第9話1人は寂しい

ミカちゃんは、子猫ちゃんはここで待っていて。


そう言い残して、村へ走って戻っていきました。


僕は良い子の子猫ちゃんなので、ミカちゃんの言いつけを守ります。


ここから村の様子を眺めていると――。


村へやってきた馬に乗った人達は、村に火を点けていました。


村長さんの家も燃えています。


ミカちゃんが村に辿り着くと、大勢の大人の人に囲まれていました。


村の人で男の人とお年寄り、おばさん方はどうした訳か、


倒れて動きません。


ミカちゃんと若い女の人は、紐を体にぐるぐると回されています。


僕はどうしたらいいのでしょう?


ミカちゃんからは、ここを動いちゃダメよ。


そう言われました。


でも……何か嫌な感じです。


悶々とします。


村が燃えているのに、ジッとしているなんて、おかしいです。


僕は駆け出しました。


でも、僕が村に着く前に、ミカちゃんを乗せた箱は――。


何処かに去って行きました。


村の中へ入ると、お爺さんも、お婆さんも、隣の家のおじさんも……。


皆、死んでいました。


僕は人が死ぬのは初めて見ました。


お婆さんと同じ赤い血で、地面が濡れています。


僕が声を掛けても反応しません。


僕の頭の中は真っ白でした。


まるで、お婆さんが帰って来なくなった時の様に……。


ミカちゃんも居ない、誰も居ない。


僕は泣きたい気持を抑えながら、ミカちゃんを運んだ箱を追いかけます。


もう1人になるのは寂しいのです。


お婆さんも帰ってきません。


僕も元の場所に帰れません。


ミカちゃんも居なくなったら……。


また1人です。


1人は嫌です。


誰かに、傍に居て欲しいのです。


僕は必死に走ります。


今にも泣き出しそうなのを我慢して――。


必死に走った甲斐がありました。


ミカちゃんを乗せた箱は、もう目の前まで来ました。


馬は走るのが速いけど、箱を引いている馬なんかに負けません。


箱の隣まで来た僕は、箱の中に飛び乗りました。


箱の中には、ミカちゃんと、顔見知りのお姉さん達が乗っています。


それでも7人位しか居ません。


村には40人は人が居たのに……。


ミカちゃんは寝ているみたいです。でも綺麗な顔に黒い模様がありました。


それを見た僕はまた悶々としてきました。


次の瞬間、僕の悶々は破裂するように外に飛び出しました。


箱を引いている馬目掛けて爪を飛ばし、


箱が止まると外に出て、馬に乗った人達へと爪を振りました。


男達は、最初は何が起きたのか分らずキョロキョロしていましたが、


僕に気づくと、一斉に光っている棒を振り上げて掛かってきました。


僕にとっては、武器を持った人の相手は豚で慣れています。


僕は素早く動き回りながら、


お得意の爪を飛ばします。


男達は足を切断された者。


腕を切断された者。


胴を切断された者。


首を……。


様々です。


生きているだけで、不思議な有様でした。


全ての男達が地面に落ちた時、立っているのは僕だけでした。

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