第209話ガーディアン
「どうして、どうしてこんな……」
「あんまりでござる……」
打ち解けあった、理解しあった相手を殺され項垂れている僕等に対し、エリザベスの「進むわよ」と言う冷たい鶴の一声でこの件は幕を閉じた。
だが僕と十左エ門は頷きあい心に決める。
次こそは仲良くなろう。
そう誓い、先に歩いていく彼女たちの背を追いかけるのであった。
「「ま、待ってくれ(だされ)--!!??」」
「「ロボオオオオオオ!!??」」
「」変形ロボオオオオ!!??」」
「「無慈悲なぁああああ……!?」」
だがそんな僕らの願いもかなわず、彼女達の手によって悪魔達は次々に駆逐されていってしまった。
「もう、もうこれじゃどっちが悪魔か分からないよ……」
「諸行無常でござる……」
「「「「真面目に戦え」」」」
「「すみません」」
悪魔との対話を試みる僕ら彼女等に怒られ、しぶしぶ武器を手に取るのだった。
「これ、最後の部屋だよね」
「そうね。最上階みたいだし、そうだと思う」
悪魔と戦い、階段を上り、ついに僕らは最後の部屋までたどり着くことが出来た。
アイテムやHP,MPを確認し、皆の顔を見回す。皆準備万端のようだ。
僕は扉に手をかざす。すると扉は意思を持っているかのようにゆっきりと開き始めた。
部屋の大半は何もない空間となっており、奥の方には沢山の機会がある。特にその中心にマザーコンピューターの本体だろうか。大きな3D映像を映す機会があった。
僕らが中に入ると扉が一人で閉まる。辺りを警戒し武器を構えると、機械に先ほど見たマザーの姿が映し出される。
「良くここまで来ました、人の子らよ。ですが逃げてください。ここにいる相手は貴方達ではかないません」
マザーの冷静で冷たい声に、これから戦うであろうボスの強さが伺える。
「そう言うわけにはいかないわ。ここのシステムを回復させないと火の国が危険にさらされてしまうわ」
「ん。それに大魔道時代に何があったのか知りたい」
エリザベスとエリーゼの言葉にマザーは視線を落とし悲しい表情をみせる。
「そうですか。私の声は届かなかったようですね。さようなら人の子らよ。来世で会いましょう」
マザーの映像が乱れ消えていく。すると奥の壁中にある機会が作動し、部屋の中心に向け光を放つ。
光は徐々に形を成し、そしてその姿を現した。
・ガーディアンLV160
青く光るクリスタルを何個もつなぎ合わせたような体はまるでゴーレムのようだ。人の形をしているが、その大きさは3mはあるだろう。両の目は赤く光り、その拳は岩をも簡単に砕きそうだ。
その姿を見て、皆が息を呑むのが聞こえる。
「……ウィル。今LVいくつ?」
「……さっき91になったばかりだよ。流石にきついね」
それでも皆でかかればなんとかなる、誰もがそう言おうとしたが、言葉にできなかった。
流石にLVが違いする。
僕がこの中で一番LVが高い。恐らく一番低いレイはまだLV70前後だろう。流石に100オーバーの攻撃を受けたら即死かもしれない。
「レイは前に出ないで。僕と卍さん、十左エ門で敵の気を引こう」
「そうね。でも決して無理しないで。最悪攻撃はしなくていい。後衛陣に任せて」
「そうですね。では囮役は任せてください」
「そうでござるな。皆油断せぬよう」
卍さんと十左エ門の了承は得た。レイは悔しそうに歯を食いしばりながら「わかった」と呟く。
「アイリスはどうする~?」
「アイリスは攻撃できたらする、って感じね。それまでは無理せず待機で。貴方はスピードタイプじゃないから」
「そうだよね~。お兄ちゃん気を付けてね」
僕等が作戦を決めた時、敵のHPバーが表示される。
今までの最高HPバーは5本だったが、今回は8本もある。その事に苦笑しながら僕はスキルを全開にする。
「「雷神衣威」「空間把握」「身体強化」「俊足」「達人見切り」」
今僕にできる逃げ足が一番早いスキルを選択する。
僕を先頭に3人が駆け出し戦闘は開始された。
まずは小手調べに僕が真っ直ぐ敵に突っ込む。この中で素早さが一番あるのは僕だ。敵の初撃を躱せなかったらもう誰も躱せないだろう。
お互い射程圏内に入った時、一瞬背筋が寒くなる。慌てて横に転がると、先ほどまで僕がいた所の地面が抉れていた。ガーディアンを見ると腕を振るった様な姿勢をしていた。
全く攻撃が見えなかった。
LV差があるとここまで違うのか、と悔しくなりながらも警告をしようと振り返る。だが卍さんも十左エ門も一定距離を開け近寄らずにいた。恐らく彼らも今の攻撃が見えずに警戒しているのだろう。
試しに「乱れ切り」と「かまいたち」を放つ。だがガーディアンは滑るように動き、その全てを躱して見せた。
が、その隙を見逃さず、卍さんと十左エ門が敵の死角から僕と同じ攻撃を放つ。と同時に後衛陣が魔法と矢を放ち、ガーディアンは四方からの攻撃をまともに受けた。
魔法の爆発で一瞬ガーディアンが見えなくなる。皆動かず、目を逸らす事無く爆発のあったところを見つめ続けた。
「……そんな」
「……嘘であろう」
だが僕らの願いもむなしく、煙から出てきたガーディアンのHPは一切減っていない。ガーディアンの体には光の膜のような物が覆っており、恐らくそれで攻撃を防いだのだろう。
流石に僕は苦笑せざる負えなかった。
このゲームで、初めて負けるかもしれない。
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