カクヨム二周年おめふも

うみ

二周年おめふも

――干支だったのだ。

 初めは憎んでいた。何故、鳥なのかと。

 だが奴はフクロウとも呼ばれることも、名前が付くこともなかった。

 それ故、うしは逆に奴を哀れに思ったものだ。来年になれば犬に差し替られる……所詮使い捨てだとな。

 

 犬は現れなかった――

 

 それどころか……

 

――鳥は残ります。


 もう一度言おう『鳥は残ります』などとのたまっていたのだ!

 まさか、まさか名前の無い奴が残るなんて思ってもみなかった。

 その時の犬の荒れようといったら……正直ざまあみろと思ってしまったが、うしは心の内を隠し……

 

「ふんもお」


 とだけ犬に返しておくに留める。

 

 転機がすぐに訪れた。それも最悪の……。

 新キャラクターの発表――

 これがうしに与えた衝撃のほどを分かってもらえるだろうか?

 

 動物ならまだよかった。しかし、人だったのだ。よりによって人なのである。

 これにはさすがのうしも憤った。尻尾をぶんぶん振り回すほどに。

 知っているだろうか? 犬はパタパタと尻尾を振るしか能がないが、うしは違う。うしの尻尾はハエを叩き潰すためにある。

 そのような凶暴かつ凶器でもある尻尾をうしが振り回した気持ちが理解できるだろうか? それほどの怒りだったのだよ。

 

 子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・『酉』・戌・亥……今年は犬(戌)年だ。

 まだ雌伏の時だと信じることにしよう。


 牛乳も出せない奴に天下を取らせるわけにはいかない。

 きっと時が来ると信じて、今日もうしは擬態する。

 

「ふんもお」


 と鳴いて。

 ひそかな野望を胸に秘め。

 

 うしの時代は後三年。時が満ちるその時まで勢力を拡大していこうではないか。

 ひょっとすると、あの人間はうしに変化できるのかもしれない。

 しかし、それは邪道。

 鳥よ、今この時を謳歌しているがいい。

 

――ふんもお。カクヨム二周年おめふも。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カクヨム二周年おめふも うみ @Umi12345

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