祝!15000PV突破! 第41話 テーマパーク創造 後編

 ーーー数週間後ーーー


「だいたいサマになってきたな」


 響はコースターの試運転を見て言葉にする。


 ここまで来るのにどれだけ心身を摩耗したことか。


 初めての試運転でいきなり俺を乗せようとしたり(そのコースターは見事に脱線した)、代わりの土袋の人形を作らされたり、事あるごとに土人形が破壊され、何度も作り直されたりと。


 なんでデータを収集したのにここまで手間取ったのかというと、


 電脳世界で採れた、現実世界にない鉱石などを使用したからだ。


 結果、事前に用意したデータと大幅に変更することを余儀なくされた。


 土人形を直すたびに俺は、


「普通の鉄鉱石使えば早いんじゃね?」


 と言うのだが、


「私の匠としてのプライドが許さないのよ」


 ・・・いつからお前は匠になったんだ。


 呻く。


 あと魔法の使用も状況を混沌化させた。


 はっきり言って、事前に用意したデータはかなり大雑把な見本程度にまで堕ちた。


 それでも何とかここまでこぎ着けたのはルナの執念だった。


「あとは本番で上手くやれるかだな」


「出来なきゃ困るの。メンテナンス以外はずっと稼働させる予定だから」


 俺は正直不安だ。失敗したらいきなり来客が無くなる。初めての世界創造でそうなるのは嫌だった。


 ルナにはその思いが通じたのか、


「大丈夫よ響。『私の計算に狂いはない』よ」


 何度も破壊された土人形は計算の狂いが生んだ産物ではないのか。


「さて、ここはこれで仕上がりっと」


 ルナは腰を上げる。

 響はテーマパークを見回し、


「木材や鋼材は鉱山でたんと採れるとして、問題は人材だな。整備員と警備員の数が不足している」


 ルナは顎に指をやり、


「しばらく森に行ってないから分からないけど、たぶん次は猪と熊が出てくるんじゃないかしら」


「片方、凶悪な動物が混ざってるぞ」


「ちょっと!猪を侮らないで!背後からタックルされたら鎧の上からでも痛いわよ!」


 どっちみち俺の身に危険が迫ってるのは変わらない。

 

「マーとハンに新しい防具作ってもらうか・・・・」


 俺はユミのいる場所に足を向ける。


 ユミは大工たちの手伝いをしていた。


 相変わらず緑色の肩出しルックに緑色の羽付き帽子。


「ユミ、ちょっといいか」


 しかしユミは反応しない。響は近づく。


「周りが騒がしくても、ここまで近づけば聞こえるかな?おい、ユミ」


「何でしょうか」


 ユミの態度は冷ややかだ。


「どうしたんだユミ?具合でも悪いのか?」


「当ててください」


「・・・最近ずっと狩りに行かなくて怒ってるのか?」


「・・・当たりです」


 ユミは弓矢を引っ張り出す。


「私の本業は狩りです。狩りをするために存在するのです」


「悪い。そういえばマーが飛び犬に襲われた時のままの指示だったな」


 響はぽん、と手を叩き、


「じゃあ森の外周部でのみ狩猟を解禁するよ。ゲス徒の件もあるから深入りはさせないけどね」


 あと、と追加し、


「俺と行くときは深部まで行こう。魔法の実践も必要だし」

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