第202話襲撃

森の中にある小川を、皆が乗れるギリギリの大きさの小舟で静かに進んでいく。もしかしたらこのイベントに参加下人数に合わせた船のサイズを用意してくれるのかもしれない。


「ここはすでに悪魔のテリトリーでござる。悪魔たちは警戒心が強く拠点の周りに様々な罠を張り巡らせているでござる」

「その通りニン。某もいくつかは把握しているが未だその全てを把握はしていないニン。気を付けるニン」


 皆に緊張がはしる。誰もが口を開くことなく辺りを警戒する。初めて訪れた島でいきなりのクエスト、そして見たことも聞いたこともない「悪魔」という相手だからだろう。一体どれほどの強さがありどんな姿形をしているのか想像もできなかった。


 木の葉のこすれる音、鳥のさえずり、川の水の音、自然の奏でる音を一つ一つ聞き逃さずに警戒心を強める……が、それは突然訪れる。


「……は、は、ハックション!!ゲーーップ。あ、失礼」


 服部半蔵之介が突然くしゃみとげっぷを大音量でしやがった。皆は突然の彼の行動に言葉を失い彼を見つめる事しかできなかった。その時。


『ビー、ビー、ビー、侵入者を感知。侵入者を感知。これより敵の排除に当たる。繰り返す。敵の侵入を……』


 近くの木陰から地球で使っているような監視カメラが現れ、サイレンのような音が辺りに響き渡る。


「ぬ!?何故バレたでニン!!皆の者!警戒するのだ!!」

「「「「っお前のせいだ!!!」」」」


 皆の声が綺麗に重なった。この忍者がこの中で一番忍んでない。


「おっと皆の者。冷静になるでニン。そして他人のせいにするのは良くないでニン?忍びの里にはこう言う言葉がある。「耐え忍ぶもの、それが忍びなり」と」

「なに開き直ってんのよ!!あんたのせいじゃない!」

「しかもドヤ顔で言わないでください!!腹がたちます!!」

「しかもアンタが一番耐え忍べてない!」

「ん。忍者失格」

「この先不安でしかないわ……」

「皆何か来るわ!!武器の用意を!!」


 皆が半蔵之介に文句を言ってるとクリスが声を上げ警戒を促す。全員が素早く武器を手にし辺りを警戒するまでの速さは流石トッププレイヤー集団と言えるだろう。


「……空よ!!」


 クリスの言葉で全員が上を向くと何かが真っ直ぐ船に向かって飛んでくるのが確認できた。


「かなりのスピードね」

「はい。新種の飛行型の魔物でしょうか」

「ん。だけどこのメンバーならよほどのことがない限り負けることはないはず」

「そうだね。冷静に対応さえすれば「全員船から飛び降りて!!」は?」


 この中で一番視力のいいクリスが叫び全員がその指示に従い船から飛び降りる。すると飛んできた物体はまっすぐ誰も乗っていない船に激突し爆発しする。


「み、ミサイル!?」

「何でファンタジーゲームなのにミサイルが!?」

「あ~船が粉々だよ~!!」

「このゲームには確か銃やロボットといったものもあったはずです!」

「現在確認はないけど大魔道時代の産物、だったかしら?」

「そうだね。実際それらを作っているクランもあるからね。って!!」

「また空から降ってくるでニン!!完全に場所がばれているのでニン!!」

「「「「お前のせいだ!!」」」」

「喧嘩してる場合ではないでござるよ!!退避退避!!」


 次々に飛んでくるミサイルを皆懸命に躱すがこのままでバラバラになってしまう。というかどこの戦争ゲームだこれ。


「皆!このままじゃバラバラになってしまう!!」

「そうね!!近くにいる者同士固まって一気に駆け抜けるわよ!幸いこのミサイルは生物に反応して飛んできているわけじゃないわ!!」

「なるほど!誘導タイプじゃないなら切り抜けられますね!」


 「カンパニー」と「鏡花水月」はそれぞれ固まり「カンパニー」側に範蔵之助、「鏡花水月」側に十左エ門が一緒になり、川の両側に分かれ川の流れに沿って走る。


「まだしばらくかかるでござるが仕方なし!このまま一気に「悪魔の城」まで走るでござる!!」

「「「「了解」」」」


 飛んでくるミサイルを魔法で撃退しながら二手に分けたチームは爆走する。ミサイルの数はだんだん減りこのままなら行けるかもしれない。


「ウィル!!あれ!!」

「クソッ!「雷神衣威」!!」


 バラバラに飛んできていたミサイルは標的を絞り、「鏡花水月」目掛け同時に8発ものミサイルが同時に飛んで行っていた。あれは逃げられない。


「「切断剣」「乱れ切り」!!」

「侍剣術奥義「風の太刀」!!」


 飛んできたミサイルが「鏡花水月」に当たる前に僕と十左エ門が高く飛び上がり4発ずつ真っ二つに斬り落とす。 


「お見事。やるでござるな」

「そっちこそ」


 着られたミサイルはその軌道を変え「鏡花水月」の周りに落ち爆発する。僕らは納刀しながら着地する。


 だが沢山のミサイルが一カ所に落ちたため「鏡花水月」立っていた地面が崩れ始め、僕らが振り返ると三人はゆっくりとその下に落ちていく。僕と十左エ門は反射的に助けようと手を伸ばすとその手をフクチョウが掴み、そしてにっこりと笑いながら女性とは思えない力で僕らの手を引く。


「死ぬときは一緒です。仲間でしょ?」


 気が付けばフクチョウの背中を座長が、そしてその背を卍さんが掴んでいた。女性とは言え三人の体重とそしてフクチョウによって強く引かれたその手を僕らは支えることが出来ず僕ら二人も一緒になってその穴に落ちていく。


「「ふざけんなああああ(でござる)!!」」


 そして僕と十左エ門はミサイルによって空いた穴に「鏡花水月」と共に落ちて行ってしまった。

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