第5話 解放のアンドロイド

 ランタンが木に吊るされていた。そこに立っていたのは、上半身裸で毛むくじゃらの、まるで猿のような顔の男が二人。他には三人いたが、二人は木に縛りつけられていた。軍服を着て首から上は犬の顔をした大男。黒毛でシェパードのような精悍な顔つきをしている。同じく軍服を着た首から上が緑色のバッタのような小柄な男。そして丸裸にされ手足に手錠をかけられ地面に転がされている赤毛で白人の少年。この3人だ。

 今は春だからハロウィンじゃない。山大生がバカ騒ぎするのは七夕祭だと決まっている。その他に何がある?この異様な光景を説明する言葉を探す。しかし、見つからない。参った。こいつら、どう考えても宇宙人じゃないか。

 猿人二人はズボンを脱ぎ下半身を露にする。股間のものはいきり立っておりこれからあの少年が犯されるのは目に見えていた。

「椿さんヤバイです。あれは宇宙人ですかね。あの子強姦されちゃいますよ、お、お????」

 先ほどまで俺の側にいた椿さんがいない。どこへ行ったのかと見まわしてみると、なんと丸裸にされた赤毛の少年の前にしゃがんでいるではないか。彼女の目線は少年の股間へと注がれている。

「わっ。やっぱり毛が生えてないんですね。ものすごく縮こまってるんだけど寒いからかな?お姉さんが温めてあげようか?」

 少年はブルブルと首を横に振る。恐怖のあまり全身震えているようだ。まあそうだろう。猿人に捕えられ裸にされ、暗闇から出てきたサングラスの女性に股間を注視されているのだから。俺でも怖い。

「触ってもいい?怖がらなくても大丈夫。お姉さんとイイ事しようか。ね」

 少年は全身震えながら首を横に振る。素っ裸になった猿人も、椿さんの乱入にパニックになったようでその場に固まっている。

「椿さん。ダメです。日本では13歳未満の子供にエッチな事したら問答無用で逮捕されます。たとえ合意の上でもアウトです。強制わいせつ罪です」

 俺は隠れていればいいものを大声で叫んでいた。

「ええ?そうなの?見るだけでもダメなの?」

「ダメです。性的に子供怖がらせたらアウトです」

「厳しいですわね。じゃあこのサル助やっつけてお風呂入ろうか。ねっ。正蔵様、お風呂なら大丈夫ですわね」

「普通に入るだけなら問題ありません。エッチなことは厳禁ですよ」

「分かりました。では、このサル助二匹を排除します」

 椿さんが猿人二人に向かいファイティングポーズを取る。やる気満々のようだ。その時、縛られている犬顔の大男が小声で話しかけてくる。

「地球人じゃ勝てない。この縄を解け。俺にやらせろ。ゼリアが人質に取られなけりゃあいつ等なんか相手にならん」

 猿人二人はそれぞれ身長が2メートルほどもある。筋肉質なプロレスラーといった体形でかなりの腕力がありそうだ。一般の地球人なら即KOされそうな体格だ。そこの犬顔も同様の立派な体格をしている。俺は崖から下りて、ポケットからレザーマンのマルチツールを取り出しナイフを引き出す。犬顔が縛られているロープを切ってやった。バッタ顔のロープも切ってやる。

「勝手な事しやがって、ぶっ殺す」

 猿人は一斉に飛び掛かってきた。一人は椿さんへもう一人は犬顔へ向かう。椿さんは掴みかかってきた猿人をするりとかわし右の脛に強烈なローキックを放った。

 ゴキ、骨の折れる鈍い音がする。猿人はそのまま地面に倒れ右脚を抱えて転げまわる。「足が足が」と叫んでいる。犬顔のほうは掴みかかってくる猿人の腕を掴み一本背負いを決めた。すかさずマウントポジションを取り顔面に数発パンチを浴びせる。強打を喰らった猿人は動かなくなった。

