第8話束の間の幸せ

村を救った僕は村長さんのお家に招待されました。


村長さんは、あの白い髪の毛の彼女のお父さんらしいのです。


何でも養子という理由で、村長さんの家に貰われて来たそうです。


村長さんのお家には、他には誰も住んで居ません。


なので、将来は彼女が跡を継ぐのだと、話してくれました。


僕は、とても嬉しいです。


しばらく滞在して下さいと言ってくれたので、しばらくは彼女と一緒です。


彼女の名前はミカちゃんと言うのだそうです。


宿泊したその日から、僕はミカちゃんと一緒に寝ています。


お婆ちゃんの家でさえ床下住まいだったのに……破格の待遇です!


ミカちゃんの朝は、僕と同じ位早いです。


僕が陽の登り始めるまだ暗い内に目を覚ますと、もう起きています。


朝早くから、畑の収穫をしたり、雑草を手で抜いたりしているからです。


村長さんの跡を継ぐのに、皆に認めて貰えるように必死なのだそうです。


僕も何かお手伝いが出来たらいいのですが……。


僕のスキルで雑草を刈ると、畑の野菜も一緒に切り取ってしまうのです。


だから僕に出来る事は何もありません。


僕は彼女が仕事を終えるまで、ずっと彼女の傍で見守っています。


また緑の人とか、豚が来たら大変ですから。


この村には度々、あの様な魔物と呼ばれる人達の襲撃があるらしく、


僕が居てくれると助かるよ。


なんならずっと居てくれていいよ。


そう言ってくれます。


僕は悩みました。


お婆さんの家に帰る方法が見つからないのに、


のんびりしていて、いいのだろうか?


でも、ミカちゃんの事が心配です。


帰りが遅くなってお婆さんは心配しているでしょうか?


でも。きっと、許してくれます。


お婆さんは優しいですから。


そうして1週間が経ちました。


今日は畑のお仕事はお休みらしく、ミカちゃんと一緒に遊びに行きます。


近くにお花畑があって、そこでお弁当を食べるのだそうです。


僕が来る前から、お休みの日のミカちゃんの日課だそうです。


ミカちゃんはいつも穿いているズボンでなく、ひらひらのスカートです。


ミカちゃんは、外出する時はおしゃれをするものなのよ?と言います。


僕はおしゃれをした事が無いので、良く分りません。


でも今日のミカちゃんがいつもより可愛いので、多分嬉しい事なんです。


お花畑は小高い丘の上にあって、そこから村が一望出来ます。


スカートが汚れない様に、襤褸の布を下に敷いたらいよいよお食事です。


ミカちゃんの作ってくれるサンドイッチはとても美味しいです。


僕のサンドイッチには辛いソースが入っていません。


まだ早いわよと言っていました。


試しに舐めたら、舌が痺れました。


もう二度と食べません。


ここに吹く風が気持ちよくて、


ミカちゃんの膝の上で寝てしまいました。


ミカちゃんも一緒にうとうとしています。


僕は、なんだか幸せだな~と思っていたら。


遠くから馬に乗った人達が、大勢やってきます。


ミカちゃんもそれに気づきました。


ミカちゃんは首を傾げています。


何があったのでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る