周りの国より先に、別の問題を解決しなければいけませんが・・」
「別の問題?」
「はい。国内の問題です」
内政か・・なんか目を瞑りたい問題が山積みのようで怖いな・・今は聞かないでおこう。そんなことを考えていると、チャットアプリの着信音に似た音が頭の中に直接響く。
なんだなんだ・・驚いていると、誰かの声が聞こえる。
「飛田くん。30分後にクラス会をやります。準備しておいてください」
「クラス会? なんだよそれ・・」
「我々、三年二組は神様から通話できる能力を得てるじゃないですか、それを使って、みんなで情報交換をしようって話です」
「なるほど・・で、具体的になにすればいいいんだ?」
「何もする必要ないですけど、周りの人間には見えない人と話をするので、盛大な独り言になると思います。なので人払いして自室で待機してください」
「あ・・なるほど・・了解、わかったよ。で、今更なんだけどお前誰だよ」
「あ・・転生して声が変わったかな・・僕は、委員長の山田だよ」
「あー委員長か! 確かに少し声が違うな・・」
「エイメル様。エイメル様どうしました?」
ゼダーダンの声で我に帰る。あ・・そうか、いきなり盛大な独り言言ってた。
「あ・・なんでもないよゼダーダン。ちょっと自室で考え事するから、しばらく誰も部屋に来ないようにしてくれるかな」
「かしこまりました。そう手配いたします」
とりあえず部屋に戻り、俺は椅子に座ってクラス会が始まるのを待った。しばらくすると、視界が段々と暗くなってくる。疲れ目かなと思っていると、目の前に大きな円形のテーブルが出現した。その円形のテーブルを囲むように、ポツリポツリと人影が現れ始めた。
現れた人々は、知ってるようで知らない顔ばかりで、何か不思議な感覚になる。
「よう。そこの赤髪、裕太か?」
多分俺に話しかけてるよな・・口調と雰囲気からあれはおそらく・・
「長髪の偽イケメンはもしかして義之か?」
「何だよ偽イケメンって・・まあ、義之だけど。そっちの調子はどうだ裕太」
「まあ・・そこそこだな」
「俺の国はゼファーセン帝国ってんだ。強そうだろう。お前の国はなんて名前なんだ?」
「アースレイン王国だよ」
「アースレイン王国・・全く聞いたことないな・・・どの辺にあるんだ?」
「さぁ、どこだろう・・」
「自分の国の場所も知らねえのかよ。薫子、お前知ってるか?」
義之の隣に座る銀髪の美しい女性が、あの大芝薫子だったようである。
「う・・・ん。ちょっと聞いたことないかも・・」
「大商業国家ミスティアの女王が知らないなんて、お前の国どんだけマニアックなんだよ」
「うるせーよ! それより委員長が何か言ってるぞ。クラス会が始まんじゃねーの」
う・・このまま話してると、俺の国がとんでもない小国だってバレてしまう・・なんとかごまかさないと。
委員長は立ち上がり、クラス会の開始の挨拶をする。
「それじゃ、クラス会を始めます。この会の趣旨というか目的は情報交換や国家間の取引、後は、決め事なんかも話し合えればいいと思います。早速ですけど、誰か言いたいことはありますか?」
すぐに金髪の大男が手を挙げる。その大男を、委員長が指をさした。
「俺は
やっぱりと言うか、イメージ通り、その大男は不動であった。そんな不動の発言に、意外な人物が発言する。
「お前こそ、属国になるなら今のうちだぞ。今、属国になれば命は助けてやる」
その意見を言った男を、不動は鋭く睨む。
「誰だてめーは?」
「黒崎だよ、バカゴリラ」
「てめー
「王の資質は知略だ。お前のような力だけのバカにはもう負けはしない」
「ほほう・・それじゃ、お前の国の名を聞いておこうか・・ぶっ潰してやるよ」
「僕の国はレイディモン神帝国だよ。お前の国も名乗ってみろバカゴリラ」
レイディモンの名を聞いて周りがざわつく。どうやら有名な国らしいけど、俺は知らなかった。小声で義之に聞いてみる。
「お前レイディモンも知らねえのかよ。南方最強の国家で、超大国だ」
「へ・・そうなんだ・・義之の国よりでかいのか?」
「比べものにならねえよ。うちの10倍以上の国力はあると思う・・」
「そんなにか・・てかお前んとこが大したことないんじゃないのか」
「バカ言うな、うちだって西方国家の中では大きい方だぞ。兵力も10万はいるし」
10万の兵力・・・うち30人なんだけど・・これは絶対言えねえ・・
しかし、レイディモンの名を聞いても不動は動じなかった。そして堂々と自分の国の名を口にする。
「俺の国はボルティロス帝国だ。レイディモンがどうした。ぶっ潰してくれるよ」
「うわ・・・不動がボルティロスかよ・・ちょっとやばいな・・」
「何なのそのボルティロスって?」
「お前ほんと何も知らねえな。ボルティロスは東方の大国だ。レイディモンと同じレベルの超大国だよ」
みんなそんな大国ばっかりなんだろうな・・聞けば聞くほど俺の国って何なんだろう・・・ちょっとブルーになるよな。
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