第12話兵隊
僕はミカちゃんの言う通りに、腰を屈めた攻撃体勢のまま待ちます。
相手の男は、肩から噴出す血を布で押さえながら、話し出しました。
「俺達は、さっきも言ったがオードレイク伯爵に雇われただけだ。村を盗賊が襲い終わった後の処分の一切を任されただけだ」
処分とはなんなのでしょう?
「何でこの村を襲ったのですかにゃ?この村は平和ないい村だったのに」
「俺には分らないが……恐らく、ここの土地を誰かに高く売るつもりで、毎年たいした税も納めない、この村を処分したかったんじゃないか?」
「そ、そんにゃ事の為に?」
「世の中は貴族様が回してるんだよ。俺達弱者は貴族様の命令に逆らえない
様になっているんだ。もういいか?逃がしてくれるならあんた達の事は話さない。俺もこのまま伯爵領から逃げ出すからよ。この命令を失敗した以上は俺の身もあぶねぇからよ」
「部下の人達はどうするつもりなんですにゃ?」
「俺達は別に雇われただけで、仲間でもなんでも無い。その傷じゃ、どの道みんな助からねぇ。いっその事殺した方が楽になるだろうよ」
そう言って、リーダー格と思われた男は去っていった。
さて、この足を切断された人達……どうしよう?
ミカちゃんなら助けようとか言うのかな?
自分の命を奪おうとした相手なのに……。
僕がミカちゃんの言葉を待っていると、遠くに馬の鳴き声が聞こえた。
「子猫ちゃん、にげるにゃ!」
そう言って、ミカちゃんは僕の前を走り出しました。
あの馬が何だと言うのでしょうか?
丘の上まで一気に走り、ミカちゃんはゼイゼイ息を切らしています。
僕は子猫でも強い子猫なので平気です。
丘の上から下の村を見ていると、さっき聞こえた泣き声の馬と、
他にも20人程の人間が、馬に乗ってやってきました。
あの村にはさっき僕が、腕や足を切断した男達がまだ転がっている筈です。
でもやってきた人達は鉄の棒で生きていたさっきの人達の首を次々に刎ねていきました。
ミカちゃんは、その光景を見て震えています。
大丈夫ですよ!ミカちゃんは僕が守りますから!
ミカちゃんは、僕に話し出しました。
「子猫ちゃん、あれは多分ね伯爵様の兵隊なんだにゃ。あれに見つかったら殺されるにゃ」
そう言って両腕で二の腕を抱き締めています。
そんな悪い人達なら、僕が退治してくるのに……。
そう思っても、今はミカちゃんの元を離れる訳にはいきません。
僕はミカちゃんを守らないといけないのです!
しばらく、村で起きている事をジッと息を潜めて見ていました。
流石に、歩き通しで村へ帰ってもあの男達が居たり、兵から逃げたりで疲れたのでしょう。
ミカちゃんは両腕を抱き締めたまま眠ってしまいました。
僕はミカちゃんの腕の中で眠ってきたので平気です。
さっきの兵達は村の燃え残っていた場所に火を付けています。
これ以上燃やされたら、ミカちゃんの住む場所も帰る場所も無くなるのに。
僕はあの兵の事を忘れないようにずっと見つめていました。
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