 バッタ顔は猿人の装備を奪ったのかライフルを構え射撃した。オレンジのビームが転げまわっている猿人に命中した。猿人は動かなくなる。犬顔にやられた猿人にも射撃する。

「軍曹、ゼリアの手錠を外してやれ。鍵はこのどれかだ」

 20本くらいのカギの束を軍曹と呼ばれた犬顔に渡す。犬顔はさっそくカギを外そうとするがなかなか合わない。

「地球の青年よ。助けてくれてありがとう。感謝します」

「本当に助かった。君たちが来てくれなかったらゼリアは強姦され俺たちは埋められるところだった。ありがとう」

 バッタ顔と犬顔から感謝されるのは照れ臭い。やっと鍵が合い手錠が外れた。ゼリアと呼ばれた少年も立ち上がり股間を隠しながら頭を下げる。

「ありがとうございます」

「いえいえどういたしまして。ところであのサルみたいな大男は殺したんですか?」

「いえ、これは麻痺光線です。このライフルは殺傷用と麻痺用を使い分けることができます。麻痺用ではショックを与え意識を奪います。老人や子供相手に使うと死亡することがありますがこのサル助相手なら問題ありません。数時間は目覚めないでしょう。軍曹、こいつらを縛っておけ。また悪さをされたらかなわん」

 軍曹が手錠とロープを使い、二匹の猿人を木に縛り上げた。

「ところで、この状況って、どうなってるんですか?俺たちは今この近辺で発生しているネット障害と機器の異常停止をなんとかしようとやってきたんですけれども。携帯も車も家電も事務機器もみんな止まっちゃって、しかも停電にもなってて大騒動になってるんですよ」

「申し訳ない。それは俺たちが関係している」

 犬顔が謝罪する。

「詳しい話は後にしましょう。早急に事態を鎮静化させる必要があります。私は連合宇宙軍第7機動群のゲルグガラニア技術大尉です。こちらはレイ軍曹、その少年はゼリアです」

 二人が一礼する。

「俺は綾瀬正蔵、こちらは俺所有のアンドロイドで佳乃椿さんだ。よろしく」

「よろしくお願いします」

 椿さんも一礼する。

「お嬢さんアンドロイドだったのか、戦闘用か?さっきのローキックは素晴らしかったぞ。一発でサル助の脚を折るなんてな。大したもんだ」

「えへへへへ。褒めてくれてありがとうございます。本来の用途は家事支援なんですけど試作型なので色々妙なパーツが使用されています。制作者の趣味です」

「ははは、そりゃいい。あんたがいる家には強盗は出来んって事だな。ははは」

 軍曹は大笑いしている。自分の軍服を脱ぎゼリアに着せてみるが、さすがに大きすぎて着れたものではない。仕方ないので俺の着ていたジージャンを着せてみると、丈がちょうど太もものあたりになり下半身も隠れた。袖をまくってやる。下はすっぽんぽんだが何とかなりそうだ。

「本来は我々のみで行うべき任務ですが、数的に劣勢です。できれば地球の方にも協力してほしい。頼めますか?」

 大尉の依頼に椿さんはあっさりと承諾する。右手を握り親指を立てる。

「任せなさいですわ」

 自信満々である。この自信がどこから湧いてくるのか不思議だ。

「地球の方にかいつまんで説明します。この先約1キロメートルの所にキャンプを設置しています。本来我々は調査目的のためここに来ていたのですが、部隊の大半が離反してしまいました。我々の敵対派閥による妨害行為です。我々は大型の上陸用舟艇でありサイバー戦専用装備を備えた指揮所でもあるクロウラを使用していますがそれを強奪されました。私が調査のため用意していたウィルスとワームを悪用され、この一帯に通信障害と多数の機器停止を引き起こしました。彼らの仕業です。彼らは我々が本来保護すべき目標を強奪もしくは破壊すべく行動しています。これは断固阻止せねばなりません」

 皆が頷く。大尉が続ける。

「連中は主に帝国内マントラ自治領、もしくはその母星惑星サレストラ出身者だと推測されます。大柄な猿人の体躯がその証拠です。彼らの特徴は倫理観に乏しく規律に対する遵守精神に劣り、出征時に暴行や強奪を繰り返すことです。残念なことに現在もこの近辺の女性を数名拉致しています。我々はこの不埒な行為を決して許すことができません。我々の名誉にかけて、この拉致された人員の救出を最優先とします。次にクロウラの奪還、もしくは破壊を実行します」

