第144話サバイバル島、その19

時間がゆっくりと流れる。

下にはドラゴンさんの大きな大きなお口。


わぁ、ドラゴンさんのお口の中ってこうなってたんですね。

貴重な物が見られたよ。

わぁ、大きな大きな牙だ。

あれで噛まれたら僕千切れちゃわないかな。

というか歯磨きとかちゃんとしてる?

ちょっと息臭いよ?


「って言ってる場合かぁ!!マジでやばい!!」


食われる食われる怖い怖い!!


大きな口を開けていたドラゴンはいきなり首を大きく振りだす。

僕に気をとられていた隙に魔法と矢が首元に刺さったようだ。

意外と間抜けなドラゴンなのかもしれない。


僕はそのまま落下しドラゴンの頭の上に着地する。


「ガルルルルル!!!!」

「うぉ!?」


ドラゴンは僕に気づき大きく羽を羽ばたかせ空に飛んでいく。

僕は振り落とされまいと剣を鱗に突き立てる。


ふう・・・。

何とか落ちずに済んだ・・・。


が、それがいけなかったようだ。


僕はドラゴンから降りるタイミングを見失い、怒ったドラゴンは真上にどんどん上昇していく。


あ、やっぱり痛かったかな・・・?


すでに500mくらいは上がっているんじゃないかこれ・・・。

剣は深く刺さっている為抜けないが、僕の体重と重力によって少しずつずり落ちていく。

初めに後頭部に刺さっていたがだんだんと首元、そして背中の方までザクザクと刺さったままずる落ちる。


「ガァアアアアア!!」


ドラゴンはかなり怒っているようだ。

そのまま今度は左右に飛んだり、急降下し僕を振り落とそうとしている。

これじゃまるでジェットコースターだ。

安全装置なしの。

風圧がすごい。

一体何キロで飛んでいるんだこいつは・・・。


「うぁあああああ!!」


怖い怖い!!

落ちる落ちる!!


僕の体は大きく前後左右に振られる。


・・・すぽっ。


「・・・あ・・・。」


「ああぁぁぁぁぁぁ!!??」


剣が抜けた。

上空500mで。


ドラゴンはそのまま上昇を続け、僕は落ちながらゆっくりとその背中を眺めている。


クソやけくぞだ!!


「「雷神衣威」「かまいたち」!!」


僕は剣が抜けて落ちた瞬間最後にと、全力でかまいたちをドラゴンに向けて放つ。


ズバンッ!!


なんとか尻尾の先端に当たり、尻尾を5mほどだが切り落とすことに成功した。


ふっ・・・、ざまぁみろ・・・。

僕をこんなところで落とすからこうなるんだ・・・。


ドラゴンは上空で大きく旋回し、こっちに向かってくる・・・。

すごい形相だ。

・・・もしかして怒ってらっしゃる?


「グアォォォォ!!」


あ、怒ってらっしゃる。

尻尾はまずかったかな・・・。


地面まで残り150m。

僕が落ちるより先にドラゴンの方が先に僕に到着しそうだ。


あ~あ・・・。

僕このゲームで何回死にかけてるんだろう・・・。

今度こそ死んだな・・・。


地面まで100m・・・。

50m・・・。


その時ドラゴンの大きな口が僕の寸前まで迫ってきて・・・。


「!?」


僕は突然何かにぶつかり急上昇。

ドラゴンの頭上を飛び越える?


「捕まえた!!あはは!楽しそうなことしてるね!!僕も混ぜてよ!!」


ライリーだ。

ライリーがすごい勢いで空まで飛んできて僕を捕まえたようだ。


しかしいったいどうやって・・・?


