逆恨み
六甲建材事件は警察的には一件落着した。赤磐の倅が執行猶予付きの刑を受けて釈放されたとき、会社は既に解散し自宅は銀行に差し押さえられガレージに並んでいた高級外車も誰かに売り払われていた。死んだ父親が彼に残したものは前科と負債だけだった。
「ちきしょう」事務所の鉄骨を蹴飛ばすと、赤磐は農道をやみくもに走り出した。
翌日、県が許可取り消しに二の足を踏んだため何事もなかったかのように営業を続けているエターナルクリーンの搬入口に赤磐が潜んでいた。目の前をあのランクルが通り過ぎた。赤磐は懐に隠したサバイバルナイフの柄をしっかりと握り直した。車から降りたのは筋骨隆々とした若い衆だった。狙っていた女ではなかったが相手は誰でもよかった。死んだ親父の面目を快復すれば組を再興できると思い込んでいた。
「ワーッ」赤磐は雄叫びをあげて男の脇腹に突っ込んだ。
翌朝の新聞の社会面に返り討ちにあって死亡した赤磐の記事が小さく載った。六甲建材事件は伊刈にとっては環境事務所に着任して最初に手がけた本格的な不法投棄事件となった。彼はこの事件からさまざまな教訓を学び取り、そこで試みた戦略の一つ一つが後に重要な発展をとげることになった。この事件に最初に行き当たったことは運命的ですらあった。
産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 1 産廃ゴールドラッシュ 石渡正佳 @i-method
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