第187話集結

「「国」とは人です!!」

「そうね。「法」とは願い!そして「国」は国民だわ!」


 アレクサンドラ達はまっすぐアレンを見て答える。辺りに数秒の静寂が訪れ、とうとうアレンがゆっくりと口を開く。


「ふふ。フォフォフォ!!「国」とは「人」か!!フォフォフォ!!若い!若いのぉ!!」


 その笑いがアレンの気持ちを動かせたのかどうかはまだ僕には判断がつかなかった。


「ふふ、すまんすまん。して、その答えにたどり着いた理由を聞いてもいいかの?」

「はい。まずは俺から。俺はこの旅で沢山の事を学びました。国に裏切られ、兵士に追われ絶望もしました。ですが俺たちは今もここに立っている。それは「カンパニー」の皆さんがいてくれたからだと思ってます。」


 アレクサンドラは僕らを見まわし力強く頷く。


「沢山の兵士を失いました。沢山戦いました。沢山追われました。人の死を見ました。俺は一人だったら何もできませんでした。ですが仲間がいて道を示してくれ、そこから沢山の人に触れ大きな輪が今できようとしてます。人ひとりの力なんかちっぽけな物でした。ですが、それが大きく繋がって一つの輪になり、やがてそれが国になるんだと感じたからです」


 アレクサンドラはゆっくりと、はっきりとそう答える。


「次は私ね。私は兵士も国もただのシステムのようにとらえてました。ですがそれは間違ってました。「国」はただの集合体で、沢山の人が居て、沢山の考え方ががって初めて「国」ができるのだと。確かに間違った方向を向いてる人もいます。でもそう言う人もひっくるめて、皆で未来を見つめそれが繋がり「国」が出来て未来に進めるのだと思います。沢山の人がより良い未来を願い、それが受け継がれ、皆が幸せになれる様に「法」が存在し願う。人一人一人があって初めて「国」が成り立つのだと、そうこの旅の中で感じました」


 エミリアは澄んだ声で、しかしその声ははっきりと聞こえ、心に響くものがあった。


 二人の答えはこれ以上ない素晴らしいものだろう。アレンは髭を撫でながら何度も頷いてから答える。


「ふむ。まだまだ若いな。だが悪くない。少し待たれよ。旅の支度をしてくる」

「では!?」

「ああ、お主らについていくとしよう。「大国筆頭大魔導士アレン」の復活じゃ」


 僕らは喜びの声を上げハイタッチをする。アレクサンドラとエミリアは安どの表情を見せ深くため息をつく。


 確かに彼らはこの旅で急成長をしたと思う。


 特にアレクサンドラは初めて「試練の塔」で見た時の傲慢も慢心もない。しっかりと地に足つけて考えを話せている。


 なんだか成長せた我が子を見る様な気持ちになってくるな。


「待たせたの。では行こうか」


 僕らは馬に乗り、アレンも自分の飼っている白馬を出し進む。やはりアレンは強かった。温泉好きのサルの大群に会ったがそれを魔法で全て上空まで持ち上げ地面に叩きつけていた。チートだよあんなの、一生彼には勝てない気がする。


