第9話

川岸に沿う道を歩いていると、何やら騒いでいる輩がいた。




女子高生が数人、一人の女子高生と複数の男子高校生に囲まれている。



どちらも、逢海あみと同じ高校の制服だ。















「あんた、今度の団体戦に出るんだってね。」



「はい。それが何か?」



「あんた2年なんだしさ、先輩に譲ろうって気はないの?」





おおかた、部活の大会で後輩に出場機会を奪われたのだろう。










「部長にすら、そんなことは言われていません。」




「先輩にとって最後の大会とはいえ、代表に選んでいただいたのは私なので。」



「今更辞退を申し入れることはできません。」






囲まれている女子高生は毅然とした態度で断る。






「そうかい。だったら、怪我して辞退するしかないよねぇ。」




彼氏だろうか?

男子高校生が女子高生に掴みかかった瞬間






パシャ!







「誰!?」









逢海あみはとっさにカメラを構え、一部始終を収めてしまった。






おかげで、こちらにも気づかれてしまう。




すぐに逃げ出そうとしたが、足がすくんで動けなかった。




何とかして助ける方法を考えた結果、証拠を残せばいいと思った。




が、ここから逃げ切らなければそれも不可能だ。


















「おい!何撮ってんだテメェ!」




「テメェも病院に行きてぇのか!?」





集団ですごむ男達。




「やめて。彼女は関係ない。」



囲まれていた女子高生がかばう形で止める。






「あぁ?おめぇ、今の立場わかってんのか?」



「そんなにやられてぇなら、お前の腕から壊してやんよ!」



男の一人が女子高生に殴りかかった瞬間













男はきれいに空中を泳ぎ、そのまま川へ飛び込んでいた。







「・・・え?」






「か弱い女子高生を集団で囲んで、恥ずかしくないの?」









囲まれていた女子高生は、いつの間にか4~5人いた男子高校生を




一人残らず川へ放り投げていた。






「あんた、やるじゃない。でも、これで退部確定ね。」




「退部?」




「そうよ。これは立派な暴力事件じゃない?証拠だってあるわ。」


「あんたが男どもを投げ飛ばしている写真がね」





いつの間に写真など撮ったのだろう。




彼氏?が投げ飛ばされている間にカメラを起動して写真を撮るなど


薄情な女だな、と千桜ちはるは思った。








「こ、こちらにも証拠はあります!」




逢海あみは恐怖に震えながらも声を張り上げる。




「あんたのは静止画だし、投げ飛ばす前よ。こっちだって手を出してないわ。」




主犯格の女子高生はハッタリをかまされていると思っているのだろう。





逢海あみはきっぱりと言う。


「いえ、動画です。このカメラとは別に、ケータイで録画しています。」


「このまま写真を削除して頂ければ、こちらも動画を削除すると約束します。」






「・・・・わかったわ。元はと言えば私の実力不足が原因だものね。」










女子高生が写真を削除したのを確認し、逢海あみも動画を破棄する。



動画を破棄したことを確認した女子高生はそのまま立ち去って行った。




囲んでいた男たちも、いつの間にかいなくなっていた。

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