第7話誤解 そして 結末


相沢とサクラの行方を桜木町の方から来た

和葉は偶然目にする。


それより気になったのは、クイーンズの方から歩いてくる亜李酥の存在だった。


彼女の視界に入らないようにわざわざ手を

挙げて声を掛けた。

「和葉さん、こんばんは」上目遣いの甘い声。

女性を売り物にしてるような亜李酥はどうも

苦手だ。立ち話しながら2人の方向に視線が向かないよう遮る。

だが優しく甘い顔から一瞬表情が消え

険しくなる。2人が目に入ったか…

不意に「和葉さん、お茶しませんか?」

普段なら断るのだがこの場面は例外的に彼女に付き合うことにする。

「少しなら」

スタバとかでよかったが、彼女は女性らしい

ティールームに入る。他愛もない話しが尽きると

「私って…魅力ないですか?」真顔で問う。

「どうしたの、藪から棒に」

「相沢さんに言われたんです。彼、私以外に気になる女性がいるって…」顎を引いて僕に顔を寄せる。セミロングの髪が少し前に揺れて潤んだ

瞳が間近に迫る。

普通ならロックオンされる場面…和葉はこの手の

女性の免疫力が高い。

「あいつ、真面目で融通効かないから…

魅力的と好きを混同してるのかもな…」


僕をジーっと見ていた亜李酥は睫毛にハンカチ を当て「私どうしたらいいのか分からなくて…」

ホロホロ泣き出した。

『女優かよ』とツッコミたくなる和葉。

「あまり気にしなくていいんじゃないかなぁ」

「相手がサクラさんでも?」少し挑戦的に言う。

「えっ?」驚く僕。

「それはないと思うよ。」

「私には分かるんです。もしそうだったら

和葉さん私の力になってくれますか?」

「そんなことなくても必要な時は力になるよ。」

会話を打ち切る。

「僕はこの辺で」

「和葉さんは本当にクールな人。」

萎れた様子で言う。

もし僕に免疫力がなかったら

彼女の魅力に引き込まれペースを乱して抱きしめたりなんらかの過ちを犯したかもしれない。

だが、亜李酥のような女性との面倒はご免だ。

「フキタさんは魅力的だ。あまり男性を勘違いさせない方がいいよ。」敢えて釘を刺す。


やましいことは何一つないこの場面を

この前の合コン女性陣に終始目撃されていた。


翌日、サクラの会社の給湯室では和葉と亜李酥

が付き合っている話題で持ちきりだった。


複雑な心境のサクラは、給湯室を飛び出す。

高層のエレベーターの前で和葉に出くわす。

「サクラさん、こんな時間にどうしたの?」

サクラは困惑してその場を立ち去ろうとする。


和葉はおよその検討がつく。

「サクラさん、真実を知るまで逃げないで。」

サクラは一瞬立ち止まるが目を背けて去ろうと

する。

和葉に 不意に腕を掴まれる。ドンッて壁に手を 置かれ逃げ場を失う。

「何を聞いたか知らない。でも僕を信じてくれるよね?」

「なんで、2人では会わないって言ってたのに…

どうして相手が亜李酥さんなの?」

悲痛そうに彼女は俯く。

僕はもう一度力強く壁にドンって手を置く。

「相沢と2人でラウンジ入るの見てたよ。」

今度はサクラが余裕を失くす。

「あれは…あれは違うんです。」空気を失くした魚のように口をパクパクさせる。

「サクラさん僕は2人とも信じてる。あの場面

に亜李酥さんはど映ったか分からないけどね。」

サクラはハッとして状況を呑み込んだ。

「もしかして和葉さん、カモフラージュ?」

「そうゆうこと」

「疑ってごめんなさい。」

「いいからもう顔上げて」

彼の顔が近ずいて、サクラの頬に優しく和葉の

唇が触れる。甘い香水の香りが鼻孔をくすぐり

和葉の体がサクラを包み込む。

ドクン。

『もう二度とへんな誤解しないでくれよ。」

屈みこんでサクラの顔を覗き込み微笑む和葉。

「うん。」サクラは愛しい和葉の胸に顔を

埋めた。


給湯室から追って来たフキタ亜李酥は

『フンっ 面白くない』と鼻を鳴らして

床を蹴る。


まずはハッピーエンド💓

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