第36話 流儀


相沢 誠は流儀を重んじる男だ。

いつまでもうじうじ、こそこそせずに

和葉に真正面から向き合うことを決める。

が…最近和葉と都合が合わない。


ならば仕方ない。

祖父からの教え

『 いつまでもあると思うな金と人脈 』

相沢の元に舞い込むパーティーの誘いに

一つ付き合うとしよう。


三次会のカラオケの席で、

ハッ!とする女性に出会う。女性陣が守りに

入り空気読みながら、カラオケするのを

「 実に退屈だ 」とバーボン片手に偏屈

モードに入っていた。


そこへ突如、彗星の如く歌う女性現る。

「I‘ m proud 」を熱唱する彼女に射抜かれた。

往年の華原朋美をを彷彿させる歌唱力に

あどけなさと初々しい感じがたまらない。

相沢は聴き入りながら、小室哲哉のように

ピアノ弾いてやりたい衝動に駆られる。


歌い終わった彼女にサッとカクテルを

差し出す。ジェームスボンド顔負けに…

「 どうもありがとう」ジンフィズを飲み干す。

「 歌、上手いんですね、聞き惚れたよ」

「 音大志望だったので… 本気で歌ったら

あんなものではないです 」

「 なにぃ?」相沢の大好物、芯が強くて

勝気で生意気な実力ある 女。


周りの女性が歯ぎしりする中

「キミノ名は?」

「 桜島 麗華です」連絡先と次回のカラオケ

約束してルンルンして帰る。


アレ?気がつくと花園サクラが吹っ飛んでいる。

なにをしてても真っ先に思い描くのは

桜島麗華になった。


和葉とシリウスのラウンジで向き合う。

「なんだよ、話って」和葉の挑む顔。

「和葉、お前に報告したい大事な話がある」

「分かってるよ、だから来たんだろ…

前置きはいい、早く話せ」

ピリピリしてお前、更年期か?と言いそう

だがハッピーモード全開の相沢には

些細なことだ。


「まぁいい、麗華ちゃんこっちこっち」

「どうも、桜島麗華です」

「 僕の新しい彼女だ 」彼女歴まだほんの数日

だけど…


三人で話した後、僕は和葉に呼び止められる。

「 誠… 」

「なんだ?」

「あの人は、彼女はやめておけ」

「なっ、なんでだ」

「 ただの直感だ 」

和葉は妬みや嫉みでこんなこと言う男

じゃない。だがここは譲れない。

「 人の恋路を邪魔する奴は…」憤怒。

気がつくと麗華が聞いている。

「 行こう、不愉快な思いさせて悪かった」

相沢は麗華の手を取り和葉の元を去った。

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