第5話

何が起きたかもわからず、空中を見上げている。




不思議と体は痛くない。





カップルの女の方は、完全にあっけにとられている。




自分とそう変わらないであろう、細身の女子高生が



軽々と男子高校生二人を投げ飛ばしたのである。





「あの子、すげぇ・・・」



彼女を守ろうとしたはずの男も宙を舞い



彼だけは何が起きたか、認識できていた。















「やっちゃった・・・・」


なぜカップルの男だけでなく、自分のために怒ってくれた人まで・・・



申し訳ない気持ちになりながら、家路へ着く。



「ただいま~」





「ナァ~ン」


「ただいま、プッチ」


寄り添ってくるペットを撫でる。






「あら、千桜ちはる。おかえり。」



「ただいま~」



「部活はお休み?」



「そうだよ~」



「じゃあ、お父さんに・・・」



「ごめん。テスト前だから勉強しないと。」



「少しでいいのよ?だから・・・・」



「ごめん。今回は上を目指したいの。」



「・・・そう。わかったわ。」










千桜ちはるの家は、少し複雑であった。



妹とは父親が違う。



二人目の父親は借金を残して若い女性と消えたらしい。




そして今は・・・・





三人目の父親になるであろう人物との対面をかたくなに拒んでいた。















「大丈夫だよ」


「お父さんは千桜ちはるを愛しているからね。」





「パパは、ママも千桜ちはるも愛しているよ。」


「だから、こっちにおいで。」












忌まわしい記憶がよみがえる。





「男なんて・・・・・みんな一緒よ。」

















「おねーちゃん。おべんきょう?」



妹の珂奈かなだ。




千桜ちはるとは10個ほど年が離れている。







珂奈かな、どうしたの?」



「あのね、いっしょにおべんきょうしてもいい?」



「うふふ、いいよ。一緒にお勉強しようね。」



妹は千桜ちはるにとっての癒しだった。


妹を護れるなら、どんなことだってする。


そう決意していた。













「ねえ、おねーちゃん」


「なあに?」



「おねーちゃんは、ぱぱのこときらい?」




「えっ?」



妹の純粋な瞳が、千桜ちはるの動揺を誘う。



珂奈かなはどうしてそう思うの?」



「ぱぱのはなしになると、おかおがこわくなるもん・・・・」




珂奈かなに見られていたとは・・・・



「うう・・・・そっか・・・ごめんね。」



妹の頭をなでてあげると、妹は気持ちよさそうに目を細める。



猫のように無邪気で、純粋な妹。



「おねーちゃん、だーいすき!」



「私も珂奈かなのこと、だーいすきだよ。」







絶対に、守る。

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