祝!5400PV突破! 第23話 海、それは情熱

「冷たーい!」


「ちょっと!響、海水の温度もう少し上げなさいな」


「え、そんなことも出来るの?」


 ルナは両手を腰に当て、


「あなたマテリアル関連以外なら大抵のことは出来るのよ」


「わかった」


「暖かすぎても冷たすぎても駄目よ」


 わがままな。


 俺は海水に浸かる。

 コンソール『海水温度』の項目を開き、海水の温度を体感で調節する。


「あっ、今いい感じ。そこで止めて」


 俺は項目を決定する。


 辺りを見回すとラーナやララナ、ユミ、マーやハン達が海へ突撃していく。


「溺れないように遠浅の海にしてるけど気をつけろよ」


 なぜこんな状況になってるかというと、


 ーーー3時間前ーーー


「水着を買いに行くわよ」


 唐突だった、ルナの行動はいつも唐突だ。他のメンバーに言わせると、響も同じくらい唐突な感じらしいが。


「は?」


「だ・か・ら水着を買いに行くの」


 俺は首をかしげ、


「服ならプロセシング・マテリアルで作ればいいじゃないか」


「服の材料は手に入るわね。で、だれがそれを裁縫するの?」


「そういや服屋を作ってないな。作るか」


 ルナは俯き、


「それじゃダメなの」


「何で?」


「品ぞろえはどんなに良くても現実世界の大型複合商業施設には敵わないもの」


 なるほど。言いたいことは分かった。


「じゃあ大型複合商業施設にでも行くか」


 ルナの顔がぱあっ、と輝いた。


「うん・じゃあ皆を呼んでくるね」


 いつもこんな調子なら嬉しいのだが。


 ・・・ん? みんな?


 しばらくして、


「さあ、いくわよ響」


「ちょっと待て」


 俺は制止する。


 ルナの背後には向こうの世界から来た全員の面々がいる。


「何?」


「何?じゃねーだろ。なんで皆こっちに出てこれるんだ?」


「ご飯だって出してるじゃない当然キャラクターも出せるわよ」


 相変わらずよくわからない仕組みだ。


「せっかく女の子が買い物に行くんだから大勢で行ったほうが楽しいじゃない」


 嫌な予感がする。


「こんな大勢連れてきてお前、お金は足りるのか?」


 ルナはふふん、と胸を張って、


「創世開発機構のナビゲーターと交渉して衣類、アクセサリーその他諸々限度ギリギリまでお金を引き出せるように譲歩させたの」


 ルナがナビゲーターに食い下がる姿が容易に想像できる。いっそネゴシエーターにでも転職したらどうか。


「というわけで行くわよ」


 ーーー大型複合商業施設ーーー


「広っろーい」

「お店いっぱい」

「人もたくさんいるね」

「ここが響の世界の商業施設ね」

「文明進んでるねー」


 最後のセリフに、ルナはグサリ、ときたようだ。


「大丈夫よ。響もそのうち作れるようになるわ」


 まるで自分に言い聞かせるように言ってるようだ。


 そういや女の大半は見栄で出来てるとかなんかの本に書いてあったな。


 とりあえず俺は、


「日本の文明が進んだのはここ150年くらい、それでも列強諸国に並ぶのにそれくらいかかったんだ」


「じゃああっちの世界もそれくらいかかるの?」


 ハンが聞いてくる。


「大量にマテリアルを稼ぐ方法があればいけると思うが、その辺はあとでルナに聞いてみればいい」


「はーい」


 と、その時ルナが、


「あったわよ。水着コーナー」


 そこには大量の水着が展示してあった。

 様々な色、露出度が高いもの、多様なデザインなど。大抵はここに置いてそうだ。


「じゃ、さっそく試着してみましょうか」


 ルナはこっちに振り向き、


「覗いたら〆るわよ」


 お、俺の信頼度はその程度なんですね。


「仕方ない、他の女の子のとこへ行くか」


 マーとハンの所に行くと二人は


「海でお披露目したいからあっち行って」


 だそうだ。


 とりあえず女の子達の気がすむまで待つことにした。ちなみに買い物の荷物持ちは俺だった。


 ーーーそして電脳空間ーーー


 俺が浜辺に座っていると女性陣がやってきた。なぜか全員白いマントを羽織っている。


「じゃーん!お披露目ターイム!」


 ルナが司会者のノリで言ってくる。


「さあ一番手はラーナ。強気のデザインできましたね。水着の色はオレンジです。では響さんコメントをどうぞ」


「いいね。スタイルがいいと大胆な水着を試せるね」


「はいありがとうございました。では次の方どうぞ」


 ララナが前に進み出てくる。


「おっとララナ、フリフリで来ましたね。露出も控え目です色は黄色」


「個性があっていいと思います。かなり可愛いです。有難うございました」


 次の出場者(?)のユミが前に出る。


「おっとユミ選手、水着もこれまた肩出しルックだ。もしかして私に対抗しているのか。へそも出ていて色は狩人らしく緑色です」


「いいですね、はい。こんな狩人になら射止められたいです」


「では次の選手どうぞ」


 マーとハンが前に出てマントを取る。


「おっと双子同時の出場だ。なんと二人ともスク水、スク水できました。これは強烈です」


「は、鼻血が、テ、ティシュ」


「審査員、まさかの流血。これは私の順も危ないです」


 と、こんな感じで水着披露は進んでいった。


「最後のトリを飾るのはもちろんこの私ルナ。響さんコメントどうぞ」


 ルナの水着は白を基調とした水着で左右に袈裟掛けされたへそ出しルックだ。内パイや横パイも見える。

 鼻血が出るのをなんとか抑える。


「おっと響さんまた流血ですか?優勝は私で決まり?さあ響さん結果発表をどうぞ!」


「みんな可愛く、美しいので、甲乙付け難く、全員優勝!以上!」


 響は羽を出してそこから全力で飛んで逃げ出した。


 しかし、程なくして響は捕らえられる。


「あんな結果発表、呑めるわけないでしょう?」

「お、俺には誰が一番なんて選べるわけないじゃないか」


「まあ、あんたにそんな甲斐性求めるほうが無理ってことかしらね」


 ルナはため息をついて、


「じゃあせっかく水着に着替えたんだし、海水浴でもしますか」


 ーーーそして現在ーーー


「まあ色々あったけど少し早めの夏休みとでも思えばいいか」


 俺はぼんやりと(しかし女の子の水着を食い入るような目で)見つつ、今年は例年よりいろんな体験が出来そうだ。


 と期待を膨らませるのであった

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