 俺と椿さんは顔を見合わせる。地球人が拉致され暴行されているのか。

「早く助けないと」

「サル助ってああなのよ。いつも」

「知ってるんですか?」

「ええそうよ。だから最初に言ったじゃない。大嫌いだって」

 今度は大尉と軍曹が顔を見合わせて驚愕する。

「えっ。姉さんサレストラのサル助知ってるんですか?」

「まさか、アルマの女神様でしょうか?」

「クレド様?」

 軍曹、大尉、ゼリアの3名が同時に言う。俺には何のことやらわからない。

「そう、私がクレドですよ」

 椿さんの返事に対し、3人は片膝をつき左手を地面につけ右手の平を胸にあてる。これは、彼らの最敬礼ってことだろうか。

「直って下さい。詳しい話はあとで。大尉殿、さっさとサル助共を退治しますわよ」

 三人は立ち上がり敬礼をする。これは地球と同じだ。

 軍曹が奪った装備を確認する。ロケット弾発射筒が一本、弾は2発。ビームライフルが2丁、実弾拳銃が2丁、円筒状のグリップのものが2本、これは光剣なのだという。軍曹は俺にライフルを手渡した。

「援護を頼む、麻痺にしておけば貴様でも扱えるだろう。素人に殺しはさせられんからな」

 大尉も頷く。俺も参戦するのか。こんな事ならサバゲー同好会にでも入っておけばよかった。こういうのどう扱うのかさっぱり分からない。

 軍曹がロケット弾と光剣を持ち俺とゼリアがライフルを持つ。大尉は拳銃を2丁。もう一本の光剣は椿さんに手渡された。

「これは両手で絞るように捻ると光剣が出ます。収納するときは逆です。手を離すと1秒後に自動で収納します。大変よく切れますので取り扱いにはご注意ください」

「はーい」

 右手を上げニコニコしながら返事をする椿さんである。


 俺たちは連中の居座るキャンプへと向かう。しばらく山道を歩くと明かりが見えてきた。そこには整地してある広場があり中央に大きな、大型バス3台分くらいある巨大な黒い芋虫がいた。あれが先ほど大尉の言っていたクロウラだろう。上陸用舟艇でありサイバー戦の指揮所だという。その周りにテントがいくつか立っており手足を縛られた女性が数名倒れていて、それを囲むように猿人の兵士が数名立っている。手前のテントの中からは女性の悲鳴が聞こえる。今まさに暴行されているのだ。俺は腹の底から怒りがこみあげてくるのを感じ、椿さんを見る。椿さんは頷きながらいった。

「ここは私に任せてください。そこにいるサル助全て片付けてきます。まず私が飛び込んで注意をひきつけます。その隙に軍曹と正蔵様はテントの中の女性を救助、大尉殿は倒れている女性達を解放して。ゼリア君はここから麻痺ビームで援護ね。行くわよ!」

 椿さんはダッシュして目の前にいた猿人に飛び蹴りを食らわせる。そいつは頸部がひん曲がりそのまま倒れた。着地と同時に右隣りにいた猿人の右脚にローキックを放つ。やられた猿人は脚が折れたようでその場で悶絶しながら転げまわる。その騒ぎに周囲の猿人が集まってくる。俺と軍曹は手前の悲鳴の聞こえたテントに入る。女性が服を破かれ今まさに犯されようとしていた。軍曹は光剣を抜き犯そうとしていた猿人の胸を刺す。その猿人は血を吐きながら絶命した。服をほとんど破かれた女性は悲鳴を上げながら縮こまっている。

「大丈夫だ。もう心配ない」

 そこにあった毛布を掛けてやり一緒にテントの外に出る。外では椿さんと軍曹組対猿人の格闘戦が派手に行われていた。椿さんのパンチが猿人の顎を砕き、ハイキックがあばらを砕く。軍曹の投げ技が炸裂し猿人は悶絶する。格闘ではかなわないと感じた猿人はビームライフルを使って射撃するのだが、椿さんの手前で見えない壁に阻まれビームは四散する。軍曹は光剣でビームを弾いている。どんな運動神経をしているんだか相当な使い手だ。大尉は外にいた数名の女性の手錠を外し木陰から援護射撃をしているゼリアの元へと連れていく。俺も救助した女性をそこへ連れて行った。拉致されていた女性は計6人だった。一人の猿人が俺たちの方へ向かって来たが大尉が2丁拳銃の連射で仕留めた。

