第4話 赤い戦女

窓から光が差し込み、朝の目覚めを誘発する。俺は少しずつ意識がはっきりしてくる。すると俺が寝ているベッドに何か違和感を感じた。

「え・・何だこれ?」

寝ボケる俺は何かを持ち上げた。それは人の腕のようであった。

「え! 何で、誰、誰・・・!」

「おはようございます。エイメル様」


そこにいたのは裸のモーリーであった。

「え・・と。君はモーリーだっけ・・どうしてここにいるの?」

「はい。エイメル様にご奉仕しようと思ったのですが、お疲れでお休みでしたので添い寝させていただいておりました」


「そうなんだ・・え・・と。でも、もう、こういうのはもういいからね」

「そうなのですか? 男性はお好きと聞いておりますが・・」

「俺は大丈夫だから」

「はい。かしこまりました」


モーリーは残念な表情を見せながら、服を着始める。


その後、朝食の用意ができたと、別のメイドが呼びに来たので、顔を洗うと、食堂の方へ移動した。


食堂にはゼダーダンと、アズキ、ラスキーが席についていた。

「おはようございます。エイメル様」

「おはよう。ゼダーダン。アズキとラスキーもおはよう」

「おはようございます。エイメル様」

「おはよーエイメル!」


俺に対して、あまりにもフレンドリーなアズキの挨拶に、ゼダーダンが咳き込んで注意する。しかし、鈍いのか気にしないのか、アズキはゼダーダンの健康を気にする。

「なんだゼダーダン風邪か?」


ゼダーダンはアズキを注意するのを諦めて、食事前のお祈りを始めた。


朝食は、豪華でも質素でもなく。飛田裕太から見ても普通の朝食であった。籠に盛られた数種類のパン、卵と干し肉のソテー、カップで出された芋のスープ。どれもすごく美味しいのだけど、王様の朝食にしては物足りないような気がする。


「ゼダーダン。ちょっと聞きたいんだけど」

食事をしながら俺は話を切り出した。

「なんでございましょう。エイメル様」

「え・・と。王様になる正式な手続きとか儀式ってあるんかな?」

「いえ。そのような仕来りや儀式などはありません。もうあなたはこの国の王です」

「そうなんだ・・なんか実感がないよね。家臣とかに挨拶とかいいのかな?」

「それでは、朝食後に皆をここに集めますのでご挨拶お願いします」


「あ・・わかった」

ここに全員集められる人数しか家臣がいないってことだよな・・50人も入ればいっぱいになりそうな部屋を見渡してそう考えてしまう。


食後、話の通り、食堂に家臣一同が集められた。人数は40人ほど・・兵士風の格好の者が30人くらい。あとは庭師ぽいおじさんと、メイドが3人。少し豪華な防具を身にまとった人が一人。それとゼダーダンと事務をやりそうなスーツぽい服装の人が二人である。


「アースレイン王国の新国王になった、エイメル・アースレインです。この国を大きく発展させる為に頑張るので、力を貸して欲しいと思ってます」


少しの沈黙の後、パチパチと小さな拍手が起こり、エイメル王万歳と、どこか棒読みの賛辞が送られた。これはどうも人望もないぞ・・・


周りの兵士より、少しだけ豪華な防具を装備した男が近づいてきて、頭を下げる。

「エイメル様、兵士隊長のグローサーです。この度は国王就任おめでとうございます。つきましては以前からお父上とお話があったことなのですが、私を将軍職に取り立ててくれるとのお約束がありまして・・・」

「そうなの?」

俺がゼダーダンにそう聞くと、彼は首をかしげてこう答えた。

「私は存じ上げませんが・・」

「じゃあ、現状維持で」


俺がグローサーにそう言うと、彼は苦い顔をする。そして絞り出すようにこう話してくる。

「それでは困ります・・将軍になって給金が上がることを計算に入れて、家を分割で買ってしまったのです」

「いや・・そんなこと言われても・・この小さな国に将軍二人は多いから」

「二人ですと?」


「そうだよ。そこにいるアズキが、この国の将軍だから」

その発言にはグローサー、ゼダーダンだけではなく、アズキやラスキーも驚きの表情をする。


「なっ・・エイメル。私は将軍なのか?」

「エイメル様。正式な人事でございますか?」

「何ですと! どこの馬の骨かもわからぬ者に、この国の将軍を任せるのですか?」

「馬の骨じゃないよ。彼女はすごく強いからね。前にいた国でも将軍をしていたから問題ないと思うよ」


「将軍・・アズキ・・アズキ・・もしかしてロギマス王国の将軍、アズキ・ルィボスか! まさか『ロギマスの赤い戦女』がこんなところに・・」

グローサーが何かを思い出したようで興奮してそう話す。ゼダーダンも何かを思い出したようだ。

「どこかで聞いた名だと思ったのですが、ロギマスのアズキ将軍ですか・・それは我が国には過ぎたる人材ですな・・」


「ここで宣言するけど。俺はこの国を大国に育て上げるつもりだ。その為にはみんなの協力が不可欠だと思っている。国が大きくなれば、みんなに報いることができると思うので頑張って欲しい」


こればっかりはグローサーも納得するしかないと思ったのか、家のローンとアズキの名声に挟まれて、すごい表情で俺に返事する。

「くっ・・相手がアズキ将軍では納得するしかありませんな・・・それでは・・国を大きくして、次の将軍を任命できるように、尽力いたします」


「納得してくれて助かるよ」


家臣のみんなに顔見せも終わり、いよいよ本格的に国の発展を考えて動き出すことを俺は考えていた。これは苦労するぞと思うと、他のクラスメイトはどうしてるのか気になり始めた。



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