第143話サバイバル島、その18

・サバイバルドラゴン LV90


山の麓に堂々と座っている姿はまさに王者そのものだった。

プレイヤー達は山から少し離れた雪原に陣形を作って待ち構えている。

お互いにらみ合いの時間のようだ。

プレイヤーの数は1000と少しくらいか・・・。

そんな人数がいれば大丈夫だろうと思うのが普通だ。

だが遠目で見た感じ、何故だかドラゴン方が土通がある感じがした。


ーーーーーーーーーーーー

サバイバル島の支配者「サバイバルドラゴン」に遭遇しました。


これより「サバイバルドラゴン」との戦闘を開始します。


ドラゴンは各島に一体ずつおり、全て倒すまでPKは禁止、通常モンスターの出現もありません。


勝利時のコインは戦闘の活躍度によって異なります。


この戦闘持に死亡してもコインの紛失はしません。


尚この戦闘はモンスターを倒すか、プレイヤーが死亡するまでこのフィールドからは出られません。


頑張ってください。


戦闘人数制限なし。

ーーーーーーーーーーーーーー


「・・・ウィル。今のLVは?」

「・・・72。最近全くLVが中々上がらないんだ。」

「・・・アイリスは70だよ。」

「ん。64」

「私は66」

「エリーゼが64でクリスは66・・・。私は70になった。」


・・・これムリゲーじゃないか・・・?

一応ゲーム内で一番LVが高いプレイヤーは僕だ。


そして相手のLVが90・・・。


あそこで戦っているプレイヤーの平均LVは4,50ってところだろう。

一体どれだけ攻撃すれば倒せるんだ・・・。


「・・・このままみんなと合流する?」

「どうしましょう。本当は少し様子を見たいところだけれど・・・。」

「選択肢としては何があるの?」

「1、合流して自情報をもらって皆と戦う。2、このまま待機で様子を見てドラゴンの行動パターンを分析する。3遊撃隊としてドラゴンの背後に回って不意打ちをする。この3つかしらかしら。」

「そして4は、このまま帰って昼寝をする・・・か・・・。」

「そんな選択肢はありません。何真面目な顔で言ってるのよ。」

「本当は2をしたいけどそうしたらみんな手遅れになっちゃうかもだよねー。」

「一度タク君に連絡してみましょう?今なら話せるでしょう?」


僕は一度タクに連絡をしてみることにした。


「ドラゴンの情報よこせ。」

「やっと来たか!!いきなりだな。まぁいい。ドラゴンはHPバーは5本ある。そして残るは後2本。それまでは奴も歩いて戦っていたんだが、突然飛び出して炎のブレスを吐いてな。それによって大半はやられちまった。・・・というか今どこにいるんだ」

