第186話ワイバーンそして
・ワイバーンLV100×8
「「「「……」」」」
「では作戦を言い渡します!ウィルとアレクサンドラはワイバーンの気をひいてちょうだい。後は皆で薬草採取よ。もし何かあった時は各自の判断で退散、山の麓で会いましょう。これはリーダー命令です!以上!各自の検討を祈る!!」
「「……」」
僕とアレクサンドラが何か言う前に作戦をエリザベスに決まられてしまった。他の皆は「分かった」と言わんばかりに首を縦に振りこちらに期待の顔を寄せる。
「あ、アレクサンドラ。どうする?」
「どうするって言われても、どうしましょう」
「まぁ作戦通りに行くならできることは一つしかないけど」
「ですね。一つしかありません」
「「とにかく逃げ回る」」
それしかない。ワイバーンは飛行龍だ。地上で素早く走り回ればまだ時間は稼げるかもしれない。
「ん。これでブースト全種かけた。今のあなた達は無敵。暴れてきなさい」
エリザベスが僕らにブーストをかけてくれてステータスは多少上がった。が、それでもLV100と戦うまでにはならないだろう。仕方ないので僕とアレクサンドラは皆より先に行きワイバーンのそばの岩陰に隠れてタイミングを伺う。
「はぁ、でもまぁいつも通りの作戦か」
「え?いつもこうなんですか?今まで兄貴良く生きてましたね」
「だろ?自分でも不思議だよ」
いつもこうだ。テキトーに僕に頼む作戦ばかりだ。だが確かにそれしか方法はない気がするし家族に危険な事はさせたくない。結局エリザベスは僕の性格を知ってのこの作戦なんだろう全くかなわないよな……。
「じゃあ行こうか」
「ですね」
「「「雷神衣威」!!」」
ゆっくりと山頂の花畑で休んでいたワイバーン達は僕らの魔力に反応して勢いよく起き上がる。
「「「「グァアアアアアア!!」」」」
その叫び声は天まで届きそうな大きなものだったが僕らは怯まずその中へ駆けていく。
「「「俊足」「乱れ切り」「かまいたち」!!」」
僕らは適当に攻撃を放つがワイバーン達は羽でそれを簡単に防ぎきった。さすがにLV差がありすぎるようだ。
僕らは体が大きなワイバーン達の間を縫って一番奥まで駆けて山の斜面を下りる。ワイバーンは全て飛び立ち僕らを追ってくる。
走りながら鑑定した結果山頂にある花が全て薬草なようだ。どれほど積めばいいか見当もつかないから時間は稼げるだけ稼いだ方がいいだあろう。
「二手に分かれるぞ!!」
「わかりました!!」
僕らは山の斜面を下りながら二手に分かれる。ワイバーンも二手に分かれて追って来る。アレクサンドラは大丈夫だろうか……、いや、今は他人の心配をしている場合じゃない。
「さて、来いよ!!」
振り返りワイバーン達と向き合う。あまり距離が離れてワイバーン達が諦めて山頂に戻っていったら意味がない。距離を取りつつ離れ過ぎずが一番難しい。
4匹のワイバーンは次々に降下してきて爪で地面を引っ掻きながら口を開けて向かってくる。それを寸前で避け続け何とか4匹をやり過ごす。
それを何度か続けながら適度に攻撃して相手のヘイトを集め続ける。
アレクサンドラはうまくやっているだろうか、そう思って反対を見た時丁度アレクサンドラがワイバーンの爪に引っかかり宙を舞っているところだった。
「アレクサンドラ!!」
急いで彼の元に駆けつけてワイバーンから倒れた彼を守る。一匹のワイバーンがそのまま降下してきてアレクサンドラを狙ってくる。
「させるかよ!!「魔爆剣」!!」
僕の剣とワイバーンの爪がぶつかり弾ける。何とかワイバーンの進路を変えさせてアレクサンドラを守る。
ワイバーン達は揃ったことで余裕が出たのか僕らの頭上を旋回せて降りてこなくなった。
「す、すみません兄貴」
「構わないさ。さ、立って」
俺はアレクサンドラに「ヒール」をかけながら立たせる。かれのHPは何とか8割まで戻ったが僕の光魔法の回復速度じゃこれが限界だ。
