第11話動き出す者達
昨日のあいつは何者だったのだろう。
今思えば剣筋も動きの癖も雀蜂流に酷似……いや、酷似なんてもんじゃないそのものだった。
雀蜂流は一子相伝と伝えられてきてるが、昔聞いた事がある。
雀蜂流は2つに分かれた流派なのだと…。
本来は、えーとなんて言ったっけ…。
なんか凄い暗殺剣の流派で、それに異を唱えたひい爺ちゃん?とかその辺が離反し雀蜂流が出来たとかなんとかって聞いた事がある。
そしてその流派は今もなお身を潜めてるって聞いてる。
つまりあのフードの男の正体は………
――なんてね。
そんな現実逃避僕らしくない。
結論は出ているじゃないか。
あの動きは雀蜂流そのものだって。
でも僕はその可能性を…アイツの可能性を否定する。
だからこそ次に会った時は顔を見るんだ!
よし、今日は学校も休みだ。
街中には影人が現れる可能性もある。
つまりパトロールがてら出陣だ。
こうして僕は家を飛び出すのだった。
※
その頃、とある山の深い場所で奇妙な事件が起きていた。
山登りに来たのか赤色のレインウェアが目立つパンパンのリュックを背負った男の人が目の前の警官に話をしていた。
「ほ、ほんとにこの辺で見たんです!私のパートナーが溶けたんです。あ、あれは人間じゃない…怪物だぁ!」
「お、落ち着いてください。そう言われても証拠がないとなんとも…」
「そ、そんなぁ!」
そんな会話が響く山の中、その3人を見る金色の目があった。
「人間は馬鹿だな…わざわざ戻ってくるなんて」
金色の目の持ち主はそう呟く。
そして3人の人間にゆっくり近付くのだ。
「あ!あぁ…」
赤色のレインウェアを着た男がある一点を指差し唖然する。
「どうしました?」
二人の警官は男の様子が変わった事に気付き指を差す方を見る。
その瞬間
ジュワァァ
警官二人の服が燃え出す。
「なっ!?熱い!熱い熱い熱い!」
そして二人は、まるでマグマにも触れたかのように綺麗に溶けるのだった。
「で、出た!怪物だ!怪物だあああああ」
赤色のレインウェアの男はそう叫ぶも腰が抜けて地面に吸い付いていて動けなかった。
「怪物?失礼だなぁ。俺も人間だぞ?」
そう言いながら金色の目の持ち主は赤色のレインウェアの男にゆっくり近付く。
「に、にに、人間?!髪が赤くて目が金色の人間が居るわけがない!」
「あっ、そう…別にいいよそんな
そして赤い髪の男は赤色のレインウェアの男に触れる。
その触れた部分が燃え上がる。
「ぎゃあああああ!!!熱い!熱い熱い…うわああああああああああ」
そして赤色のレインウェアの男は跡形もなく溶けたのだった。
「だって僕は人間じゃないんだもん。人間だけど人間じゃない、人間を超えた存在さ。ま、もう聞いてないだろうけどね」
ここにはもう、赤い髪で金色の瞳で赤みの混じった肌色をした男しか居ない。
赤い髪の男は手を広げたり、その場で跳んでみたり、腕を振り回したりしていた。
「うん。目覚めたばかりだけど良い運動になったみたいだ。さて、そろそろミリアも目が覚めた頃だろう」
そう、独り言を言って赤い髪の男はその場から動く。
男が向かった先は、更に山の深い場所にある洞窟だ。
洞窟の中は薄暗いのだが、男の赤い髪が蛍光灯のように仄かに輝く。
そして洞窟の先も赤い光が輝いていた。
赤い髪の男はそこに向かう。
「おはようミリア」
そこには綺麗に赤く輝く髪の女がいた。
勿論この女も瞳は金色で、肌は赤みかかった肌色をしている。
「グレン…私達が目覚めたって事は…」
「うん、その様だね。人間がウェポンギアを使ったみたいだ」
「それだけじゃないわ。」
「そうだねぇ…あいつ等も間違いなく目覚めるだろうね。いや、もう目覚めてるかも」
「また戦争が始まるのね」
「前回は人間にしてやられたが、今度は僕等が勝つよ。絶対に」
「……そうね」
「さて、それじゃこの時代のウェポンギア保有者に挨拶に行こうか」
こうして二人は洞窟を出たのだった。
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