祝!9200PV突破! 第32話 魔法

 俺はイメージの練習を始める。


 掌の少し先に紋章をイメージする。


 紋章が浮かび上がる。


「さすが創世開発機構に見込まれるだけあってイメージは完璧だね」


 マナはぱんぱんぱん、と手を叩く。


「じゃあ次行ってみようか。血液の流れを意識するんだ。頭から右手、右手から右足、右足から左足、左足から左手、左手からまた頭へ循環させるように」


 マナは指を立てて、


「これの結果次第で火力が決まるんだよ」


 俺は言われたとおりにやってみる。


 頭の頂点から手、足、手、また頭へ。


「そして意識を少しずつ加速させるんだ」  

 言われたとおりに加速させる。

 なんだか力が湧いてくる。


「そして一気に手のひらから放て!」


 紋章に力が注がれ、暴風が手から放たれる!


「おお!」

 

 俺は感嘆の声を上げる。しかし、


「あんまり距離出ないっスね」


 マナは得意げに、

 

「ここからが紋章魔法のツボさ。響、紋章をあの木まで引き延ばしてイメージしてごらん」


 響はイメージする。木に紋章が浮かび上がる。


「あとは循環を意識して・・・放て!」


 ゴウッ!


 突風が10メートル先の木を揺さぶる。


「すげぇっ!」


 マナはにこにこと、


「次はかまいたちだね。引き延ばした紋章を線に変えて放つんだ」


 響は言われたとおりにイメージし、意識し、放つ!


 ザシュッ!


 木が横なぎに切り払われる。

 ずずん、という音とともに倒れる。


「一回で成功なんてやるじゃないか」


「いやぁそれほどでも」

 

「はい、褒美」


 マナは響の頭を胸の谷間に埋める。


(ああ、生まれてきてよかった!)


 その時、空から一筋の光が降り注ぐ。


 光の中から現れたのは


 ーーールナだった。


 ルナはその場に倒れこむ。


「ルナ!」


 響は駆け寄り、ルナを抱き起す。


「大丈夫か!ルナ!しっかりしろ!」


 ルナは血まみれだった。


「師匠!回復魔法を!」


 マナは駆け寄り、ルナの容態を見る。


 そして首を振る。


「そんな!」


「響・・・」


 ルナは弱々しい声で、


「何だ!?」


「この袋の中のものを、海に放って・・・」


 俺は袋の中のものを見る。


 袋の中のものは、


 ーーー鰹(かつお)だった。


「名前は『タタキ』・・・私だと思って大事にして」


 響はポカリ、とルナの頭を叩く。


「痛っ」


 ルナは抗議する。


「ケガ人に何するのよ!」


 俺は半眼で、


「これ、全部血のりじゃねーか。お前こそ何してんだよ」


「う」


 ルナは呻き、


「冗談よ冗談。ちょっとしたサプライズ」


 響は師匠に向き、


「師匠も紛らわしいですよ!」


 マナは頭に手をやって、


「いやーここは流れに乗ってやらないと、と思ってね」


 ここの部分は間違いなく師弟関係だと思う。


「で、ゲス徒の件はどうなったんだ?」


 響は問う。


「現場に踏み込んだ時には、もう半数以上が逃げていたわ。ホント逃げ足だけは早いんだから」


 俺は肩をすくめ、


「なんだ。たいしたことない連中だな」


「負傷者はそこそこ出たけれどね」


 響はため息をつき、


「まあルナが怪我してないならまあいいよ」


 そこでルナはにこりと笑い、


「ところで響、さっき何してたの?」


「さっきって?」


「師匠の胸に顔うずめてたのは何か、って聞いてるのよ」


 どうやら見られてたようだ。マナはすかさず、


「響の欲求を刺激すると凄い力を発揮するってルナが言ってたじゃないか。だからそうしたんだよ。小テストも満点だったしね」


 ルナはへぇ、と、


「こっちが危険をおかしてた時にそっちはエロイベントですか」


「ち、違うんだルナ。これはーーー」


 ルナはゴッチ式パイルドライバー(プロレス技)を極める。

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