「今度は二人で戦おう」
「わかりました、すみません」
「謝んないでいいよ。僕の判断ミスだ、それに一人で出来ない事は二人でやればいい。だろ?僕の背は任せたよ?」
「!!はい!!」
僕らは「空間把握」を使い神経を最大限まで研ぎ澄ませ攻撃を待つ。
「グァアアアアア!!」
ワイバーン達が一斉に降下を開始し突撃してくる。どうやらワイバーン達はドラゴンと違いブレスは撃ってこないようだ。
先ほどの攻撃で「魔爆剣」は使えると判断し降りてきた一匹目に正面からぶつかり剣を振るう。何とか相手の攻撃を弾き剣を左右に振り、二匹目、三匹目の攻撃を防ぐ。
アレクサンドラは「かまいたち」を放ちながらうまく避けているようだ。
エリザベス達からの連絡はまだはいらない。
「兄貴!!」
一瞬別の事を考えていた僕のすぐ近くに2匹のワイバーンが迫っていた、これは避けられないかもしれない……。
「はぁあああああ!!「魔爆剣」!!」
アレクサンドラは僕の前に立ち一匹のワイバーンの攻撃進路をずらす。
「助かる!!「魔爆剣」!」
僕はすかさずもう一匹のワイバーンの攻撃をそらす。
「構いませんよ!一人で出来ない事は二人でやればいいんです!!」
「はは!だな!!」
僕らはそれから背を合わせて何十回と飛んでくるワイバーン達の攻撃を躱し、弾き、時間を稼ぎ続けた。
(二人とも!!もういいわ!逃げなさい!!)
戦い始めて10分ほど経った時、エリザベスから念話が入る。
「アレクサンドラ!先に山を下れ!後で合流しよう!!」
「え、でも!」
「大丈夫!しんがりは必要だ!それに僕の方が上手くやれる!」
「く、分かりました!ご武運を!」
そう言うとアレクサンドラは山の斜面を勢いよく降りていく。4匹のワイバーンがそれを追おうとするが僕が「乱れ切り」と「かまいたち」を放ちワイバーン達に当てることで全てのワイバーンが僕目掛けて降りてくる。
かっこつけたはいいが、いざ一人になると怖いな……。
「だけど、死んでたまるか!!」
それから何分経ったかわからない。もしかしたらまだ数十秒しか経ってないかもしれない。
僕は何度も剣を振るい、爪に引っ掛けられ飛ばされては立ち上がり、そして剣を振るう。
だんだん僕のHPは削られレッドゾーンに入りそろそろ限界を感じた時……
「アイスシャワー!!」
「インパクトショッット!!」
「ん。ライトアロー」
「「かまいたち!!」」
僕に攻撃を仕掛けてきたワイバーン達に向かって後ろから攻撃が飛んできて、ワイバーン達に当たる。それほどダメージはなかったがワイバーン達を怯ませるには十分だった。
「ん、ウィル!!」
馬に乗った5人は一気に急斜面を駆けてきて、僕はエリーゼののばされた手に捕まり馬に飛び乗る。
「このまま一気に下るわよ!!」
「ありがとう……助かったよ」
「ん。ウィルを一人になんかさせない」
「そうだよお兄ちゃん!!それに主役は遅れて登場するものなのだ!!」
「うむ!!よく一人で戦った!!」
「本当よ、よくやったわ」
僕らは飛んでくるワイバーン達に攻撃を飛ばしながら必死に駆け下り、とうとうワイバーン達は僕らを追ってこなくなった。
「兄貴!!皆!!」
山の麓まで来るとアレクサンドラとエミリア、そしてアレンが僕らを待っていた。
「ふむ。本当に薬草をとってくるとは。皆の者大いに成長したのだな」
「まぁ、あれから色々あったからね、嫌でも成長するさ」
「フォフォフォ!成長とは逃げずに立ち向かい挑戦するものにしか与えられない貴重な物じゃよ。お主らが成長したという事はお主らはちゃんと向き合って戦っていたのだろう」
普段ふざけているアレンからまじまじと褒められるとなんだか背中がかゆくなる。
「さて、皆揃ったところで早速答えを聞こうか。「国」とは何かを」
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