第188話謁見の間
「すみませんがここは通せません……」
「隊長達か」
城の門の外には隊長とわかるマントを付けた1番隊から5番隊までの隊長と副隊長がおり、その中には4番隊隊長のジャックと副隊長のケイトもいた。
「ウィル、久しぶりだな。なんでこんなことになっている。お前たちは何をしてるのかわかっているのか?」
「ジャック、久しぶり、分かってるよ。ただ説明するには時間が足りない。今は信じてくれ、としか言えないな」
「そうか……」
そう言うとジャックは剣を抜き一瞬で僕の間合いに入ると剣を振るう。
「?何故剣を抜かない?」
「貴方こそ、何故斬らなかったのです?」
ジャックの剣は僕の喉元に軽く触れて止まった。僕はまっすぐジャックを見つめる。彼には一度命を助けられている。彼とは戦いたくない……。
「ったく、なんかこれじゃあ俺たちの方が悪役みたいだな。おいケイト!!こっちにこい!!」
「あー、やっぱりそうなるんすね……」
ケイトは頭を掻きながら、でもどこか嬉しそうにしながらこちらに歩いてくる。
「おいジャック!貴様どういうつもりだ!!」
「あー、一番隊隊長殿、申し訳ありません。俺たち今からこっちに付きます」
「何だと!?貴様それでも4番隊隊長か!?」
「隊長だからですよ。あなた達も今この国で起こっている事を知らないわけではないでしょ?そして彼らは今こうして城まで来た。この意味が分からないんですか?」
ジャックはこちらにウィンクをして見せる。彼は何かを知っているのかもしれない。だが今は関係ない、というより彼が味方になってくれるのはありがたい。
「フォフォフォ!!いいの、若いの。見る目がある。ではここは儂らが相手になろうかの」
「かつて大魔導士と呼ばれたアレン様と肩を並べて戦えるなんて光栄です」
「フォフォフォ!!じゃが隊長副隊長相手に一人はちときつい。若いの、手を貸してくれ」
「「はい!!」」
アレンたちはこちらに頷き武器を構える。先に行けという事だろう。
「ぬん!!」
アレンが指を振るうと空から雷の雨が降ってくる。しかし城への道だけがその被害にあわずに両側だけに雷は降り注ぎ雷の道が出来きる。隊長たちはそれらを躱し、受け流す者もいれば雷に当たり吹き飛んでいく者もいる。
「凄い……、これが大魔導士の力か」
「こ、これは最早人間業じゃないっすね……」
ジャックとケイトも開いた口が塞がらないようだ。だが僕らは立ち止まっている暇はない。一気に門から城の中に入っていく。
「あー、素直に通してはくれませんか」
中に入ると玄関ホールが埋まるほどの騎士たちが武器を構え待っていた。
「すみません王子、王女!ここは通せません!!」
「ふー、今度は私達の出番ですかね、パランケ伯爵」
「ですな、フェラール伯爵」
「ガッハッハ!!儂も参加いたしましょう!」
伯爵達は剣を抜き、族長はその身一つで敵に突っ込んでいく。
「伯爵様達は戦えるのですか?」
「任せなさい。こう見えて我等、幼いころよりアレン殿に虐められ、いや、鍛えられている」
「そうだ。我等、アレン殿に実験台にさ、鍛えられてきた。今その成果を見せるとき!!」
「「あの時の恨み!!今こそ晴らす!!」」
伯爵達と族長は次々に騎士たちを漫画のように吹き飛ばしていく。その表情はまるで親の仇をうつような、鬼の形相をしており騎士たちは悲鳴を上げながら吹き飛んでいく。
「な、なんかよくわかんないけど進もう」
「そ、そうですね」
「相手が違うんじゃないかしら……」
「エミリア、それを言ってはいけない」
僕ら飛んでいく騎士たちの間を縫って階段を進んでいく。
そこからは騎士の一人もおらず一気に謁見の間まで進むことが出来た。
「いよいよですね」
「そうね、ここで全てが終わるわ」
扉を開けるとそこには王座に座る第一王子とその傍らにはブクブクの姿があった。
「何だと!?どうやってここまで!!兵士共は何をしている!?」
「イスカリテオ兄様!!もうあなたの好きにはさせません!!