僕は下を見るとアイリスがぶんぶんと大剣を振ってこっちを見ていた。


助かった・・・。

助かったが、あのバカな妹に「人間はポンポン投げるもんじゃありません」って教えてやらないと。

それも兄の務めだ。

・・・まぁそんな事怒られる妹なんて世界広しといってもうちの妹だけだろう・・・。


僕とライリーはそのまま雪にダイブするように着地する。

雪によってクッションのようになっていなければ危なかった。


僕はいくつかの幸運によって何とか助かったようだ。


「あははは!!ギリギリだったね!!僕食べられちゃうかと思った!!」

「僕もだよ・・・。本当に助かった・・・。」

「全然いいよ!!楽しかったし!それにユイユイの頼みだったからね!」

「投げる妹も妹だが、ドラゴン目掛けて飛んでくるお前もたいがいだな。」

「あはは!!そう言うことは特に考えないで飛んだよ?」

「さすがだな。助けてもらってなんだが、たまには何か考えた方がいいぞ?」

「人生考えるより動けだよ!」

「名言でました。まぁそういうことも大事だけどな。」

「人生楽しいと思ったらすぐに飛び込まなきゃ損だもん!!」

「まぁな。でも意外とそれが難しい人だっているんだぞ?」

「それはみんな考えすぎるからだよ!本能のままに!快楽のままに!」

「何故いい話から下ネタに行った?台無しだぞ?」

「エッチも遊びもしたい時にするのが一番だよ!!」

「お前がいつか犯罪に巻き込まれないか心配だよ僕は。」

「あ!ドラゴンが下りてきた!!突撃ーー!!」

「おい!!・・・いつかお前に理性ってものを教えてやりたいな。」


降りてきたドラゴンに突撃しその風圧にやられ、吹き飛ばされているライリーを見ながら僕はしみじみそう思った・・・。


ドラゴンは僕を食べ損ねた後さらに旋回し、僕の近くに降りようとした。

が、それを狙ったプレイヤーたちが一気に攻撃を仕掛け、ドラゴンは着地に失敗。

再びその巨体を空へと向ける。


「キサマ、我らを封印した者と同じ魔法を使うか!?忌々しい魔法よ。今度こそ我が貴様らを殺してやる!!」


ドラゴンが上空から僕に話しかけてくる。

そう言えばこいつ歯抜けアランに封印されていたんだったけ・・・。

完全にとばっちりですやんそれ・・・。

アランの居場所教えたら見逃してくれないかな・・・?


ドラゴンは攻撃しているプレイヤー達を無視しこちらに飛んでくる。


良し、迎えうとう。

来たらやり返してやる。

相手の砲撃を躱して、今度は足を切り落としてやる。


「グァァァァアアア!!」


ドラゴンの怒りの声が辺りに響く・・・。


うん、やっぱ無理だ。

怖すぎる。

逃げよう。


僕は逃げようとしたが、その判断が遅かった為ギリギリになってしまう。


「雷神衣威」「俊足」を使い一気に横に飛ぶ。

何とか飛んできたドラゴンを躱すが僕は風圧で吹き飛ばされていく。

ドラゴンは振り向きざまにかまいたちを放つ。

僕も吹き飛ばされながら空中でかまいたちを放ちお互いの攻撃がぶつかり合う。


キィィィィン!!


もの凄い金属音が鳴り響きお互いの攻撃は相殺する。

が、何本か斬撃を落としきれなかった。


僕の斬撃が迫る。


「私に勝っておいてこんなところで死ぬのは許さん!!」


突然僕の前に影が出来、その影によって斬撃は防がれる。


誰だこの人・・・?


「・・・その顔は忘れてしまったか?俺だ。以前始まりの森でお前にPVPを挑んだレイだ。」


振り向いた真っ赤な髪をした女性は大きな盾を構えながら話す。


「あ、ああ!!覚えてるよ。イベントで黒馬を手に入れた人だよね?」

「そうだ。私に勝っておいてトカゲごときに倒されるのは許さん!!立て!!」


レイは僕の腕を掴み立たせてくれる。


「ありがとう。助かったよ。」

「れ、礼などいらん!!当然のことをしたまでだ!!」


レイは頬を真っ赤に染めそっぽを向く。

何かまずかったか?


「ほら!剣を構えろ!!次が来るぞ!?」


ドラゴンは再びこちらに向かってくる。

その口には大量の魔力を溜めていた。


「ブレスだ!!逃げるぞ!!」

「え?・・・きゃ!?」


僕はレイを抱えて走る。


すると僕目掛けて業火が放たれる。

駄目だ!

範囲がでかすぎる!!


雪で足をとられて思うように走れず業火は僕らに着撃してしまう。


・・・だが少し熱いだけで大したダメージも受けない。


周りに炎がなくなった時、目を開けると目の前にはオリバー、リタが大盾を構えて立っていた。


「すまない!!遅くなった!!」

「全く無茶するんだから!ドラゴンの上に乗るなんて!」


僕は再び命を救われたようだ。

・・・ったく助けられてばかりだな僕は。


ドラゴンは僕らの上をそのまま通り過ぎていく。

その時を狙って多くのプレイヤーが攻撃を仕掛ける。

ドラゴンはまた着地が出来ず上空に逃げていく。


「お兄ちゃん大丈夫!?」

「あれでよく生きてるわね。さすがよ!」

「ん。ウィルはいつもなんだかんだ死なない。」

「ほんと、あら?その女性は?」


エリザベスに言われて慌ててレイを下す。

そして簡単に自己紹介をさせる。


「お姉様方さすがです!!」

「あのブレスを防ぐなんて・・・。」

「き、きゃっこよかってです!あ、噛んじゃった・・・。」

「ふふ。それでこそ我らのお姉様よ!!」

「お二人とも息ぴったりでした!!」

「ほんとだよ!!僕感動しっちゃった!!」


ライリーと「ダブルナイツ」の子達が駆けつけてくる。

そばにはプレイヤー1000人近くもいる。


「よし!!これで全員揃ったな!これよりこのメンバーが主体となってドラゴン退治を開始する。テメェら気合入れろ!!」


「「「「「「うぉおおお!!」」」」」」」」


オリバーが大きな声で叫ぶとプレイヤー達は大きな雄たけびをあげる。


ドラゴンはこちらに来ようとしていたが、その大きな声に驚き上空に逃げていく。


ドラゴンのHPは後1本と6割。


こうしてドラゴン退治は終盤へと向かった。

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