「何だい。また来たのかい」


 僕らは以前突然現れた森へと足を運んだ。


「ん?ジーバか?久しいの!!50年ぶりくらいか?」

「ん?なんだいアレンじゃないか。まだ生きとったんかい。それに100年ぶりくらいじゃろうて」

「そうか!!そりゃ懐かしいわけじゃ!!」

「そうじゃの!あっはっはっは!!」


 長生き過ぎるだろ二人とも。100年ぶりの再会って凄すぎる。


「アレンがいるという事はもしかして薬草を?」

「ああ、じゃが儂は何もしていない。こ奴らが全てやったことだ」

「そうか……。無茶をさせてしまったの」

「あの、失礼ですがジーバってあの「薬学の神」とまで言われたジーバ様ですか?」

「あっはっはっは!!懐かしい名を知っているの。いかにも。まぁ昔はそんな名前で呼ばれていたの」

「ええ!!「薬学の神」ジーバ様でしたか!!王宮から突然姿を消したとお聞きしていましたが」

「王宮?ん?お主らもしかして」

「ああ、この二人は「アレクサンドラ第二王子」と「エミリア第一王子」じゃ」

「そうか……。しかし何故こんなところに?」

「それはお主らを直しながら話すことにしよう。まずは村に入っても?」

「ああ、薬草があるなら構わんじゃろう」


 その後アレクサンドラ達はジーバと共に薬の生成の手伝いをし村人たちを直していく。緑色だった体は見る見るうちに元の人らしい色に変わり、薬が効いたことがわかる。


 そしてアレクサンドラ達はこれまでの事を丁寧にジーバに話し、彼女もついてきてくれるように説得を開始した。


「ふむ。なるほどのぉ。あいわかった。アレンの頼みでもあるし行かないわけにはいかんね。ならその前に寄ってほしいところがあるさね」

「寄ってほしいところですか?」

「ああ、フェラール伯爵のとこさね」


 始まりの街フェラール。


 僕らはここから始まり、そこには沢山の新規プレイヤーが未だ増え続けている。なんだかもう何年もここに来ていなかった気分になりながら大通りをムギ達に乗って駆ける。


 僕らの行動は大いに目立っていたが街に入るという事は指名手配中の僕らにとってかなり危険な行為だ。あまり時間をかけてたくない為馬での行動となった。


「何奴!!ここは伯爵様の家だ!!」

「わかっておる。フェラール伯爵を呼べ。ジーバが来たと言えばわかる。」

「わ、わかりました……」


 門番は僕らを疑いながらも屋敷の中に入っていき、そしてものすごい勢いで出てくる。


「お、お待たせいたしました!!どうぞ中で伯爵様がお待ちです!!」


 手のひらを返したような態度に驚いたがアレンとジーバは当然だという顔で入っていく。本当にこの二人は凄い人たちなのかもしれないな。


「お、お、お久しぶりですジーバ様、あ、あ、アレン様!?何故ここに!?あれ?王子!?王女!?なんだ!?何がどうなっている!?」

「元気にしてたかい?フェラールの坊ちゃん。ちょっと太ったんじゃないか?」

「うむ。久しいの坊主。ところで頼みがあってきた。今すぐフェラールの兵を8割貸せ。あとお主もついてこい」

「は、八割ですか!?い、今すぐ?」

「なんじゃ?儂等の言うことが聞けんのか?ん?」

「い、いえ!門の外でお待ちください!!1時間もあれば集めて見せます」

「あたし等を1時間も待たせるのかい?15分でおやり」

「は、はい!!」


 それからフェラールの門の外に出ると、本当に15分で1000名を超えるフェラールの兵士が見事に隊列を組みながら出てきた。そしてその先頭には鎧を着たフェラール伯爵の姿がある。


「あ、あの、どこに戦争に出るのですか?帝国とか?」

「そんなめんどくさいところに行くわけないじゃろ。王都じゃよ」

「王都!?」


 その後アレンが指揮を執りジーバがフェラール伯爵にこれまでの経緯を話し、無理やり納得させていた。僕らは100名を超える兵士を引き連れ王都へ向かう。


「ん?あれは……」


 僕らが王都を目視した距離に立った時、西から大群の兵士を見つけた。


 その先頭の騎馬が数騎こちらに走ってくる。乗っているのはノアの弟イアン、パランケ伯爵、エヴァンナ、パライスの族長だった。


「おお、アレン様、ジーバ様まで。王子、王女、よくぞご無事で」

「ふふ。すごい二人を連れてきたわね」

「ガッハッハ!!これはすでに勝ち戦じゃな!!」

「ですね。お二人がいれば百人力です」

「おお、皆元気にしておったか。懐かしいのう」

「ほらアレンや、懐かしがってる場合じゃないぞ?やれをやるんじゃろ?」

「ああ、そうじゃった」


 僕らと、パランケ伯爵達の兵を合わせると万を優に超えている。その先頭に僕らが立ち王都へ向かう中、アレンは天に向かって手を上げ何かをつぶやく。


 すると王都全体を包むように大きな雲が出来、辺りが薄暗くなる。そしてその一部だけが裂け、丁度アレンとエミリアを中心に天から光が下りてきた。


 アレンは天候を操り僕らだけを照らしている状態だ。なんて神秘的なんだ。


「す、凄い……」

「これが「大魔導士アレン」様……」


 馬に乗りながらアレクサンドラ達も開いた口が塞がらない様だった。


「ま、待たれよ!!ここから先は」

「煩いのう。ほれ」


 王都に近づくと門番が僕らを止めようとするが、アレンが空いている片手の指をタクトのようにして一振りすると門番は宙に浮き壁に叩きつけられて気絶してしまう。


 この爺さんめちゃくちゃだ。めちゃくちゃ強いしなんかやる事めちゃくちゃだ。ごめんよ門番さん。


 門から中に入ると僕らだけに天からの光を浴びている状態を見た市民たちは「奇跡だ」と口々に言い、膝をつきこちらに祈りをささげる。


「止まれ!!ここから先は!!……あ、アレン様!?」

「何じゃ?ここから先はなんじゃ?わしとやりあう気か?」

「あ、いえ、その……」


 彼はかなりの身分の者だろう。数100人の兵士を連れて来た男をアレンは人睨みで道を開けさせる。


「お主らはここで待っておれ。あとは儂等だけで行く」

「「「「ハッ!!」」」」


 アレンは兵士に待機命令を出し、「カンパニー」王子と王女、アレンにジーバ、伯爵二人に族長、エヴァンナの14名で城に登っていく。


 いよいよこのクエストの最終段階だ……。

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