「ゼリアはここで援護を続けろ。正蔵君はこの女性たちを頼む。今からクロウラを奪還する。万一奪還できない場合はロケット弾で破壊しろ。いいなゼリア」

「了解」

 敬礼をしてゼリアが返事をする。大尉は巨大芋虫のようなクロウラへ走っていく。外の猿人はあらかた片づけたようで、椿さんと軍曹も大尉に続きクロウラへ向かう。その時クロウラ横の大型ハッチが上方に開き一人大男が出てきた。猿人の身長は平均2メートルくらいなのだが、それよりもかなり大きく2メートル50センチくらいありそうだ。よく見るとそいつは猿人ではなく金属製のロボットだった。ずんぐりとしたゴリラのような体形。腕が異様に太く長い。丸い頭で眼球は3つある。大尉が2丁拳銃で連射を浴びせるが弾丸は弾かれダメージを与えられない。ゼリアはビームライフルで狙撃した。しかし、装甲の表面を焦がすだけだった。軍曹は光剣を抜き切りかかるものの光の刃は通らない。光剣を捨てタックルするのだがロボットはびくともしない。ゴリラロボは軍曹を捕まえ放り投げる。受け身を取って地面で一回転し立ち上がる軍曹だがその表情は厳しい。

「今の装備じゃ倒せん。どうする」

「自動人形なんて積んでなかったはずなのに、どうして」

 軍曹もゼリアも困惑しているようだ。これは逃げるが勝ちかも?と思い逃走経路を確認するが、平川の大スギへ続く線上にそのゴリラロボが陣取っている。救助した女性を6人かかえて逃げるのは無理なようだ。

「私にお任せください」

 堂々と宣言した椿さんはそのゴリラロボに向かってゆっくりと歩いていく。ゴリラロボは椿さんに向け渾身のパンチを放つ。椿さんは避けもせず右手のひらで受け止める。何の衝撃もなくゴリラロボの動きはぴたりと止まった。

「良い子ね。可愛いわ。人を傷つけるのはもう止めようね。ね」

 椿さんはゴリラロボに話しかけている。説得しているようだが、果たして通用するのだろうか。しばらくしてゴリラロボの赤い三つ目は緑色に変化した。椿さんに向けていた手を下ろし、頭を下げた。椿さんは頭をなでつつ「良い子良い子」としきりに褒めているようだ。

「この子はもう悪さはしません。ん?」

 上方を睨んだ椿さんは突然叫ぶ。

「艦砲射撃が来ます。ゼリア君の所まで退避してください」

「艦砲射撃だなんて馬鹿な」

 戸惑う大尉を軍曹が抱え上げ椿さんと一緒にこちらへ走ってくる。ゴリラロボもついて来ている。

 斜面の木の陰にいた俺たちのところへ三人が到着した瞬間クロウラとゴリラロボに光線が突き刺さったのが見えた。すさまじい閃光が放たれ爆発が起こる。周囲には強烈な熱線が放射され一気に火災が発生した。椿さんを中心とした半径2メートルほどの透明な壁、シールドに俺たちは守られていた。周囲は相当な高熱のようで、木々は燃え盛り倒れていた猿人も燃え上がっている。

「乱暴な奴は嫌いなんですよね。皆さんはここから動かないでください。私は火災を消火します」

「大丈夫なの?」

「はい大丈夫です。少し待っててくださいね」

 椿さんは見えない壁から外に出て炎の中を歩いていく。髪や衣類が燃えるようなこともなく平然としている。広場の中心あたりで立ち止まり両手を上に挙げた。手のひらを天に向け椿さんも上を向く。何やらブツブツ言っているようだがまさか魔法でも使うつもりなのかと思った瞬間、椿さんの上方に巨大な水球が出現しそれが四方に弾け飛ぶ。大火災は一気に鎮火した。