「ふ、フハハハハハ!!お前みたいな愚弟に何ができる!!この国は俺様のものだ!!」
「父上は、王様はどうしたのかしら!?」
「ああ、あいつ等ならもうじき死ぬ。そういう薬を飲ませたからな」
「ではここは我々が様子を見てきます」
エヴァンナとジーバは第一王子の言葉を聞き王の寝室まで走っていく。
「ふん。いくらエヴァンナと、誰だあのババァは。まぁいい。あいつ等でもあの毒は治せん。ブクブク!!」
「は!!」
ブクブクが地面に手を置くと僕らの周りが光り、結界魔法が発動する。
「これは「王級結界魔法」!?」
「そうさ、お前らは知らないだろうがここ謁見の間にはもしもの時の為にこれが床に描かれているのだ。これでお前たちは袋のネズミだ。リムル、プププ!!」
「あいあいー!!待ちくたびれたよ私は!!」
王座の後ろからリムルとプププが出てくる。どうやらリムルは腕が再生しているようだ。ブクブクの仕業だろう。
「あいあいー!!じゃあ行くよー?」
プププがそう言うと結界の周りに突然リザードマンの大群が姿を現す。その数は100体はいるだろう。
「くそ、「幻術魔法」ですか」
「正解正解!!あなた達はわざわざこの大群の中に進んでいたのだ!!プププ、だっさー!!」
僕らは結界の閉じ込められた上にリザードマンの大群に囲まれてしまった。
「フハハハハ!!お前達に万が一にも勝ち目なんかないんだよ!!さっさと死ね!!」
「あーあーあー、やっと見つけたと思ったら楽しそうな事してんじゃねぇか」
「あはははは!!これは凄いね!!」
「ウィル!!相変わらずマッスルしてるな!!」
「ったく連絡付かないと思ったらこれかよ……」
「兄貴!!きましたぜ!!」
「皆、どうして……?」
突然扉が開かれそこには「ダブルナイツ」「悪魔結社」「鋼鉄騎士団」の皆がいた。
「ふふふ。ナイスタイミングよ皆」
「全くエリザベスが「この時間に王宮の間に来ればいいものが見れる」って言うから来たのによ。なんだよこの状況」
「まぁ状況を見るに俺たちのやることはマッスルしかないだろう」
「だな!!兄貴のピンチは俺たちが救う!!行くぞテメェら!!」
「おう!!女王様は俺が救う!!そして好きだと伝えるんだ!!」
「俺はアイリスちゃんを救う!!そして好きだと伝えるんだ!!」
「俺はクリスさんを救う!!そして好きだと伝えるんだ!!」
「俺はエリーゼちゃんを救う!!そして好きだと伝えるんだ!!」
「俺は、俺は、皆を救う!!そしてお友達になるんだ!!」
皆はリザードマンの大群に突っ込むと乱闘が始まった。
「これエリザベスが?でもどうやって、このクエスト中は連絡もポータルも使えなかったのに」
「あら、確かにゲーム内ではね。でも現実世界じゃ使えたわよ?それにクエスト中に助けてもおらったらつまらないから「このタイミングで王宮に来たら良い物が見れる」とだけ伝えたのよ。さ、ウィルにはやることがあるでしょ?」
「さすがだね。ああ、そうだったね」
僕は乱闘している皆を信じて結界に触れ集中する。
「あー、でもさすがの皆でも分が悪いみたいだね」
「ん。数が違いすぎる」
「100対23だもんねー。それにリザードマン皆LV高いし」
「うむ!ウィル急げ!!皆がやられてしまう!!」
「レイ、焦ってもいいことはないわ。ウィルと皆を信じましょう?」
僕は集中しているので皆の様子が見えない。焦りからけ「結界破壊魔法」が上手くいかない。だが次の瞬間扉から入ってくる気配を感じて安心して集中することが出来た。
「ギャハハハハ!!なんだぁ?やっと見つけたと思ったらなんだこの状況は!!」
「兄貴!!「カンパニー」が捕まってますぜ?」
「あ?ギャハハハハ!!本当だ!!いいざまだぜ!!だが弱い者いじめは良くねぇ。お前ら!!まずは雑魚どもを蹴散らすぞ!!そのあとウィルにリベンジだ!!」
「「「おう!!」」」
扉から聞こえた声からキルを筆頭に「マイノリティ」が入ってきたのだろう。彼らは5人と少ないがその実力は折り紙付きだ。
僕は皆を信じて再び結界に集中する。魔力を遡り、文字に到達すると複雑に絡み合った魔法の知恵の輪を一つづつ丁寧にほどいていく。
「ま、まさか!?」
「ん?ブクブク。あのガキは何してんだ?体調でも悪いのか?」
「いえ、あれは恐らく「結界破壊魔法」!?馬鹿な!あれが使えるのはノアだけのはず!!」
ブクブクは一人で慌てているようだがもう遅い。全ての知恵の輪を解くと結界が弱まり魔力に歪みができる。
「皆、準備はいい?」
「「「「もちろん!!」」」」
僕は振り返ることなく皆に確認をとると力強い返事が返ってくる。一気に結界魔法を握るとガラスの割れたような音が謁見の間に響き皆が動きを止め僕らの方に注目する。
それは状況に似合わずとてもきれいな光景だった。光の欠片たちが僕らに雪のように降り注ぎ、そして床に着く前に消えていく。
だが僕はそんな光景に目をくれずに一点を見つめる。相手も真っ直ぐ笑いながら僕を見てくる。
「ウィル。サポートはする。思いっきりやっちゃいなさい!」
「お兄ちゃん頑張れー!!」
「うむ!ウィル!負けるなよ!」
「ん。頑張って」
「ふふ。負けたらお仕置きが待ってるからね」
「兄貴!!頑張って!!」
「アンタ!!負けんじゃないわよ!!」
「うん。行ってくる」
僕は皆の声援を背に受け全力で駆け出し、相手もニヤリと笑い剣を抜くと全力で駆けてくる。
「リムルーー!!」
「ヴィルーー!!」
僕らの剣が力強く重なり、それを合図に部屋全体が再び戦場と化す。
ここで必ずリムルを倒し、そしてこのクエストを終わらせる!!
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