第200話鬼ヶ島

「ううん。取り乱してすまぬな客人よ。余がこの城の当主希美じゃ。よろしくな」

「お館様はこう見えて我々より年齢は上でござる。その辺は間違えないように」


 十左エ門が耳元でこっそりとそう教えてくれる。なの容姿で年上って誰得なんだ?ただの着物を着た可愛らしい少女にしか見えない。


「所でお主らは大国から来たというのは本当か?」

「ええ、本当よ。これが証拠ね」


 エリザベスはギルドカードを渡し、海賊を倒したためこれから多くの流れ人がこちらにもやってくると伝える。


「おお!お主ら大国の英雄と書いておるぞ!むむむ。そしてこれから再び王国との交易が始まりそうじゃな」


 希美は僕らの前で胡坐をかき「むむむ」と何かを悩みながらうなっている。というかギルドカードにも英雄って書かれているんだな。なんか恥ずかしい。


「よし、決めた!十左エ門!この者達と鬼ヶ島に行ってこい!」

「お、鬼ヶ島でござるか!?いや、しかしそんな勝手に決めてはこの者達に申し訳がない」

「それは大丈夫!これから余が説得する故!」


 鬼ヶ島と聞くと鬼を思い出すが鬼退治でもやらされるのか?


「鬼ヶ島って?」

「うむ。この国は長く鎖国して折った。じゃがしたくてしていたわけではない。一つが海賊が邪魔しておったがそれはもう解決した。もう一つは鬼ヶ島に住む悪魔が原因なんじゃ」

「あ、鬼じゃないのね?」

「鬼?そのような者は知らんが、兎に角悪魔が住みついておるんじゃ。国を挙げて海賊と悪魔退治をしたんじゃがどちらも失敗していしまってのお。もし討伐に成功した暁にはこの国の宝を授けるぞ?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

シークレットクエスト発生【鬼ヶ島で悪魔退治】


この国は悪魔によって貿易を邪魔されてきた。

その悪魔たちを討伐し、宝を手に入れよう。

解答は以下の選択肢から選択してください。


1、わかりました!その依頼引き受けます!

2、あ、あ、あ悪魔だって無理無理無理。だって怖いじゃん!

3、ちょっと考えるね。…………うん。無理!

4、そんな事よりさ、実際年いくつなの?気になってしょうがない。

5、ふふふ。実は俺たちは悪魔の手下なのだー!宝をよこせー!

6、はぁはぁロリに着物。最高じゃ。パ、パンツ見せてください。

7、ちょっと何言ってるか分からないのでこの国を乗っ取る。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ちょっと何言ってるか分からないのはこの解答欄だ。変態はいるし悪魔の手下も国盗りもいる。訳が分からない。


 僕らは顔を見合わせ「1」のボタンを押す。


「わかりました。その依頼引き受けます」

「おお!!そうか!流石王国の英雄殿、話が早い!では細かい話をしよう」


 それから鬼ヶ島の位置情報や相手の特徴、そして自分たちがどれほど悪魔に困っているかを熱弁された。どうやらこの「火の国」と「王国」は長きにわたり昔から交易をしていたみたいだがその二つの存在が現れ始め島国である「火の国」は鎖国を余儀なくされたらしい。


 ゲームから当たり前だがそう言ったストーリーはリアリティがあり、なんだか聞いていると感情移入してしまう。


「うむ!分かった!俺たちが必ずや悪魔を退治してこの国を救って見せる!」

「そうだそうだー!アイリス達にかなう相手なんかいないんだから!かなわなかったらお兄ちゃんが何とかしてくれるんだから!」

「おお、頼もしいの。頼むぞ!」


 レイとアイリスは話を聞いてやる気に満ち溢れているようだ。だがアイリスは最終的には人任せらしい。迷惑な。


 その日は城でログアウトさせてもらい、学校は夏休みに入った。


 今年の夏の最初のイベントが鬼ヶ島で悪魔退治なんて変な気分だがちょっとわくわくもしている。


「「「「「ダイブイン!!」」」」」


 皆でダイブインし城下町を歩いていると目の前から見知った顔が近づいてきた。一人はあからさまに嫌な顔をしているが。


「あ、ウィルさん!皆さん!こんにちは!皆さんもやっぱりこちらに来ていたのですね!」

「ほんま久々やなぁ。元気にしとったか?ちゃんとご飯食べとるか?」

「はぁ。なんでこの国に来てまであなたの顔を見なきゃいけないんですかね?拝見しなきゃいけないんですかね?観察しなきゃいけないんですかね?私は三人で仲良く観光をしたかったのに」


 「鏡花水月」の三人が着物に身を包み優雅に挨拶をしてきた。フクチョウは嫌な顔をしているが卍さんと座長さんは嬉しそうに話しかけてくれて安心する。


「あれ?そちらのお侍さんは?これから一緒に買い物にでも行きません?」

「そうしたいんだけど、これからクエストなんですよ」

「ほう?姉様の誘いを断ってまで大事なクエストがあるって言うんですか?吐きなさい!言いなさい!答えなさい!私達にも教えるのです!!」

「こらフクチョウ。無理にクエストを聞くのはタブーですよ。でもうちも気になるなぁ」


 エリザベスが許可を出し僕らは彼女たちにクエストの経緯を説明した。すると彼女達の目の前にも画面が浮かびあがり彼女たちは喜び参加を決める。


「また一緒にクエストが出来ますね!光栄です!」

「楽しくなりそうやなぁ。鬼ヶ島で悪魔退治なんてうちらの出番やんかぁ」

「ふふ。いいとこどりできなくて残念でしたね。私達がいるからには美味しいところは渡しませんよ?メインディッシュは頂きます。ウィルさんは横にあるパセリでも食べていてください」


 飛び入りだが今回は「鏡花水月」との合同クエストになった。


 僕らは港に用意してあった船に乗り込み出発する。

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