 周囲は黒焦げになっていた。シュウシュウと音をたて白い煙を吐き続ける。火災は平川の大スギまで広がっていたようで、哀れにも天然記念物の大木は半分焼け焦げていた。サイバー戦の指令所となっていたという大芋虫クロウラも原型を留めておらず破砕されていた。バラバラだ。その周囲には黒焦げの猿人の遺体が転がっている。

「椿さん魔法ですか?さっきのアレ」

 いきなりの巨大な水球が出現し破裂した。何というか某ファンタジーRPGの極大魔法って感じの大技だった。

「さあ、何でしょう。って事でいいのではないかと思いますよ。シールドも魔法ですね」

 相変わらずにこやかな椿さんである。よくわからなことだらけだ。

「ところで大尉殿。クロウラは壊れちゃってますが、どうしますか?障害の回復、どうしますか?」

 心配になった俺は大尉に尋ねてみる。

「私のワームはクロウラからコントロール不能となった時点で自壊します。よくできた子ですよ」

「つまり、自然に元に戻るの?」

「はいそうです。恐らく30分程度で完全に回復すると思います」

「じゃあ一安心ってとこですね」

「そうですね」

 しかし、大尉は寂しそうだ。

「あれは、大尉が手塩をかけ育てたワームが全滅したからでしょう。回収もできませんでした」

 ゼリアがつぶやく。

「ワームってプログラムですよね。育てるんですか?」

「そうですよ。アレは魂を持ったプログラムです。かなりの手間をかけていました。残念です」

 魂を持つプログラム???人や生きものに魂が宿るのは、まあ何とか理解するけれども、プログラムに魂とかの話になるとさっぱり理解できない。

「何でそんなもの作ったんですか?」

「それはクレド様の能力の一つを模倣したのです。先ほどあなたも見られたでしょう。敵側の兵器を味方につけ操る術を」

 そうか、あのゴリラロボを破壊せずに手なずけたアレか。ああすれば平和的に紛争解決できるのかもしれない。考えてみるとものすごい技術である。

「もう泣くなって。君たちは助かったんだ。あのサル助は排除した」

 軍曹が向こうで一生懸命拉致された女性をなだめている。全員半狂乱ってところだ。猿人にさらわれ犯されそうになり、今度は犬人間に襲われそうだって認識かもしれない。可哀想なので出しゃばってしまう。

「あ、こちらの犬のマスクのオジサンはお味方ですよ。噛みついたりしませんから安心して。もうすぐ警察と救急車が来ますからね。もう少し待ってて。大丈夫大丈夫」

 俺の顔を見て少しは安心したのか女性たちは大人しくなった。何人かは俺の足元にしがみついてきた。本当に来るのかはあてずっぽうなのだが、これだけの大爆発があったんだから即時対応するはずだ。椿さんを見ると親指を立てている。

「紀子博士とのリンク回復しました。状況を報告したところ、自衛隊と綾瀬重工警備部が急行しているとのことです。警察と消防も来ますからご安心ください」

「これ、どんな言い訳するのかな?」

「さあ、報道関係は隕石の落下って事で鉄板ですが、綾瀬と自衛隊幹部には正直に答えるべきではないでしょうか」

「俺がするのかな」

「私が報告するので不要です。しかし、大尉殿は詳細なお話をされる必要があるでしょうね」

「覚悟しておりますよ。母船が迎えに来るのは一ヶ月後です。それまですることがないので何でもご協力しますよ」

「正蔵様、この服は洗濯してからお返しします」

 申し訳なさそうにゼリアが言う。

「返さなくてもいいぞ、気に入ったならずっと着とけよ」

「ありがとうございます」

 ゼリアはまたまた頭を下げる。礼儀正しい子だ。


 爆音を響かせオスプレイが2機飛んできた。一機は自衛隊機、もう一機は綾瀬重工警備部の機体だった。俺たち一行は綾瀬のオスプレイに乗せられ上昇する。下を見ると自衛隊のトラックやパトカー、救急車など続々と集まってきたのが見える。俺たちはそのまま萩へ移送された。

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