祝!700PV突破! 第6話 壊れゆく日常
「では手料理でも作りますか」
「え?今なんて言った?」
響は聞き返す。
「だから、夜食を作るって言ってんのよ」
「女の子の手料理・・・だと?」
響にとって生まれて初めての体験だ。
「もしかして思いきり酷い料理音痴で食ったら卒倒するようなものとか青色とか紫色とかありえない色をしててもぞもぞ動いてるとかそんなやつか!?」
バシッ!
「はたくわよ」
「すでにはたかれた後です」
ルナは両腕を腰に当て、
「いいから期待してて待ってなさい」
ダイニングに響を残し、ルナは響の部屋へ行く。
響の部屋からディスプレイを持ってきたルナは食卓に置く。
「おい」
「ディスプレイに無線LANとか付いてると便利ねー」
ルナは構わずコンセントに差し込み、画面に手を突っ込む。
そしてオムライスを取り出して、
「はい、召し上がれ」
「はい、召し上がれ、じゃねーだろうが!今どっから取り出した!?」
ルナはやれやれ、といった感じで、
「やーね、決まってるじゃない、ディスプレイからよ」
「食えるのか!?本当にそれは食い物なのか!?」
「百聞は一見にしかずよ。まあ食べてみなさいって」
「聞く、でも見る、でもないだろう」
響は突っ込みを入れる。
「まあまあ」
俺は仕方なく料理(?)を口に入れる。
「うっ」
美味い。ふわふわの卵にケチャップライスが絶妙にマッチして口の中に広がっていく。
「ね?美味しいでしょ?」
「だがこれはお前が作った『手』料理 ?と言えるのか?」
「世の中には知らないほうがいい事ってのもあるのよ」
おい。
「ちゃんと栄養になっているのかなぁ?」
「なってるなってる」
二人はひとしきり料理を食べて、食器を片付ける。
「じゃ、そろそろ寝ましょうか。明日学校でしょ?」
「そうか、そういやそんなのもあったな」
俺は不登校気味だがルナと隣歩きで噂されるのも悪くないと思った。
ルナはてくてく歩いて母親のドアを開ける。
「じゃあ私はあなたの母親の部屋を使わせてもらうわね」
「なんでお前が母ちゃんの部屋知ってんだよ」
「ターゲットの事前情報を集めるのは警察も犯罪者も探偵も同じよ。それだけ重要ってこと。『個人情報なんてなんの役に立つの』なんて言ってるのはアホの発言よ」
響は呻くように、
「わかった。わかったからもう寝てくれ。明日は早い」
「あっ、そうそう部屋に入ってきたら殺すわよ」
「・・・」
ーーー朝ーーー
響は制服に着替え、朝食(ルナがディスプレイから引き出したトーストとハムエッグとコーンポタージュ)を食べ終えると。玄関を開ける。
「行ってきます」
「行ってきまーす」
響は振り返り制止する。
「まて。なんでお前まで学校に行くんだ?」
「決まってるでしょう。授業を受けるためよ」
「なんでアドバイザーが授業を受けなきゃならないんだ」
ルナは首をかしげ、
「世界創造のためにはいろんな情報を集めてることが重要なのよ」
「まあ百歩譲ってそういう事だとして、お前、そのスタイルで中学二年生を騙るつもりか?」
ルナのスタイルはどう見ても高校生のそれだ。
「セクハラ発言はお仕置きーーー」
ルナのアナコンダバイス(プロレス技)が炸裂する。
「ギブ!ギブ!」
俺はこの時点でこれからの学校生活が、急に見通しの悪い方向に流されていく予感でいっぱいになっていた。
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