第11話黒幕
ミカちゃんの腕に抱かれ熟睡してしまった僕が起きたのは、夜中の事です。
ミカちゃんはまだ僕を抱えたまま歩いていました。
僕は心配になってミカちゃんに声を掛けます。
「みゃぁ~みゃぁ~」
黙々と前を向いて歩いていたミカちゃんが、歩みを止めてくれました。
僕が心配そうにミカちゃんの顔を舐めると、くすぐったそうに瞳を細め、
「大丈夫にゃ!もうすぐ村に着く筈だから」
そう言います。
僕が眠っている間に、そんな所まで歩いてきた様です。
僕がもっと大きかったらミカちゃんを乗せて走れるのに……。
僕は地面に降ろしてもらい、ミカちゃんと一緒に歩きました。
しばらく歩くと、ミカちゃんの言った様に村の入り口が見えてきました。
でも僕がミカちゃんを追って行った時にはもう誰も居なかったのに……。
誰か居るのだろうか?
そう思っていると――。
村の中心で焚き火をしている人が居る事に気づきました。
あれ?誰か助かった人が居たのかな?
ミカちゃんも村の人に会いたかった様で、焚き火を見つけてから走り出しました。
僕も直ぐに後を追いかけます。
ミカちゃんが村の門を潜り、中へ入ると――。
「なんだ?まだ生き残りが居るじゃないか!」
知らない男達が、ミカちゃんへ向って歩いてきます。
僕は、ミカちゃんを庇うように前に出ると、
「なんだ?子猫じゃねぇーか!それに猫の獣人か?何しに来た?ここはオードレイク伯爵様の所有の村だぞ」
そんな事を言っています。
「ここの村で、村長をしている者の娘でミカと言います」
ミカちゃんが挨拶をすると、男達がにや付いた顔を向けながら、後ろの偉そうな男に声を掛けました。
「村長の娘だってよ?どうします?旦那」
「この村は廃村に決った。それを誤魔化す為に盗賊まで雇ったんだからな」
それを聞いたミカちゃんの表情が強張ります。
「なんで?どうして?村の皆を殺させたと言うんですか?」
「あぁ?そんな事は伯爵様に聞いてくれよ!俺らは依頼されただけなんだからよ!」
そう言い放ちながら、ミカちゃんに向けて鉄の棒を振り上げました。
僕はそれがミカちゃんに当る前に、爪を飛ばして男の両手を切断します。
「うがぁぁぁぁーいてぇーいてぇーよ」
何を今更。手が無くなったら痛いに決っています。
僕は、他の男達へも同様に爪を飛ばしました。ただし、狙いは足です。
10人は居た男達はあっという間に、地面へと転がりだしました。
ミカちゃんに手をあげる悪い人は僕が許しませんよ!
「みゃぁ!」
僕が威嚇しましたが、あんまり効果が無いようです。
何ででしょう?
残った男達は何が起きたのか分らないまま、ミカちゃん相手に鉄の棒を、
振り下ろそうとしてきます。
それもさっきと同じに腕に爪を飛ばし、無力化しました。
最終的に残っているのは、焚き火の前にいるさっきの男達の親分だけです。
「お前普通の猫じゃねぇーな!」
離れた所から見ていたこの男には、僕が放った爪が見えていた様です。
僕は普通の子猫ちゃんですよ!
普通じゃないとか間違っていますから!
僕が近づくと、男はすり足で後ろへ下がりながらも、鉄の棒を鞘から外し、
僕の方へ剣先を向けてきました。
男が剣を振り下ろす前に倒そうと、僕も後ろ足を縮め飛び掛る体勢を取ります。
男の剣先が地面すれすれを擦る様に襲い掛かってきました。
でも僕が小さい為に、僕の背の上を通り抜けました。
僕は、そのままジャンプして男の肩に爪を立て、肩を切り裂いてから後ろへ
ジャンプしました。
男の肩から夥しい赤い液体が噴出し、男が蹲ります。
僕が止めを刺そうと腰を低くした所で、ミカちゃんから声がかかりました。
「待って、子猫ちゃん。この男の人から話を聞かないと……」
僕はいい子の子猫ちゃんなので、ミカちゃんの言いつけを守りました。
ミカちゃんに危害を加えないように、僕がミカちゃんの前で威嚇します。
こんな男の話なんて聞いてミカちゃんはどうするんでしょう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます