第63話皆で狩り
僕達4人が東の門に行くと、守衛さん達がざわめきます。
当然ですよね、この国の王女様と子爵令嬢が一緒なんですから。
ここでもフローゼ姫が取り成してくれて、思ったよりも早く外に出る事が出来ました。
目指すは、街の裏手にある森の中の湧き場です。
ここからは僕が先頭になり、次にミカちゃんとエリッサちゃん。最後尾にフローゼ姫が付いてきます。
フローゼ姫が先頭を歩きたがっていましたが、それは遠慮してもらいました。
僕達は決闘をしましたが、実際にフローゼ姫がどの位強いのか、分らないのですから当然ですね!
僕がご機嫌な様子で尻尾を立てて歩いていると、前の方に豚さんが3匹歩いて来ました。
「みゃぁ~!」
僕が皆に知らせてあげます。
ミカちゃんが、この先にオークが3匹歩いてきます。と皆に教えてあげています。
「では妾が1匹引き受けよう!」
「じゃエリッサちゃんはもう1匹にゃ。私も1匹倒すにゃ」
どうやら僕の出番は無さそうですが、フローゼ姫を守らないと行けないので、後を付いていく事にします。
エリッサちゃんとミカちゃんは、視認出来る場所までオークが来ると、魔法を発動する準備を始めています。
オークも僕達を見つけた様で、左右と中央に別れます。
「真ん中は妾が頂いた!」
「じゃ、私は左にゃ!」
「では私は右を狙いますわ!」
ミカちゃんの手の上には鉄の鏃、エリッサちゃんの手が光ると氷の鏃が現れ「えいっ」とエリッサちゃんの合図と共に飛んで行きます。
目で視認出来ない程の速度で飛んで行った鏃は、狙い違えずにオークの胸と頭に直撃して絶命させます。
中央のフローゼ姫は、剣を振りかざし袈裟懸けに振り下ろした所でした。剣先はオークの首から胸まで切り裂き、オークは倒れます。
フローゼ姫は切り裂いてから血沫が飛び散る刹那、オークの背後に移動して返り血を浴びない様にしています。
ミカちゃんとの決闘では、足元を凍らされて剣を振らせて貰えませんでしたが、近づかれたら危ないですね。
でもこの周辺に現れる魔物を倒すのには、十分通用しそうです。
「やりましたわ!」
「エリッサちゃん、初めてとは思えないにゃ!」
「ふふ、オークなら当然だな!」
エリッサちゃんが、初討伐の成功に浮かれはしゃいでいます。
それを隣でミカちゃんが褒め称え、フローゼ姫は少し物足りない面持ちながらも、得意げです。
さぁ! まだまだ行きますよ!
流石に、フローゼ姫の前で魔石を食べる訳には行かないので、倒す事に専念します。
半日森の中を駆けずり回り、オーク16匹、ゴブリン26匹、ナイトウルフを12匹倒した所で街に戻りました。
フローゼ姫はゴブリンの集団の中に突っ込んで行った為に、白銀の鎧が返り血で緑に染まっています。
ミカちゃんとエリッサちゃんは、距離を取って戦っていたので綺麗なままです。
「やはり剣だけでは、返り血を裂けるのは厳しいな……」
そうフローゼ姫が言葉を零しますが、流石に魔石の秘密を教える訳には行きませんよね?
「みゃぁ~」
「子猫ちゃんも接近戦をしたら返り血で汚れるにゃ、こればかりは仕方ないにゃ」
ミカちゃんがそうフォローすると、
「子猫ちゃんも返り血を浴びるのか……」
返り血を浴びないで倒す方法を考えていた様ですが、僕も返り血を避けられないと知ると、肩を下げて落ち込んでいました。
後で、綺麗に洗えば済む事ですからね。
ここは諦めてもらいましょう。
そして僕達はギルドで討伐報酬を受け取ります。
エリッサちゃんの分は魔石を売らないで、討伐報酬だけ受け取りました。
結果、オークが銀貨47枚と銅貨60枚。ゴブリンが銀貨24枚と銅貨30枚。ナイトウルフが銀貨23枚と銅貨20枚。合計で金貨9枚と銀貨5枚、銅貨10枚です。
エリッサちゃんが報酬を魔石を受け取るのを、怪訝な表情でフローゼ姫が見つめていましたが……。
記念に取っておくと伝えているので、気づかれないでしょう。
僕の分は要らないので、3人で分けて貰いました。
いつもならこの後、食堂で食事をするのですが、今は子爵城に滞在しているので、晩御飯もそちらで食べます。
子爵城に帰る道程で、フローゼ姫が――。
「それにしても、本当に冒険者とは稼げる職業なのだな」
そんな事を言ってきますが、それはどうなんでしょう?
「これだけ稼ぐのは、普通は無理らしいにゃ」
普通は、1つのパーティーでも銀貨で20枚も稼げればいい方らしいですからね。
それをミカちゃんが教えると、フローゼ姫は何故かご機嫌な口調で、
「そうなのか! 呆気なく50匹も倒せたんで実感が無かったが、これは異常だったか。あはは」
少なくとも、フローゼ姫だけで狩りをしてもこれだけの数は無理でしょう。
僕とミカちゃんの魔法のフォローがあったからですからね。
エリッサちゃんは今日獲得した魔石を、自分の部屋でこっそり食べるみたいです。どんな魔法を覚えるのか楽しみですね。
ミカちゃんと僕は、前に獲得した魔石がまだ残っています。
フローゼ姫にばれない様に、食べなくちゃです。
意気揚々と僕達は子爵城に戻ってきました。
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