「今はタクたちの左側にある丘の上から皆を見下ろしているよ。このまま合流するか、遊撃隊でドラゴンの隙をつくか悩んでるんだ。」

「なるほど・・・。合流はしなくていい。そっちの好きなようにやってくれ。」

「いいのか?」

「ああ、お前たちは集団で戦うよりも好きにやらせた方が何かしてくれる気がするからな。」

「・・・あまり期待されてもな。大したことはできなさそうだぞ?」

「いや、すでに皆に「カンパニー」が来たと伝えたら大盛り上がりだぞ?」

「・・・お前後で一発殴らせろよな。」

「あ、そういえば言い忘れたがあいつは気配察知が苦手みたいだ。もしかしたら他の敵が弱すぎて警戒なんてしないで生きてきたんじゃないか?」

「なるほど。その情報は助かる。」

「じゃあいい働きを期待してるぜ!!」

「お前たちがもっと頑張れば僕たちはまだね寝てられたんだがな。」


プー・・・プー・・・。


あ、あいつ切りやがった・・・。

本当に身勝手な奴だな・・・。


「・・・だってさ。」

「なら遊撃隊で決まりね。」

「そうだね。お兄ちゃんが背後から行って羽を切り落としちゃえばいいんだよ。」

「馬鹿な妹よ。例え羽を斬れたとしてもあの大きな羽は切り落とせないと思うぞ?」

「馬鹿なお兄ちゃんよ。そこをやるのが剣士の仕事なのだよ。」

「いやいや。無理だろう。あの羽だけで10tトラック2台分くらい大きいぞ?」

「ん。そこをやるのが剣士なのだよ。」

「僕に丸投げか。アイリスの大剣なら行けるんじゃないか?」

「なら二人で行ってズバッとやってきて?」

「作戦適当か。無理に決まってるだろ。なぁエリザベス・・・。エリザベス?」

「・・・あの羽であの巨体を空に浮かばせ続けるのって無理なんじゃない?」


エリザベスは何か閃いたようだ。

彼女なら無茶な作戦は立てないだろう。


「・・・ねぇウィル。ちょと行ってあの羽切ってきてくれるかしら?」


女王様は無茶な作戦を思いついてしまったようだ。


「・・話聞いてた?無理だよ。」

「無理でもいいの。恐らく空を飛び続けるには魔力が大量に必要なはずよ?その証拠に今は休んで魔力を溜めているわ。」

「・・・つまりあわよくば羽を斬って、無理でも取り合えず飛ばせばいいって事?」

「そう言うこと。そして皆で着陸させないようにして魔力消費を図るの。そうすればいずれガス欠になる気がする。」

「・・・今日中になればいいが・・・。」

「無理なら他の作戦を考えるわ。」

「今すぐ考えてくれ。多分無理な気がする。」

「むふ。また突撃だね。」

「なんでお前は嬉しそうなんだ。」

「ん。困ってるウィルの顔面白いから。」

「ドSか。なんか最近エリーゼがエリザベスに似てきたな・・・。」

「ふふ。いい傾向じゃない。」

「僕にとっては嫌な傾向だ。」


と言われてもなぁ・・・。

確実に50mくらいの大きさはあるぞ・・・。

どこから攻めたものか・・・。


「こんなこともあろうかと。はい、皆。」


エリザベスはインペントリから5つの白い布を取り出した。


「・・・これは?」

「町にあった家から拝借したの。白のカーテン。これをかぶって近づけば相手は気づかないはずだわ。」

「・・・サバイバル感が増してきたな。」

「迷彩服と同じ発想だね!!」

「ん。これならばれない。」

「なんだか暗殺者になった気分だわ。」


僕らは皆白いカーテンを頭からかぶる。


確かに背景の真っ白な雪と同じ色なのでわかりづらいかもしれない。


皆エリーゼからブーストをかけてもらい、僕とアイリスは二人で接近。

他3人は遠方からの援護射撃をすることにした。


僕らはまずは雪の斜面を上がり、ドラゴンの背後まで行く。


吐く息は白くないので足音さえ気を付ければなんとかなりそうだ。


因みに寒い時に息が白くなるのは温度の関係もあるが、吐いた息が大気中のほこりなどの見えない物質と混ざるため白くなるそうだ。

つまり本当に空気が綺麗な場所だと空気は白くならないらしい。

地球で言うと、南極や北極はそれに当たる。

他にもあるかもしれないが・・・。


ザッザッザッ・・・。


落ちてくる雪の音さえ聞こえそうな静かな場所に僕らの足音が響く。


急いで、だけど静かに僕らは進む。


たまにドラゴンの「グルルル」という声が聞こえるがそれ以上は何も聞こえない。


他のプレイヤーの声でさえここまでは聞こえない。


本当に静かな場所だ・・・。


そんなことを考えてると、ドラゴンの真後ろまで来る。


小さな山の中腹まで来た僕らは目配せをし、ゆっくりと下る。


隣でアイリスがニコニコしている。


何が楽しいんだか・・・。


ドラゴンとプレイヤー達はまだ動かない。

プレイヤー達は今は休憩と回復中らしい。

ポーション類をかなり消費してしまった為、自然回復を図っているんだろう。


ザッザッザッ・・・。


二人の足音が響く。

三人とはすでに別れている。

振り返ると既にどこにいるかわからない。

確かにこのカーテン効果は絶大のようだ。


その時突然アイリスが僕を押し倒し、重なる。


「グルルル・・・・。」


ドラゴンがこっちを見ている。


ばれたか?

僕の鼓動が大きくなる。


「グルルル・・・・。」


ドラゴンはしばらくこちらを見た後、再び正面のプレイヤー達の方をを見ている。


焦った・・・。

何とかやり過ごせたみたいだ・・・。


(ありがとう。助かった。)

(お兄ちゃん油断しすぎだよ。もう近いんだから集中して!)


怒られた。


まぁ確かによそ見をしている場合ではないな。


僕らは再び歩き出し、今度はドラゴンの死角に入りながら慎重に進む。


あと50m・・・。

40m・・・。

30m・・・。

20m・・・。


「グルルルル!?」


残り15mと言ったところで突然ドラゴンがこちらに振り向き羽を大きく羽ばたかせる。


不味いっ、バレた!!


ドラゴンが羽を羽ばたかせるともの凄い突風が僕らを襲う。

僕らは吹き飛ばされそうになったが、なんとか踏ん張る。


その時僕らの横に矢と、氷の塊が落ちてくる。

エリザベスとクリスの矢はあの突風により落とされたようだ。


僕らの作戦は完全に失敗した。


ドラゴンはさらに羽を羽ばたかせて宙に浮かびだす。


「お兄ちゃん!!ごめん!!」


突然アイリスは僕目掛けて大剣を振り下ろす。


いきなりの事に僕は動けなかった・・・。


が、アイリスが狙ったのは僕ではなく僕の足元の雪のようだ。

ザクッと音がし、僕の足の下の雪に大剣が刺さる。


「・・・何を!?・・・まさか・・・!?」

「行ってらっしゃいお兄ちゃん!!」


アイリスは僕の足元の雪ごと僕を空に打ち上げる。


称号「人間大砲」を持っているアイリスは人を投げ飛ばす時に通常より1.5倍の力が出る。


「ま、待てアイリス!!早まる・・・なぁあぁぁぁぁあ!!??」


僕はドラゴンよりも高く打ち上げられる。


そして落ちていく。


僕の下には、そんな僕を哀れそうに見つめているドラゴンの大きな口が開いて待っていた・・・。



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